第5話 一緒に登校
帰ってから俺は姫野に連絡をしようと携帯を持った。しかし、そこで固まってしまう。
なんて送ればいいんだ……?
姫野の前では余裕なふりをしていたが、俺は生粋のぼっち。康政以外の人と話すことなんてめったになく、ましてやそれが美少女だったら緊張しないわけがない。
しゃべってた時、声が震えそうになってたのばれてないよな?姫野も緊張してたみたいだから大丈夫だと思うけど……。
そんなことを考えながら俺は姫野との会話画面を開く。悩んだ末に、『こんばんは。まだ起きてる?』と、とりあえずありきたりな文章を送ってみる。すぐに姫野から『はい、大丈夫ですよ』と返ってきた。
『明日の話なんだけど、今日別れたところに8時でどうだ?』
『問題ないです。そうしましょう』
姫野から了承の意が伝えられ安心したこともあり、疲れが出てきたので、今日はもう遅いからと言って、会話を切り上げた。そして俺はいつもより少し早めに眠りについた。
翌日。
俺はいつもより早めに起きて朝食を食べ、学校の準備をした。10分前には駅につけるように家を出た。駅につくと姫野はまだいなかった。
壁にもたれかかってぼーっとしていると誰かに肩をたたかれた。振り返るとそこには昨日と何も変わらない美少女がいた。
俺、朝からこんなにかわいい子といられるのかぁ。昨日の俺マジでグッジョブ!
本人の前で言ったら絶対に軽蔑されるので、心の中にとどめておく。かといって何もしゃべらないのはどうかと思い、挨拶をした。
「おはよう。時間合わせてもらってありがとね」
「おはようございます。私もいつもこのくらいの時間なので平気ですよ。では行きましょうか」
俺と姫野は同じ電車に乗って昨日と同じように他愛もない話をしながら登校する。誰かと一緒に登校するのは小学校以来だから、なんだか新鮮な気持ちがする。
「姫野って結構おっちょこっちょいに見えるけど実際どうなんだ?昨日はたまたまってこともあり得るかもしれないけど」
ふと、気になっていたことを聞いてみた。姫野は「引かないでくださいよ……」と不安そうに聞いてきたので大きくうなずいてから続きを促した。
「昔から結構ドジなんです。それで揶揄われることがあったので、自分なりに気を付けていたのですが、昨日は見事にやってしまいましたね。情けないです。……引きました?」
俺は咄嗟に答えていた。
「引くなんて……むしろ親近感が増したな。姫野って端から見ると何でもできそうな女の子って感じがしてたんだけど、意外と抜けてるところもあるんだな。かわいくていいと思うぞ?」
「か、かわいいって!そんなに軽々しく言わないでくださいっ!」
「軽々しくって、ほんとのこと言っただけなんだけどな」
「だからそういうところがだめだって言ってるんです!」
……焦ってる姫野を見てかわいいなと思ってしまう俺はドSなんだろうか?
これ以上は姫野の機嫌を損ねてしまうと判断し、何も言わなかった。姫野もだんだんと落ち着きを取り戻し、また少し雑談をしていると駅についた。改札を出て、別れようとすると、姫野が名残惜しそうな顔をしていたので、提案した。
「姫野さえよければなんだけど、帰りも一緒に帰らないか?部活もやってないって言ってたし、時間も同じくらいだと思うんだけど、どうかな?」
姫野はぱぁっと顔を明るくして、「いいんですか⁉」と食い気味に言ってきた。思わず近づいてきた姫野に動揺した俺は、しどろもどろになりながら頷いた。
「じゃ、じゃあまた帰りに。放課後だから……4時にここでどうだ?」
「分かりました。楽しみにしてますね。では、また。」
「あぁ、またな」
そう言って俺は姫野に背を向けて去っていった。
姫野って学校ではどんな感じなんだろうな。あいつの性格からして親しみやすいし友達も多いんだろうな……。俺とは大違いだ。
姫野のことを考えると自分がいかにスペックが低いのかを思い知らされることになり、ついつい悲しくなってしまう。自分から望んでぼっちになったから後悔はしてないけどね?
そんな俺が、学校のいるときの姫野の様子を知るのは、まだ先のことである……。
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