第63話 尋問

 キーンコーンカーンコーン。


 一時間目の始まりを告げるチャイムが鳴った。


 ナイスタイミング!これであいつらからこの時間はなんとか逃げ切れる!


 俺はおとなしく席に戻って、授業の準備をした。涼風も隣の席に着いた。


「よろしくね、涼風。なんだか、隣の席にいるって新鮮だね」


「私も何だか変な感じがします。学校でも謙人くんと一緒って」


「隣より、俺の上の方が良かった?」


 冗談めかして言ったつもりだが、涼風は顔を真っ赤にした。


「そんなの、そうに決まってるじゃないですか……。本当はずっとそうしてたいんですよ?」


 涼風……可愛すぎるけど、授業前にそういう可愛いこと言うのやめて。俺、これから一時間、涼風を愛でたい欲求と全力で戦わなくちゃいけなくなるから。


 そこで俺は、涼風と一緒に授業を受けるうえで、楽しみなことを考えることにした。


 ……まずはやっぱり、わかんないところをこっそりノート見せてあげたりしたいなぁ。


 ただ、これに関しては……


 涼風、頭良すぎるからな……。これは俺が教えてもらう感じになっちゃうな。


 ……次は、授業中にウトウトしてる涼風が見たい!絶対可愛いって!


 ……あとは、逆に俺が起こしてもらうのもありかな?起きたら横に涼風がいるとか、最高かよ。


 ……それから、やっぱ落とした消しゴム拾ってあげたい!渡すついでに手を握ったりとか!


 うんうん、涼風に関しては欲が尽きることはなさそうだな。


「謙人くん……謙人くん……」


 涼風、授業中にどうしたんだろう?


「ノートとらなくていいのですか?」


 おっと、いけない!涼風の事考えてたら、すっかり忘れていた!


 俺は黒板の内容を移すついでに、机の中にあったメモ用紙に、


『涼風、教えてくれてありがとう!実は、授業中に見てみたい涼風について考えていたら、すっかり他の事なんて忘れてしまってね』


 と書いて、隣に渡した。


 涼風もそれをすぐに開いて、読んだ。彼女の顔がみるみる赤くなっていく。おっ、紙を使って涼風の反応を見るっていうのも可愛くていいかも!


 俺の、涼風への精神攻撃愛のささやきのレパートリーがまた一つ増えた。


 そんなことを考えていれば、時間はあっという間に過ぎていくわけでありまして……



 キーンコーンカーンコーン。



 チャイムが鳴ると同時に、クラスのほとんどの男子が、俺の机の周りに群がった。流石にこの数はちょっとこわいぞ……?


「さて、南くん。説明してもらおうじゃないか?どうしたら君がこんな美少女と出会うというのか。そして、どうして彼女はいきなり転校してきたのかをね」


 めんどくせ……。こいつら、そんなこと聞いて、どうすんの?


「いいけど、お前らにとってはただの惚気になるかもしれないぞ?」


「くっ……!そ、それでも構わん!聞かせろ!」


 俺は涼風を手招きした。


「涼風、もし俺が忘れてるところがあったら教えてくれ。涼風との思い出は、一つも欠けてほしくないからな」


「謙人くん……!わかりました!全力でサポートします!」


 おい、男ども。俺を睨むでない。涼風が怖がるだろうが。


「さて、まずは俺たちの出会いからか……」



 気づけば俺は、夢中になって語っていた。うむ、少々語り過ぎたかな?まぁ、このくらいで良いだろう。


 いくら語り過ぎとはいっても、涼風の前の学校でのことや、同棲していることなどは言っていない。同棲は別に問題は無いが、それはそれで家に押し掛けてくる非常識な奴がいそうだからな……。俺と涼風の当分の秘密だ。


「さて、こんなものかな?どうだ、涼風?」


 俺の周りには男子どもだけではなく、いつのまにか女子も多く集まっていた。そんなに面白い話か、これ?


「いや~、ロマンチックだわ~!素敵!南くんって、女の子の事とっても大事にしてくれるんだね!」


 まぁ、涼風だから特別っていうところもあるけどね?


「やば~い!私も南くんの事、狙っちゃおっかな~?」

「あ、ずる~い!私も私も!」

「はぁ~?うちが最初だし~」


 え?なんでそんな話になってんの?俺、悪いけど、涼風一筋だから、他の奴なんてまったく相手にしないよ?


「だ、だめです!謙人くんは……謙人くんは、私のです!」


 涼風~、そういう嬉しすぎることは二人の時に言ってくれ~。愛でたいのに、愛でられない辛さ……。頭くらいだったら撫でてもいいかな?いいよね?


「涼風、おいで」


 俺は涼風を自分の上に乗せて、頭を撫でた。朝からずっと我慢してただけあって、涼風への愛しさがこみ上げてくる。


「謙人くん……」


 涼風も嬉しそうだ。良かったよかった。


「おい、南。俺らが目の前にいながら、よくもそんなに堂々と見せつけられるなぁ?総員、戦闘用意!」


 これだから男どもは。仕方ない。餌でもまいといてやるか。


「お~い、お前ら。女子が彼氏欲しいって言ってるぞ~。アピールするチャンスじゃないのか?」


「ふむ、確かにそうだな。よし、総員撤退!」


 はぁ~、馬鹿で助かったぁ~。これで心置きなく涼風を可愛がれる!


「涼風、本当にお前は可愛いな」


 涼風はほっぺたをポッと赤くした。


「い、いきなりそういうことを言われると、恥ずかしいですよ……」


 あぁ、もう本当に可愛すぎ!早く帰って、誰にも邪魔されずに可愛がりたい……。


 結局、大して涼風とお喋りもできないまま、二時間目の授業を迎えた。


 男子ども、恨むぞ……。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


どうも、はちみつです。


ここ最近、毎日フォロワーさんとPV数がどんどん増えていって、嬉しい限りです!更新はできるだけ毎日継続していきます!


さて、これは宣伝ですが、先ほど短編を公開しました。


『五年の時を経て、君と』という、現代恋愛ものです。ラブコメで、話も短いので、軽く読めると思います。是非、読んでみてください!(良ければ評価も欲しいです……!)


URL:https://kakuyomu.jp/my/works/1177354054898335574


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