第74話 side志賀克昌 最近思うこと
俺は、国風学園2年B組担任の
ただ、やっぱり暑苦しいのは嫌いだと離れていく生徒もいるから、複雑なところだ。う~ん、思春期は難しい……。
そんな俺にも、愛すべき奥さんがいる。それが、隣のクラスの担任の石井唯花先生。この学校に赴任してから付き合い始め、結婚までたどり着いた。
結婚生活を始めてもうかれこれ三年。お互いに自分の時間というものを作りながら仲良く暮らしている……つもりである。
いや、なんかね、最近の唯花ちゃん冷たいの。昔はよく授業の合間に職員室で会うと、「お疲れ様!」ってにっこりしてくれたんだけど、最近は目も合わせてくれない。結婚って、そんなもんなのかな……?
そんな俺も唯花ちゃんとの結婚にたどり着くまでにはいろいろ苦労がありまして……。
まず来たのは倦怠期。あれはおっかないね……。本当に別れちゃうかと思ったもん。それから、他の教員が唯花ちゃんって良いよねって話してた時。飲み会に新米教師が誘ってた時なんか、冷や冷やしたもん。結局、大勢で行って本当にただの飲み会で終わったから良かったんだけど……。
あと、一番終わったと思ったのは、唯花ちゃんのお父さんに挨拶に行った時。最初は門前払い。いや、その時ね、何持っていけばいいか分からなかったから、とりあえず俺の愛用プロテイン持ってったのよ。そしたら石井家の全員からドン引きされちゃって。二回目に行った時は、流石にお饅頭持ってったけどね?
それから五回くらい行ったかな~?たまたま門の前で、唯花ちゃんに「ごめんね、うちのお父さん古臭い人だから、なかなか許してもらえなくて……。克昌くんも、もう耐えられなくなったら、私の事なんて捨てて……」って言われて、俺、思わず唯花ちゃんの事そこで抱きしめて言ったんだ。「唯花ちゃんの事は絶対に捨てたりしないよ。それに、お義父さんだってすごく優しい人だよ。俺ね、二回目に来た時、お義父さんが玄関に咲いてる花を見て、とっても柔らかい笑顔を浮かべた時、この人、すっごく優しい人なんだろうなって気づいたんだ。唯花ちゃんのことだって、すごく大切に思ってるから厳しくなっちゃうんだよ。俺もそれに見合う誠意を伝えていくつもりだから、心配しないで?」
俺、今まで生きてきた中で、あんな優しい声出したの多分あれが初めてだよ。そしたらね……
「ふふっ。だってよお父さん?」
「えっ?」
そーっと門の方を見たら、お義父さんが仏頂面で立ってたんだ。それで、俺に一言だけ、「お前、酒は飲めるのか?」って。そこで初めてお義父さんに認めてもらえたんだ!あの時は嬉しくて、とび上がっちゃったな~。
そんなこんなで唯花ちゃんと結婚して、幸せな家庭を築くぞ~!って思ってたんだけど、今ではすっかり尻に敷かれてしまいまして……。そうなったきっかけは多分、あの時だな……。
「ねぇ、克昌さん。お夕飯だけでも、克昌さんが作ってくれないかしら?」
「えっ……、なんで?」
「だって、私が一人で三食作るの、結構大変なのよ?」
「でも俺、料理できないよ」
「えっ……」
いや、そんな驚いたっていうような顔されてもねぇ……。
「あれ?言ってなかったっけ?」
「えぇ、初めて聞いたわ……」
それから多分、奥さんの態度は変わっていったね。まず、ご飯は作らなくていい代わりに洗濯物とかお風呂とかはやること、それから休日の買い物には付き合うこと、この二つが約束されて、その後も色々と決まりが……。そんなこんなですっかり尻に敷かれてしまったわけなのです。これが、俺の唯花ちゃんとの人生ってとこかな?
それで最近、転校性がうちのクラスに入ってきたんだ。なんでも、国風学園の近くの清本高校からの転校生で、成績優秀、眉目秀麗、運動は……分からないけど。そんな子が来たら、告白ラッシュで大変なことになりそうだな~って思ったら、まさかの彼氏持ち。しかも相手はうちのクラスの南謙人。
これで納得がいったんだけど、謙人がいきなりイメチェンしたのって、多分この子の影響だよね?やっぱ男は女には弱いんだよな……。謙人も将来、尻に敷かれるタイプかな?って思ったら、まさかの彼女溺愛タイプ。
いつもはクールな感じなのに、姫野と一緒にいると、あいつからにじみ出る幸せオーラにこっちが倒れそうになる。しかもだよ?俺、これ聞いてびっくりしちゃったんだけど、まさかの謙人、夕飯作ってるんだってさ。そこは俺よりスペックが高かったとして、でも姫野に言われて作り始めたんだろうと思ったら、
「は?涼風が毎食作るのは大変だから、俺の方から作らせてくださいって頼んだんですけど……。そんなに変ですかね?」
だってさ。いやもう、これは姫野がデレデレになるのも頷けるわ~。だって、ザ・理想の彼氏って感じじゃん。かっこよくて、優しくて、困ってるときは助けてくれて、彼女の事めちゃくちゃ大切にしてくれて、それに加えて料理上手。これはやばいね。本人は大したことないと思ってるらしいんだけど、これクラスの女子が知ったら、皆で取り合いになりそうだなぁ……。
それでも他には一切見向きもせずに、彼は姫野だけを可愛がり続けてさ……。
あぁ、考えれば考えるほど、自分とあいつの差に嫌気がさしてくる。俺もあんな高スペック男子になりたかったなぁ~!
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