第4話 精霊王との出会い
「ライくん、大好き!」
「俺もだ、愛菜」
俺の目の前で抱き合う宮城と愛菜。おい、愛菜!お前そんなはしたない接吻なんか俺としなかっただろ!
「じゃあそろそろいいかな?」
「ああ」
宮城はズボンを、愛菜はスカートをめくり…そこからは皆まで言うまい。
「愛菜」
「ライ君」
「うわあああああ」
そこでハッと目が覚める。俺はあの時死んだと思っていたがどうやら生きていたようだ。目を覚ますとそこら一面が焼け野が原だった。
「目を覚ましたみたいね。」
目の前には俺が見たことのない美少女が立っていた。顔だけでなくスタイルも完璧だった。俺が仰向けから上半身を起こして彼女が屈んでいるのだが俺の目線はその可愛いとも綺麗とも言える彼女の顔立ちとその存在に勝るような破壊力のある胸の谷間が見えてしまった。それを見て俺は顔を逸らす。
「全く健ちゃんはスケベなんだから!」
「いや、その、あの」
顔が熱くなるのがわかる。しかし、あれ?健ちゃんって確か愛菜しか呼んでなかったような…
「もしかして愛菜?」
「は?」
すると彼女はものすごく嫌な顔をした。
「私というものがありながら他の女の話?」
「ちょっと待て、そもそも俺は愛菜と付き合っていたんだが。まぁもう寝取られたようなもんだけど」
「冗談よ、というより…やっぱりまだ言ってなかったんだ」
「どういうことだよ」
「あなたは寝取られたのでも浮気されたのでもない。騙されたのよ!」
「は?」
話が全く見えない。
「もともと彼女は宮城君と付き合っているのよ。それを知っているのは2人がどこぞの路地裏でイチャコラしているのをたまたま見かけた私しか知らないって事。2人に頼まれたわ。口止め料に1万円貰ったわ。」
「貰ってたんかい。」
「私からではなく愛菜さんから言われたのよ。それに私もらえるものはもらっとく主義だし。それにあなただけでなく他の子もサッカー部にしたいと言ってお近づきになってるって話も聞いたわ。」
知りたくもない真実が俺の現実の前に現れる。
「それと…いや、これはまた今度話すわ。」
「いや、今話せよ!気になるだろ。」
「あらあらそう怒んないの、この話は私も関係しているんだから。」
「あーそうかい。ていうかあんた誰だよ!」
やっと本題に入った。
「え?私の事覚えてくれなかったの?貴方を突き落として頭打って馬鹿になったのかしら?」
なんという毒舌っぷりだ。って俺を突き落とした!?
「まさか…お前!?」
「そう、私は貴方の一個上の先輩、天野優希よ!」
「え?今なんて?」
「だから、貴方の先輩で、貴方と同じ高校の生徒会長、天野優希よ?」
「えーーーー!あのいつも不在の謎の生徒会長さんかよ!」
こんなに美人だったなんて聞いてないぞ!
「あーそっかぁ、私普段メガネかけてたものね。」
「あーそっかぁ、じゃねーよ!じゃあ俺を突き落としたのって…」
「あー、ちょっと待っててね。あっち向いてて」
後ろを向く。そして数十秒後…
「はい、お待たせ」
「あー、なるほどね。」
変装していたのだ、しかも地味でダサめの女に。
「でもなんで?」
「それはちょっとね。私はみんなより早めにこの世界に来たのよ。それで最初にシエラに出会ってこの世界の事をいろいろ聞いたわ。」
「まぁ、それはいいんだけど呼ばれたならシエラではなく最初に会うのは王様だろ。」
「それは私が説明いたします。」
すると転移魔法でシエラが目の前に現れた。そして俺に申し訳なさそうに頭を深々と下げた。
「先日は誠に申し訳ありません。どうしても王様にバレずにケンタ様の身柄を安全な場所に移さねばと思いまして。タイムトラベルを使うにはあの場所しかないとユウキ様が。」
なるほど、タイムトラベルのゲートが開かなかったら俺は死んでいたと。まさに命がけだな。
「あぶねーよ。まぁこうして生きてるしもういいわ、事情があったんだろ?説明してくれないか?」
するとシエラは口を開く。
「御意、さっそくですがユウキ様は私が独断で召喚したのです。そして1週間後に皆様が召喚されると聞いて同じように召喚されたフリをしてもらいました。それまではユウキ様を私の部屋に匿っていたのです。」
「なるほどね。風呂とかご飯とかはどうしたんだ?」
「それは心配ないわ。シエラは一応王様の側近という良い身分にいるからシエラの部屋は生活するのに十分な設備が備わっていたのよ。シャワーもあるし広い浴槽もある。それにご飯は残り物を私にくれたわ。残り物にしては豪勢な食事だったわ。」
「とんでもございません」
優希の方はいろいろシエラが面倒を見ていたってことか。だが…
「気になる事がいくつかある」
「はい、なんでしょう?お答えできる範囲でお答えします。」
「シエラの目的はなんだ?」
最も気になることだった。
「王の野望を阻止してほしいのです。世界を救うのは表向きです。本当の目的は…」
「世界征服か?」
なんとなくだがパッとそう思った。
「お察しの通りその通りです、それを知っていたのであらかじめ強力な強さをお持ちのユウキ様を王に会わせてはいけないと思い私が王にバレずに召喚いたしました。」
「そうか、そしてなぜ俺は殺されなければならなかった?無力だったからか?」
「むしろその逆です。本当はケンタ様、貴方が1番の能力者、いえ、王に渡してはならない最強スキルの持ち主なのです。」
「最強スキルってなんだよ?」
どうせロクでもないスキルなんだろう?と思っていた。
「『コピー』『リフレクト』そして極め付けは『リアライズ』」
「健ちゃんのスキルはこれだけで最強なのよ?」
確かに、ゲームなどでもそうだがコピーとかリフレクトがあれば戦いには事足りそうだけどリアライズって?
「正確にはリアライゼーション、『具現化』よ!」
天野先輩に言われて試しに妄想してみた。頭に火の玉を想像し、上空に火の玉を放つ。そんなイメージで右手を上に上げる。
「ファイアーボール!」
俺が叫ぶと二つの火の玉が上空に放たれた。
「これのどこが強いんだ?」
しかし天野先輩もシエラも口をポカンと開けたままだ。
「あなた、やっぱり馬鹿ね。その凄さが分からないと言うの?」
「ユウキ様その様なことを言わないでおいてあげてください。彼はまだこの世界のことがわかっていないのですから。」
「先輩、説明してくれ」
悪口は敢えてスルーし先輩から理由を聞く。
「この世界はね、基本的に精霊と契約していなければその属性の魔法は使えないのよ。あなたはサラマンダーともイフリートとも契約していない。」
「で?」
「簡単に申し上げます。貴方には計り知れない力を持った精霊と契約されているんです。」
「え?」
すると俺の体の中からふわっと美少女が出てきた。
緑の艶やかな長い髪、白のローブを着たスタイルの良い美少女だった。
「ウチの事呼んだんあんたら?」
なぜ関西弁?
「初にお目にかかります、貴方様は一体?」
「ウチか?そりゃみんな驚くユグドラシルちゃんやで!」
「ゆ、ユグドラシルですって!」
俺は体から美少女が出てきて呆然としていたが他の2人はそりゃもうびっくりしていた。
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