第11話 初デート③
「うぅ……ぐすっ……。いい話でしたね……」
やっぱりなぁ……。なんとなく、涼風ってこういう感じの話に弱そうだなって思ったんだよな……。
俺たちが見たのは、恋愛映画だ。主人公が不治の病に罹ってしまったヒロインに恋をしてしまうという切ない話だった。主人公の心情描写が絶妙で、周りにも涼風の様に涙を流している人が大勢いた。
「そうだな、いい話だったな……。……ただ、そこまで泣くか?」
涼風は号泣というレベルで泣いていた。
「……こういうの苦手なんですよ。すみません……変ですよね?」
「そういうことじゃなくて……、感受性豊かなのは美点だと思うよ。涼風は心がきれいなんだね。ほら、涙ふいて?」
きっと彼女の心の中は真っ白なんだろう。優しさで満ち溢れていて……だから一緒にいて自分も人にやさしくできるんじゃないか?
……涼風にナンパした奴は容赦しないけどね?
「ありがとうございます……。謙人くんは優しいですね」
「俺は涼風ほど優しいやつを見たことないけどな~。そもそも今日だって俺の事ばっかだったじゃん?涼風はどっか見たいところとかなかったの?」
涼風もようやく泣き止んだようだ。
「私はいいんです。たまにこういうところに来て、買ったりしてますから」
「そっか……。ありがとな。……どっかカフェにでも行かないか?映画のこと喋りたいし」
「いいですね!行きましょう!」
それから俺たちはカフェでしばらく喋った後、そろそろ帰ることにした。
「今日はありがとな。休日に遊ぶなんて久しぶりだったから、すげぇ楽しかった!」
涼風も満足そうに笑っている。
「私もとっても楽しかったです!謙人くんもカッコよくなって、お洋服も選んであげて……、私もこうして遊ぶの初めてだったので、とっても楽しかったです!」
「それは俺も嬉しいな。……ただ、学校の人とかとは行かないのか?涼風の事だから友達もいっぱいいそうだけど……?」
そこで初めて涼風が少し困ったような顔を見せた。
「そういう人は学校にはあんまりいなくて……。だから、今日はありがとうございました!」
「そっか……また遊びにいこうか」
今度はどこに行こうか?涼風、動物園とか水族館とか好きそうだなぁ……。
「次はどこに……、ってどうしたの?」
涼風の方を振り向いたら、彼女が泣いていた。いきなりどうしたのだろうか?
「あっ……ごめんなさい。また遊べるなんて、嬉しくって……」
「泣くほどなのか?俺ならいつでもオッケーだよ!じゃんじゃん誘ってくれ!」
きっと彼女にもいろいろあるのだろう。そうでなければ、次の遊びの約束をしたくらいで感極まって泣くことはないだろう。
……でも、無理に聞いてはいけない気がした。彼女が自分の意志で話してくれるまでは待とう。
「本当にありがとうございます!……でも、無理はしないでくださいね?」
想い人からお誘いを受けて断る奴なんて、この世にいるのだろうか?
「何言ってんの!涼風からのお誘いとあらば、地球の裏側にいてもすぐに飛んでくよ!」
「大袈裟ですよ!……でも、なんだか安心しました」
「涼風、辛いことがあったらため込んじゃだめだぞ?俺がいつでも相談に乗ってやるし、俺に言いづらい内容の事だったら誰かご両親にでも相談したほうが良いぞ?一人で抱え込んでいたら、涼風がどんどんつらくなってっちゃうからな?」
「そう言ってもらえただけで、もう充分ですよ。ありがとうございます。
これからも遠慮なく頼らせてもらいますね?」
涼風はニコニコだった。いつもの涼風に戻ってよかった……。
「おう、どんとこい!」
俺も少しおどけて見せると、涼風が声を上げて笑い出した。つられて俺も笑い出す。
涼風といると笑顔が絶えない。ずっと幸せな気持ちでいられる。涼風はどうなんだろうか……。
俺といて楽しいと思ってくれているんだろうか?同じ気持ちでいてくれたらいいな。
「じゃあ、また月曜日に」
「あぁ、今日はありがとな。また月曜日」
最寄り駅に着いて、今日はまだ少し明るかったため、一人で帰れるといった涼風と別れ、俺も家に帰っていった。
今日一日本当に楽しかった。きっと、友達と遊ぶというのはこういう感じなんだろう。でも、きっとここまで楽しめたのは、一緒に遊んだのが涼風だったからだろうな……。
やっぱり、彼女のことが好きだ。もう少ししたら、伝えられるだろうか?勇気が持てるだろうか?
胸いっぱいに幸せを抱え込んだ俺は、涼風にこの想いをいつか必ず伝えようと固く決意した。
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