第76話 甘すぎ涼風たん
「えへへ、謙人くん。ありがとうございます!」
あぁ、涼風たん、可愛すぎるよ……。
俺たちは玄関で散々密着した後、そろそろ暑いということで、リビングに移動した。それにあそこ、廊下にいる人の話し声が聞こえちゃうから、ムードがぶち壊しって感じで……。
「涼風、おいで?」
だからこうしてソファーに座って二人だけで静かにイチャついた方がいいよね、絶対に。
「謙人くぅ~ん!」
なんか涼風がめちゃくちゃ可愛いんだけど!え、なんかめっちゃ甘えてない?今日。
「す、涼風?今日はなんだかグイグイくるんだね?」
「え~?だってぇ~けんとくんが~甘えていいよっ!って言ってくれたじゃないですかぁ~」
あかん、可愛すぎる……。耐えろよ俺の理性。この涼風はたしかにHPをごりごり削られるが、お前の体力はそんなものじゃないはずだ!俺は涼風と、健全なイチャつきをするって決めてるんだ!
「涼風、今日も可愛いね。もう俺、涼風の事が好き過ぎてやばいよ~」
よ、よし。とりあえずいつも通りの返しだ。ここまでは問題ない。問題は、涼風がどういう反応をするかだが……
「えへへ、それはですね~、謙人くんのために、可愛くなったんですよ?」
「ごめん涼風!俺ちょっとトイレ!」
「あ~!謙人くん~。行かないでくださいよ~」
やばいって!顔赤らめ+可愛すぎるセリフ+首かしげる=俺の理性、死!
ってわけで、トイレに逃げたわけだが……、
「あと一歩遅かったら、確実に襲ってたな……」
いや、冗談抜きで。だって、涼風が可愛すぎるんだよ?もうしょうがなくない?俺の理性にだって、限界はあるんだからさ。
「それにしても、なんだか涼風、グイグイ来るなぁ……」
よ、よし。そろそろ俺の理性も復活したし、涼風のところに戻るか!
そう思い、トイレのドアを開けると……、
「謙人くん!どこにも行かないでくださいよ~!寂しいじゃないですか!」
いきなり涼風に抱き着かれました。どうやら、トイレの前で待っていたようです。
やばい!また俺の理性がぁ!……って、待てよ?涼風さん?
「ちょっと失礼」
「あっ……」
いや、そんな艶っぽい声出さないで!マジで俺の理性、今すげぇ瀬戸際に立たされてるから!
え?俺が何したかって?お、お、襲うわけないだろ!涼風のおでこに手を当てただけだって!
「うん、やっぱり涼風、熱あるな……」
なんかおかしいと思ったんだよね。いくら涼風が甘えるようになったとはいえ、いきなりあそこまで性格が変わるって……。よし、覚えておこう。風邪をひくと涼風は極度の甘えん坊になる。よし!俺の中の涼風メモリーに保存っと。
「涼風、横になったほうが良いぞ?これじゃあ、悪化しちゃうから」
「じゃあ、連れてってください!私をベッドまで!」
なんか、言い方ああいう感じじゃない?って、考えるな俺!健全な……健全なお付き合いだ……。
「お、おう!それじゃ、よっこいしょっと。……涼風、軽すぎないか?ちょっと心配になるぞ?」
まじで高校生にしては体重軽すぎるって。それでも毎日ちゃんと食べてるから不思議なんだよな……。
俺は涼風をお姫様抱っこして、寝室まで運んだ。
「謙人くんのお姫様抱っこ♪やった!幸せです……!」
風邪気味涼風、まじで可愛いんだけど。これは永久保存版のおれの脳内涼風メモリーに登録ですね。
「じゃあ、安静にしててな。俺は涼風が食べれそうなもの作ってくるから」
といっても、風邪気味の人に作る料理って、おかゆくらいしか知らないな……。
結局俺が作ったのは、卵がゆ。それを持って寝室まで行くと、涼風はさっきまでとは明らかに違って、とても辛そうにしていた。
「涼風っ!大丈夫か!」
「こほっ、け、謙人くん……」
気疲れと、痛みからの熱だろうか。よほど辛そうだ。とりあえず、おかゆは後にして、今は飲み物だな。
「涼風、これ、ぬるま湯だ。飲めそうか?」
涼風は辛そうにしながらもそれを飲んだ。
「よく飲んだ。偉いぞ涼風。そしたら、お薬も飲めるか?そうすればすぐに楽になるから」
涼風はこくんと頷いて、薬もしっかり飲んだ。よし、これで一安心だ……。
「あとは寝たほうが良い。しっかり寝て、体調を整えないとな」
すると涼風はどこか不安そうな顔をした。俺は涼風の手を取って微笑んだ。
「大丈夫だよ。俺がずっとそばにいるから。ずっとこうやって手を握ってるからさ。そしたら、何も心配することなんてないだろう?」
涼風もそれで安心したのか、横になってウトウトし始めた。そして五分もしないうちに可愛い寝息を立て始めた。
やはり、相当な気疲れがあったのだろう。しかもそれを俺や先生に見せないように、必死に隠し通して。そしてついに、家に帰ってきて力尽きてしまったんだな……。
まったく、無茶して……!涼風が倒れたら、俺だって不安で不安で仕方ないんだからな!
俺は祈りを込めるように、ぎゅっと涼風の手を握りなおした。そして改めて、涼風を何があっても絶対に守り抜くと誓った。
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