第96話 ぼろが出た……

「なぁ、謙人。俺はお前に頼みがあるんだ!」


 今は放課後。さっき康政に放課後話があると言われ、仕方なく今こうして残っている。


 ちなみに涼風は、榊原と一緒に駅で買い物しているそうだ。なんだか、早速涼風を盗られたような気がしてならない……。


「で、いったい何なんだ?」


 引き受けてしまったものはしょうがない。俺は康政の相談に乗ることにした。


「あ、あのな?お、お前、初デートって、どんな格好してったんだ……?」


「…………ふっ」


「わ、笑うなよ!俺だって必死なんだぞ!」


 康政よ……、俺は一つ気づいたことがある。お前のあのモットー、ただの強がりだったんだな。じゃなきゃそんなことで相談したりしないだろ。


「悪い悪い。お前がそんなことを俺に聞いてくるのが意外で面白かったから」


「それで、どうなんだよ?どんな服着てったんだ?」


「ジャージだ」


 冗談めかしてそう答えると、康政は不機嫌そうにした。


「おい謙人。俺は真面目に相談してるんだ。ちょっとは真面目に答えろ。大体お前だって、デートの時どうせ緊張してんだろ?」


 う~ん……、そういえば……


「俺最近、涼風とどっか行ったりしてないからなぁ……。どうだかちょっとわかんねぇ」


「は……?え、お前、デートしてないの……?それで、なんであんなにずっと仲良くいられるの……?」


 そうだよなぁ……。涼風だって、たまにはデートとかしたいよな。なんだか涼風との生活が当たり前になり過ぎてて恋人としての特別な感じがちょっと少なくなってきてる気がしたわ。


 よし!テスト明けの休日は、涼風と一緒にどっか行こう!……あ!そういえば!


「康政、ナイスだ!来週は涼風の誕生日があるんだ!だから休日は涼風と一緒に出掛けてくるわ!」


 そうだよ!涼風と付き合って最初の方に、涼風に教えてもらったんだ。


 涼風の誕生日は10月15日。今日が5日だから、だいたい二週間後だ。プレゼントも見に行こう!


「なぁ、それで謙人。どうしたらそんなに彼女の事放っておいても愛想つかされないんだよ?」


「は?俺は涼風の事、放っておいたことなんてないぞ?」


「いや、だって休みの日だってデートしてないんだろ?ってことはお前ら学校でしか会ってないことになるじゃんかよ?それは十分、放っているに入るんじゃないか?」


「いや、だって、俺と涼風、今一緒に住んでるじゃん?」


「は?」


 ……あれ?俺口滑らした?いや、俺に限って、まさかそんなことは……


「なぁ、お前ら一緒に住んでんのか?俺、初耳なんだが」


 しまったぁぁぁぁ!言ってしまったぁぁぁぁ!つい、話の流れに乗せられて……。俺のバカぁぁぁぁぁ!


「え、え~っと……」


「前からなんだか妙に仲が良すぎるとは思っていたが、そういうことだったのか。それなら大してデートとかしてなくても仲悪くはなんないもんな。どうせお前、家では姫野さんの事甘やかしまくりなんだろ?」


「はは……。お、おっしゃる通りで……」


 もう逃げ場ないわ……。涼風、ごめん……。二人だけの穏やかな暮らしが……。


「な、なぁ康政。この事はくれぐれも内密にはしてくれないか?今、知ってるの先生だけなんだ……」


 康政はなぜかいきなり勝ち誇ったような顔をした。嫌な予感しかしない……。


「そうだなぁ、謙人。俺はお前のすげぇ秘密を知っちゃったからなぁ?ま、俺が明日着ていく洋服を選ぶのを手伝ってくれるなら、黙っておいてもいいけどよぉ?」


 あ、そんなことでいいんですか?


「よろこんで引き受けさせていただきます」


 よかったぁ~!上がらせろとか言われたらどうしようかと思った。もしこいつにあの場所が気に入られて毎日居座るようになったらたまったもんじゃない!


「さて、それじゃあ早速駅のデパートに行くか!」


「はい……」


 はぁ……。なんで俺、ぽろっと言っちゃうかなぁ~?口はそんなに軽い方だとは思わないんだけどなぁ~?あ、もしかして康政のあの質問は、誘導尋問だったのか?俺の弱みを握ろうとして……。康政め、許せん!


「あ、謙人。俺の弱みを握ろうとか考えてないよな?」


「は、ははは……。そ、そんなわけ、な、ないじゃないかぁ~」


 まじでこいつ怖いんだけど!エスパーだよエスパー!



 そんなわけで、弱みを握られた俺が抵抗できるわけもなく、デパートまで連行されて……、



「なぁ謙人。これはどう思う?」


「え、似合ってるんじゃないか?」


「じゃあこっちは?」


「え、そっちも似合ってるんじゃないか?」



 もう今、何着目だろう?結構な時間が経ったような気がするんだけどなぁ。


「さっきから謙人の言い方が適当な気がするんだが」


「え、そ、そんなことはないぞ?康政は何着ても似合うから、俺だってどれが良いとかあんま分かんねぇよ」


 ふぅ……。誤魔化し成功。康政もご機嫌そうにしている。


「そうか~。俺は何着ても似合うのかぁ~。全く、色男はつらいねぇ~」


 うっぜぇ!俺もう、帰ってもいいですか?


「んじゃ、俺的にはこれが好きだから、とりあえずこれ買ってくるわ!」


 あ、ようやく決めてくれたのね……。長かったなぁ……。



 しばらくして、康政が支払いを済ませてこっちに戻ってきた。


「さて、康政の用事も済んだことだし、帰ってもいい?」


「は?何言ってんだ?まだまだだぞ?」


 えっ……?まだ何かするの……?俺、そろそろ泣いちゃうよ?涼風とだったらいくらでもいいけど、康政とだと限界ってものがあるから……。


「さて、それじゃあ今度は謙人のものを買いに行くぞ!」


「えっ?俺の?」


 一体何を買わされるんだ?怖くて仕方がないんだけど……。


「そうだ!姫野さんの誕生日プレゼント、早めに用意しとかなくていいのか?」


 康政が、神様に見えた。







 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 更新遅れてすみません!毎日更新が、ついに途切れた……。

 そして少しの間、更新頻度が落ちます。私事で、申し訳ないです。


 さて、実は最近、新作短編を公開しました!

 タイトルは、『彼女のやさしさに気づいた日』です!

 今回はシリアスな感じですね。ジャンルも恋愛にしましたが、けっこう現代ドラマ寄りかなって感じです。

 あまり甘々ではないですが、短いので是非読んでいただけると嬉しいです!よろしくお願いします!

 https://kakuyomu.jp/my/works/1177354054918682632




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