大神官、追っ手から逃げる

そう難しい話じゃない。

あの瞬間俺は転職の光を無理矢理自分へ向かわせた。

その結果一時的に俺は魔法使いへ転職し壁を魔法でぶち破り今こうしてガラティアの街の喧騒に溶け込んでいるだけだ。


「しっかし…1回神殿から出ちまえばなんとかなると思ったけどなんでいつの間にか俺のロールは大神官に戻ってるんだ?」

ステータスロール、と呼ばれる特殊な羊皮紙を眺めながらため息をつく。

これは持ち主のスキルやステータス、ロールなどなどの個人情報を触れている間のみ自動で書き出してくれるスグレモノだ。

ガラティアの道具屋で比較的安価に買えるので気になったら買ってみるといい。

買った店で商品と共に買った新聞に寄ると何やら指名手配犯が潜んでいるやらなんやらで軍の輩はそっちに全力らしい。

まさに逃げ出すにはグッドタイミングだったのかもしれない。


「まーロールに関しちゃ不完全な形で光に当たっちまったからなぁ…まぁ何かと便利だしこのままでいいか

…っと」

目の前の通りから神殿から飛び出してきたのであろうカルナと衛兵たちが走ってくるのが見えたので咄嗟に道具屋の中に入り直す。

「おや?お客様また何か用かい?」

初老の女性店員が声を掛けてくる。

「す、すみません何度も…」

何も買う用事がないのに店員に声を掛けられた時ほど気まずいものもないな…。

通りの方からカルナの声が聞こえる。


「大神官様は魔法使いへ転職なされた事は分かっています!

この辺にいるのは間違いないですから1件ずつ店をあたっていきますよ」


なるほど。

ステータスロールには確かに俺は大神官と載っている。

向こうは俺が魔法使いのままだと思っているから追跡がこの辺で途切れてしまったんだろう。

だが問題はそこではない…

1件ずつ店をあたっていく?冗談じゃない!

ここから半径1kmにある道具屋はここを含めて5つ、武器屋や防具屋、宿屋なども含めるとそれなりの数になるがあの数の衛兵で探すのなら…………。

頭が真っ白になる。あぁ、俺のニューライフはこんなにも早く頓挫してしまうのか…。

「あぁもう見てらんない!」

店の奥から若い女性が現れ

「お客さんは店のカウンターに座ってて!あ、トンズラしたら通報するから」

勢いのまま大神官は席に座らされ驚く速さで縛られ喋れないように口にテープまで貼られる。

…ん?店にいたのって初老の人じゃなかったけ…?

そんな疑問が頭をよぎるがひとまずは追っ手をどうにかせねば…!

転職して盗賊にでもなるか…?俊敏スキルで追っ手を撒くのも可能だろうが光で気付かれてしまうと店員に迷惑がかかる…。

「あ、神殿の衛兵さま?ご苦労様ですー♪」

反射的に声の方を向く。

そして耳の次は目を疑った。


先程の店員とは似ても似つかぬナイスバディのお姉さんが衛兵の手を握り店の中に招き入れていた。












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