5bit 誰がちんちくりんですか!


 「じゃあ、私たちの紹介も済んだことだし、次は受講者に簡単な自己紹介をしてもらおうかな。 じゃあ、君から!」


 ハジメは糸に向かって指を差した。


 えっ! わ! 私ですか?!


 糸は気が動転しながらも、勢いよく立ち上がった。


 「え、えっと……私は大場糸と言います。 高校一年生です。 えっと……なんで受講しようと思ったかと言うと……えっと……ITってすごいなぁって思ったからです。 これから、よろしくお願いします!」


 心の準備が整っていないせいで、よくわからない自己紹介になってしまった……。


 部屋にいる全員の視線を浴びている……。


 顔がとても熱い。


 「急に当てて申し訳なかったね。 どうもありがとう、糸っち」


 い、糸っち?! 


 あだ名付けられるの早くない?!


 糸は目をパチクリとさせた。


 「それはそうとさ……初めて会ったときから思っていたんだけど……」


 「な、なんですかハジメさん、そんなかしこまっちゃって……」


 「糸っちって、ちんちくりんだよね」


 え、今なんて……。


 「いやぁ。 背も小さくて華奢きゃしゃだし、顔は可愛いけど終始アワアワしているから、迷子になった小学生みたいでさぁ」


 背が小さい、アワアワ、迷子の小学生……。


 完全におちょくっている!


 そっちがその気ならぁ!


 「ハジメさんに言われたくないですよっ!!」


 「えっ?」


 「ハジメさんだって、童顔だし適当な感じだし、小学生みたいです!」


 「な、なにぉーー!!」


 糸とハジメの視線がバチバチと火花を散らす。


 「まぁまぁ、これって、どんぐりの背比べって言うのかしらねぇ」


 二人の間に割って入り、穏やかな口調でなだめたのはシズクだった。


 「す、すみませんでした……」

 「す、すみませんでした……」


 ド正論を前に、糸とハジメは何も言い返すことができず、くだらない口論は幕を閉じる。

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