第77話 看病

更新遅くなって、申し訳ないです……。

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「いててて……」


 うん?ここはどこだ?少なくともベッドじゃなさそうだ……。


 朝起きると、俺は知らない部屋にいた。まだ薄暗く、それがいったいどこであるか分からない。


 確か昨日は……色々あって、二人で帰ってきて、それから、涼風がめちゃくちゃ甘えてきて……あ!そうだ!俺、涼風の手握ってたんだ!なるほど、それでそのまま寝ちゃったと……。


「なんか、すっげぇ損した気分……」


 だって、可愛い涼風の寝顔見放題だよ?それに、可愛い涼風の寝顔、写真撮り放題だよ?もったいないことしたわぁ!


 ……ん?待てよ?今ならまだいけるんじゃね?


 俺がそーっと涼風が寝ているベッドの方へ体を浮かすと……


「おい、涼風!大丈夫か⁉」


 涼風は苦しそうにうなされていた。俺は今の今まで脳を支配していた邪な考えなど吹き飛ばして、涼風の看病にあたった。


 また薬を飲ませた甲斐があったのか、涼風もすぐに落ち着いてまた可愛い寝息を立て始めた。


 これは、学校はどう考えても無理だな……。


 昨日、先生に何となく話しておいて良かった。これなら特に怪しまれることもないだろう。


「あ、2年の南です。志賀先生はいらっしゃいますか?」


『おう、謙人か。俺だ。その電話が来たってことは……』


「はい、涼風が熱を出しちゃいまして。それで、俺も看病してあげなくちゃいけないんで、休むってことで」


『彼女の看病なんて、健気だねぇ!先生、泣いちゃう!』


「あの、志賀先生?近くに石井先生はいらっしゃいませんかね?」


『はい、すみませんでしたぁ!』


 まったく、救いようのない馬鹿だな……。あれで教師って言うんだから、本当に謎だ……。


『謙人くん?今考えていたことを言ってごらん?』


 電話越しでも感じるの⁉もう、怖いんだけど!


「い、いえ、何でもないです!とにかく俺らは今日休むんで、よろしくお願いします!」


『分かったよ。お大事にって言っといてくれ』


「はい、失礼します」


 ふぅ。これで学校の方は問題ないからオッケーと。涼風、なんか食べれるかな?



「涼風~入るぞ~?」


 涼風の部屋に入ると、彼女はまだ静かに寝ていた。これは無理に起こさないほうが良さそうだな……。手でも握っててやるか。


 俺はベッドの近くまで行って、涼風の小さな手を優しく包み込んだ。小さくて、軽くて、飛んで行ってしまいそうな手だ。


「涼風、早くよくなってくれよ……」


 俺にできることは、涼風の望みを最大限かなえてあげることと、無事を祈ることくらいだ。昨日の事もそうだが、本当に全部、代わってやりたい……!


「うぅん……。謙人くん……」


「涼風!起きたか?」


 俺が大慌てで涼風の顔を覗き込むと、涼風はゆっくりと目を開けた。


「あれ?こほっ。け、謙人くん?」


「辛そうだから、無理に喋んなくていいぞ?おはよう涼風。ご飯、なにか食べれそうか?」


 涼風は小さく頷いた。


「そうか、良かった。おかゆで良いかな?それとも、まだリンゴとかにしておく?」


 まだ完全には良くなっていないときに、無理に多めの量食べさせるのもよくないだろう。


「リンゴ……」


「リンゴだな。わかった。今、摺ってくるから、ちょっと待っててな?」


 俺は急いでキッチンでリンゴを摺って涼風に持って行った。ベッドの上で、彼女は食べやすいように体を起こして待っていてくれた。


 俺は涼風の背中に枕を入れて、座りやすいようにしてから、彼女にリンゴを食べさせてあげた。


「まだ自分で食べるのは大変そうだから、これくらいは俺がやるよ?」


 はい、嘘で~す。俺がやりたいだけで~す!


「ありがとう……ございます……」


「気にしないで。それじゃ、ちょっとずつにするからな。これくらいかな……」


 それから10分ほど掛けて、涼風はリンゴを完食した。


「全部食べれたな。偉いぞ涼風。じゃあ、また寝れそうか?」


「は、はい。こほっ。でも……そのまえに……お手洗いに……」


 あ、考えたら昨日の夜から行ってないもんな。それは完全に見落としてたわ。


「そうだな、トイレに行っておかないと。それじゃ、俺につかまって?」


 涼風が立ち上がると、俺は脇から支えるようにして、涼風が倒れないようにサポートしてあげた。まだ涼風の身体は少し熱かったから、熱は下がっていないんだろう。



 トイレから戻って、涼風はまたベッドに戻った。今日は無理せず安静にしておいた方がいいだろう。


「涼風、学校の方にはもう連絡しておいたから、安心して大丈夫だよ。今日は、ゆっくり寝て休んでね?俺がずっとついてるから」


 涼風はそれを聞くと、こくんと頷いて、また眠りについた。俺は涼風のおでこに光っていた汗を軽くタオルで拭いてあげてから、また手をそっと包み込んだ。


 たまにはこんな、穏やかな日があってもいい。もちろん、それが涼風が元気でないと意味がないのだが。まぁ、今日は涼風の寝顔を見て、1日癒されるとするか。涼風の寝顔って、あどけなさが半端なくて、めちゃくちゃ可愛いんだよなぁ……。



 俺の献身的な看病……が効いたかはわからないが、とりあえず、薬が効いたおかげで、涼風の風邪は午後にはすっかり良くなった。何はともあれ、涼風が元気になってくれてよかった。


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