理想と現実の狭間
この間、Xで「エロ本を大学生協の割引で買ったぜ!」ってポストが炎上したようですね。
そのポストには、大学生協の割引で買ったと思しき成人漫画の画像が添付されていたのですが、どうやら少女凌辱モノらしい。こういった代物を大学生協で、しかも割引で購入することがけしからんという向きが多い模様です。
この書籍は成人指定ではあれども、いわゆる発禁本ではありませんでした。つまり成人であれば自由に購入していい書籍です。つまり彼がこの書籍を購入した事を非難される筋合いはないと言えましょう。日本では表現の自由というものがあります。なのでこの書籍の販売は自由ですし、それを購入するのもその個人の内心(良心)の自由なのです。
一方でこの書籍の内容はと言うと、涙目で鼻血を流し、制服が半分脱がされ、怯えた表情の少女が描かれており、帯の煽り文句には「可愛い女の子は徹底的に凌辱する」というニュアンスの言葉が記されています。表紙や煽り文句を見る限りでは、少女に執拗な身体的暴行を加えた上で性的暴行、凌辱する内容だと想像できます。これはどうでしょう。社会通念上皆が皆諸手を挙げて賛同できるような内容でしょうか。年端も行かない未成年の少女を力に任せて散々殴り倒した上で性的暴行をする。この表紙や煽り文句の内容から想像されるシチュエーションが本当ならば、これは社会的、倫理的、人間的に容認できる内容でしょうか。特に年頃の娘を持つ親からしたら目を背けたくなる内容だと容易に想像できます。
これを大学生協で、しかも生協割引で購入し、しかもそれを得意げにポストするのは賞賛すべき行為でしょうか。私は違うと思います。
自由なものは自由。販売も購入もどうぞご自由になさって下さい。それは憲法で保障されたものなのですから。だからこそ生協も黙ってこうした書籍の取り寄せ割引販売をしていたのでしょう。ただ、この書籍に描かれた内容は、法令上はもちろん、倫理的、人間的にも到底容認されるものではありません。容認してはいけない行為です。これは、そうした非人間的行為を描いた書籍を、生協で、あまつさえ割引購入した事を得意げに吹聴し、自身にそのような極めて嗜虐的な指向がある事を世界に発信したわけです。このポストは、これに対する世間一般の人々の反感や反発心を想像できなかったポスト主の失態と言わざるを得ないでしょう。
これが一歩譲って、「研究の一環」、例えば社会学や心理学などの研究目的で購入したとも考えられますが、あの煽る様な文言からは、そうした探求心や学問に対する真摯さを汲み取ることはできませんでした。文言だけから曖昧な推定をするなとお叱りを受けるかも知れませんが、私にはどうしてもそのような研究に関わる真剣な姿勢のようなものは微塵も感じられませんでした。
これらの書籍も表現の自由の下、当然守られるべきものなのですが、今回のような炎上が起きたことで「一般的な社会通念を持つ大多数の人々」はこういった書籍の存在を知ったり、結果、反感や反発心、義憤に燃えたりすることは当然の事と思います。返す返すも残念な出来事でした。今後もこうしたことが重なれば、こうした書籍への排斥運動が進み、規制される可能性すらあると思います。そしてそれは表現の自由が崩壊する第一歩になるのです。
理想として、表現の自由は法の下に保証されています。ですが現実的には、その自由を振りかざして好き放題していると、世間の反発を食らってあっけなく崩れ去る畏れのある、脆い砂の城だと認識すべきです。もっと表現の自由と内心(良心)の自由の持つ「重さ」と責任感を自覚して欲しい、そう願わずにはいられません。
川鵜の羽干し 永倉圭夏 @Marble98551
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