第64話 図書館戦争?
二時間目。俺は初めて授業が心の底から楽しいと思えた。だって……
「今日は、二人一組でペアワークをしてもらいたいと思います。今から図書館に移動して、各自で調べ学習をしてください。テーマは社会に関することならなんでも構いません」
キターーーーーー!これは授業中に正当な理由で涼風といちゃつける絶好の機会!それじゃ、早速……
「涼風、一緒にやろっか?」
「いいんですか……!私も謙人くんと一緒がいいです……」
いいに決まってるじゃないですか……。涼風さん、可愛すぎますよ?そんな、上目遣いを今使われたら、勝てないって……。
「それじゃ、図書館に行こうか?場所もまだわかんないよね?」
「はい……」
少し申し訳なさそうにしているが、今日来たばかりなんだから知らなくて当たり前だ。
「今日来たばっかなんだから分からなくて当然だよ。ごめんね、聞き方が悪かった。涼風と一緒に行動できるのは嬉しいよ」
「謙人くん、ありがとうございます!本当に、優しくて大好きです!」
あぁ……!もう今日、帰っていいですかね?一刻も早く家で涼風を愛でたいんだけど……。
「ありがと、涼風。俺もだよ」
涼風に微笑んで、軽く頭をなでると、涼風もとてもうれしそうに笑ってくれた。
「お前ら……すこしは自重したほうがいいぞ……?」
「はっ?別にただ話してただけだろ?」
「お前らの基準はどうなってんだ……?周りを見てみろ、周りを」
うん?と思って周りを見てみると……
「南の野郎……許さん!」
「あいつ……よくも堂々と……」
「幸せアピールふりまきやがって……!」
「いいなぁ、涼風ちゃんはあんな理想の彼氏がいて……」
「南くんみたいな彼氏、本当にあこがれるよねぇ……」
うん、さすがにやりすぎだったのかな?いや、でも、本当にただ話してただけなんだけどな?
「分かっただろ?お前らの普通は俺らの異常なんだよ……」
「そうか……。気をつけないとな」
仕方ないから、おとなしく図書館まで行きましたよ……。
「あいつら……言ったそばから、全く分かってないな……。っていうかもうあれ、無意識に手つないで歩いてるのか?」
「南め……ナチュラルに手なんかつなぎやがって……!」
「どこまで俺らに見せつけるつもりなんだ⁉」
図書館に着くと、さっきまでよりも強い怨念を含んだ目で男どもが見てきた。訳が分からなかったから、康政に助けを求めると……
「いや、お前ら、言ったそばから手つないでここまで来ただろ?絶対あれだって」
「え?あれもだめなの?」
「はぁ……」
なぜため息?え?手を繋ぐのも異常なの?
「もういい……。おとなしくあいつらにボコボコにされてこい……」
康政は諦めたような目で俺のことを見ると、本を探しに歩いて行ってしまった。ついに康政にも見捨てられる日が来るなんて……
「なぁ、涼風。手を繋ぐっていうのは、異常なのか?」
涼風は不思議そうな顔をした。
「へっ?何が異常なんですか?」
「あ、いや、そうだよな。何でもない、忘れてくれ」
うん、やっぱり俺は間違ってない!だって、涼風がそう言うんだから!
「じゃあ、涼風、何について調べようか?」
「どうしましょうかね……」
社会か……。社会……仕事……人間関係……
「愛っていうのはどうだ?」
「愛なんてどうでしょうか?」
よし、決まりだな。それにしても、涼風も同じことを考えていたなんて……嬉しいなぁ……!
「お二人さんは、決まったの?」
テーマが決まったことで、どんな感じにしようか話していると、先生が回ってきた。ちなみに社会科の先生は、石井先生だ。
「はい!二人で全く同じテーマを思いついたんです!」
「本当に仲が良いのねぇ!それで、なに?テーマは」
「「愛です!」」
「………………」
え?先生?なんで何も言ってくれないの?
「え、えーっと、二人とも、社会に関することって言ったんだけど……」
「はい、そうですよね?社会、仕事、人間関係、で、愛です」
何かおかしいところはあったか?至ってまともな考え方な気がするんだけど……。
「う~ん……、じゃあ悪いんだけど、二人のテーマは私に決めさせてもらってもいいかしら?」
えっ?なんでそうなるの?僕たち真面目に考えたんですけどね……。
「先生、ぜひそうするのが良いと思います。こいつら、自分たちで考えさせたら、多分どうやってもそういう感じになるんで」
「高田君……。やっぱりそう思う?」
「はい……」
え?康政?どういうこと?そういう感じって何?なんで二人とも俺らのことをそんな目で見るわけ?
結局、俺たちのテーマは「経済」になった。
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