第23話 経営改善
「何か用事でもあるんですか?」
「いや、最近猫神の話を聞かんのでな、もしかしたら困っておるのではないかと思ったわけじゃ」
俺は神様を始めてから、他の神様との交流は無かった。本来は交流していたりするものなのだろうか?
「資金面で困ってはいますけど、それ以外はどうにかやってますよ……」
「ほう、資金面とな。猫神は行事などはせんのか?」
「行事? 以前はしていたのですか?」
「ふむ、妾の所ではさっき渡した様な漬物を漬けたり、漬物を配ったりする行事をしたりしておるぞ?」
「漬物ばっかりじゃないですか!」
「まぁ、漬物の神社と覚えてもらえればそれでいいじゃろうて」
カヤノの言ったことは一理ある。うちの神社では猫神という名前以外では『願いを叶える』としかアピールはしていないのだ。一体何の願いを叶えてくれるのか、何に強い神社なのかは地域的に全くと言っていいほど認知されていない。
「お主はなり立てでよくわかっておらぬようじゃがの、『願いを叶える』というのはどこの神でも出来る能力なのじゃ」
「え? 猫神だけの能力じゃないんですか?」
そういうとカヤノはため息をついた。
「やはりのう……色々叶えて気付かんかったのか?」
「えっと……何にです?」
「願いというのは色々あってじゃな、すべてに答えようとすると神としても効率が悪いのじゃ」
「それは思いました、願い事が色々ありすぎて悩まされています」
「まぁ、知っておるかは分からんが神は基本的に人間が受け継いでおる。人間の願いを叶える仕組みなのもそのせいなのじゃ」
「そうか、それで猫の願いは叶えられないのか……」
「そうじゃ、神社自体を人間が作っておるからのう、それに対しての褒美なのじゃ」
「なら、どうすればいいのです?」
するとカヤノは待ってましたと言わんばかりの表情をみせた。
「願いを絞るのじゃ」
「えっと、お金を増やすとか病気を治すみたいに特化するということですか?」
「そうじゃ、そうすることでこの神社にどんな時に来たらいいのかが分かる。参拝が多くなると叶えたり叶えられなかったりするじゃろ、そうなると人は偶然だと思うのじゃ」
なるほど、恋愛の神は他の願いが叶えられないわけじゃなく他のはスルーして恋愛の願いを叶えることでその神社に行けば恋が叶うとなるわけか……。
「認知されればあとはうなぎ登りじゃ。じゃが、まずは人を呼ばねばならん」
「そうですね、人が来ないことには願いを選ぶ事も出来ないですからね」
「そこで妾の所は漬物を漬けて配ることで、この神社に祈れば漬物がおいしく漬けられると全国から参拝されるのじゃ」
「それって、絞りすぎなんじゃないですか?」
「じゃが、世の中の漬物ファンは参拝したいじゃろ?」
「まぁ、そうですけど……」
となるとうちは、猫に特化するのがいいのだろうか。猫の病気を治したり、猫と仲良くなれる様にしたり……。
「どうじゃ? なにか思い浮かんだかの?」
「まぁ、何となくは……でも、先代はなぜ絞らなかったのでしょうか?」
「そうじゃの、彼は変わり者でのう。元々5つくらいに特化しておったのじゃが、ある日から願いを叶える事にこだわりだしたのじゃ」
「なるほど、なにかあったんですかね」
元々何かに特化していた。だけど、先代の神様にいったい何があって願いを叶える形にしたのだろうか。何かきっかけはあるのだろうと思った。
「まぁそういうわけじゃから催事をするのであれば、妾も協力するのじゃ」
「ありがとうございます、少しなにか考えてみますね」
神の力とは便利なもので神どうしであれば連絡を取れると言うのを聞いた。面識がある事が条件なのだが、カヤノと会ったことで連絡が取れる様になった。
その晩色々と考えた結果、自分一人では決められることではないので幾つか案を用意してミイコやサブローに相談してみようと考えた。
「―――というわけで、猫と仲良くなれると言うのはどうだろうか?」
「陳腐ですにゃ」
「そんなん却下やわ」
「じゃあ、何がいいんだよ。却下するなら何かいい案あるんだろ?」
「神さん、そもそもこの神社の由来を調べた方がええんちゃうか?」
「由来?」
「猫神いうてもな、世の中の人のイメージは色々やねん。神さんは猫にどんなイメージがあるんや?」
確かに、この神社の歴史を知らないことには話にならない。いくら考えても浅いものになってしまうだろう。猫のイメージか……。
「モフモフ……」
「わしらをなんやと思てるんや……」
「関西弁……」
「それ、わしだけやんけ!」
「あとは……」
「傷心中に呼び出されて何事やとおもたら、ふざけとるやんけ!」
「やっぱりサブローさん落ち込んでたんですか?」
「うるさいなぁ……」
でも、確かに猫のイメージといわれても困る。一般的ににはどんなイメージなのだろうか。
「まぁ、言われやすいのは招き猫にゃあね、商売繁盛金運向上!」
「確かに! 招き猫のイメージはある!」
「ほかにもいろいろあるで? 漁が上手くいくとか、道に迷わなくなるとかなぁ……」
「サブローさんは特に漁では重宝されるんですにゃよ?」
「そうなのか?」
「オスの三毛猫は大漁になると昔は言われたもんや……」
サブローやミイコの話を聞いて、1ヶ月近くたつのだが、神社の事についても、猫の事についても意外と知らない事が沢山あるのだと思った。
こうして、二人と話していく事で上手くいくような気がした。
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