第71話 side涼風 また……

 久々の涼風視点でお送りします。

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 いよいよ、私と謙人くんの学校生活が始まっちゃいました!もう、とってもとっても楽しみだったので、毎日嬉しくて楽しくて!


 しかも、謙人くんがとってもかっこいいんですよ~!もう、私の事をとってもよく考えてくれてて、本当に話すたびに彼のことが好きになっていきます。


 本当に今、幸せです。あの学校にいた時には考えられないような心地よさがあります。それはもちろん、謙人くんが用意してくれたわけで。


 あぁ……。考えれば考えるほど、謙人くんが好きになっていくんですよ……。私、変なのですかね?



 しかもしかもですよ!な、なんと、謙人くんと同棲が始まって、もう朝から晩まで謙人くんにドキドキさせられ続けているんです……。


 それに、たまに一緒に寝てくれて……。本当に謙人くんは優しい人です。私のお願いを嫌な顔せずになんでも聞いてくれる、素敵な人。



 でも、そんな人気者の彼が私と仲良くしているのを見れば、当然それをよく思わない人もいるようで……。


「姫野さん、一緒に帰らない?」


 放課後、私によく話しかけてくれる、堺さんという女の子に一緒に帰ろうと誘ってもらったんです。


 ……私と一緒に帰ろうなんて。この子、良い人なんですね。嬉しいです。あ、でも、放課後は謙人くんと一緒でして……


 私が困っているのがわかったのか、謙人くんは私たちから離れて先に行ってしまいました。


 少し寂しいですけど……帰ったら会えますもんね!


「じゃ、じゃあ、堺さん。一緒に帰らせていただいてもいいんでしょうか?」


 ところが、彼女から返ってきたのは予想もしない返事でした。


「は?何言ってんの?一緒に帰るなんて嘘。あんたにはあたしと一緒にちょっとこっちまで来てもらうよ」


 私が堺さんに連れてこられたのは、校門……ではなく、校舎裏のようなところでした。そこには堺さんのほかに、三人の女の人がいて……。


「連れてきた。こいつだよ、最近南の彼女とか言って調子乗ってる奴」


 もう、認めるしかないんでしょうかね?これは、きっと私を快く思わない人たちの集まりなんでしょうね。これから、どうされちゃうんでしょうか……?


「あ、あの、堺さん。私、何か変なこと、しましたか……?も、もしあるなら、謝らないとと思って……」


「はぁっ?何言ってんのお前。そもそもいること自体目障りなんだよ。謙人はあたしのもんなの。だから、邪魔者はどっか行っててくれない?」


 謙人はあたしのもの、そう聞いた時、なぜだかとてつもなく怒りが湧いてきてしまったんです。でも、これは多分、嫉妬だったんですね……。謙人くんを好きなのは自分だけって思ってたかったんでしょうね……。


「わ、私だって、謙人くんのことが好きなんです!あなたには負けません!」


 そうです!いきなり出てきたあなたに負けるものですか!


「いや、負けるも何もないから。あんたがちょっと大人しくしててくれればすぐに片付く話なんだから」


 そう言って彼女たちは私を取り囲むようにして立ちはだかりました。これでは、逃げようにも逃げられません……。


「な、何をするんですか……。誰か見てるかもしれないんですよ」


「あぁ、その点はご心配なく。ここ、滅多に人なんて通らないんだよね~。だから、お前に気づくことは無いと思うよ~」


「そ、そんなことないです!謙人くんは、私が困ってたらいつも助けてくれますもん!」


 そう言った途端、私の視界が一瞬暗くなりました。


 あれ、私、どうしたんでしょうか……?なんでいきなり……?


 そこで、周りを見て気づいてしまいました。私は地面に倒れていたのです。そして、私の左の頬はひりひりと痛みを感じました。


 私は堺さんに左頬をはたかれて、地面に倒れてしまったようなのです。



 それが分かった途端、私の身体は恐怖で震え始めてしまいました。


 逃げないと……!はやく立ち上がらないと!そう思っているのに、足がすくんで上手く立てません。


 その間にも、彼女は自らの左手を高く振り上げて……


 私は少しでも痛みが我慢できるように、目をぐっとつむっていました。どうして私は、いつもこうして攻撃されなければいけないのでしょうか?私は、この世の中にいらない人間だったのでしょうか……?



「涼風っ!」


 校舎の物陰から謙人くんの声がしたかと思ったら、謙人くんはすごいスピードで私の前に立ちふさがって、私を堺さんから見えないようにしてくれました。



 どうして、彼は私がしてほしいと思ったことを真っ先にしてくれるんでしょうか?どうして彼は、私がいてほしいと思った時に、側にいてくれるんでしょうか?



「涼風、怖かっただろう?もう大丈夫だからな」


 謙人くんはそう言って、私の頭を撫でてくれました。



 どうして彼は、私が一番かけてほしい言葉を、すぐにかけてくれるのでしょうか?


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