第二章 聖域の師弟
第零話 ディーヴの反証
00 ディーヴ
『
――ゴーディ・ウィートン『語源』(アーヴェン書房、一八二〇年)
ディーヴの姿形は人間に似て、
――テディ・フェルドマン『悪魔録』(幻想書院、一八一九年)
数多いる精霊のなかでも、ディーヴほど強力な存在はいない。
すべてを逆転する彼らにはどんな武器も届かないとされているが、その噂を聞いても討伐に挑み、命を落とす者は後を絶たない。ディーヴには、自らを打ち倒した者に忠誠を誓うという習性がある。つまり退治に成功さえすれば、『逆さまの悪鬼』の使役者になれるということだ。
人間に仕えたディーヴは、主人によって力量が増減する。勇者の召使いとなれば一騎当千の活躍を見せるが、
――イアン・オウエル『精霊世界』(トルキン出版、一八一五年)
我々は屈辱の日を忘れてはならない。花と蜜の都から、
――エイガン・デュホーン『剣に愛を』(アーヴェン書房、一七六九年)
ディーヴは、自分が不利になると判断した反転は行わない。
ディーヴは、主人がいるときには主人の命令しか聞かない。
ディーヴは、一つずつしか命令を聞かない。
ディーヴは、これらの制約をうっかり忘れることがある。
――チェリン・エン『怪物夜噺』(幻想書院、一七一〇年)
こんな話がある。
ある国の姫が、ディーヴに攫われた。彼女と将来を誓い合った王子が救出に赴くが、いかに策を尽くしても『逆しまの悪鬼』に刃は届かない。敗北した彼は命を奪われそうになるが、囚われの姫がディーヴを制止した。「悪魔さま。私はあなたさまの妻となります。この洞窟に身を置き、決してあなたさまのお傍を離れません。ですからどうか、王子様をお助けください」――それを聞いた悪魔は、望まずとも反対のことをしなければいけなかった。国へ帰還した彼女は生涯、独身を貫いたという。
――フラン・ビィ『精霊の系譜』(幻想書院、一七二五年)
登場人物イラスト(リンク先:近況ノート)
https://kakuyomu.jp/users/nagarekawa/news/16817330654131674912
【登場人物】
ビーチェ:始末屋。妙齢の女性。
ブリュエット・プレオベール:伯爵家の令嬢。十五歳。
キャスパル:プレオベール家に仕える老齢の執事。
ジュダ:全身黒ずくめの男。
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