第3話 劣等生として(後編)

あー、なんか順番的に見て俺最後だな。とりあえず悪友にして、ぶっちゃけ縁切られてもどうでもいい奴No. 1ハイスペッククソ野郎棚橋君が魔法陣に入っていく。まぁ友達の縁は切れても敵には回したくないけどな。


「棚橋殿、私が見た通り、やはり凄い力ですぞ!」


「そりゃそっすよー、優等生ほど強いんすからー。まぁ魅力はどうしようもないっすけどねぇw」


笑いながら棚橋は自傷する、まぁその態度すらイラつくんだけどな。魅力なんてなくても強いですよーみたいなその余裕、へし折りたい!そのキノ◯オみたいな鼻!(鼻の高さは普通です。)


「で、出ましたぞ。属性はなんと眩い光に包まれたナオミチ殿は上級精霊レムに愛されてしまいましたぞ、なんと素晴らしい。適正武器は刀、槍ですな。刀は元々持っておられるもの。槍は光属性と相性がいいんです。竜騎士を目指してみてはいかがですか?」


「おーかっこいいねぇ。まぁ、自分的にはパラディンになりたいですね。あとヴァルキリーとか」


ヴァルキリーってなれるの女だけじゃね?


「で、出ましたぞ。体力D、力C、魔力SS、防御C、速度SS、魅力B、運SS、総合ランク-S素晴らしいですぞ。」


「いやぁ、自分で言うのもなんすけど強運なんすよねぇ。いやぁ親父が持ってきた競馬のマークシートに適当に塗り潰したらたまたま3連単当たっちゃって万馬券だったんすよねー。500円が200万ってヤバいっすよねー」


さっきから思ったんだけどプラスマイナス込みだと8段階じゃなくね?ていうかなに?子供の悪戯で大金当たっちゃんてんだよ、しかも万馬券って。つーか未成年の手の届くところにマークシートなんか置いとくなよ親父さん。


「続いて、えーと。そなたの名前を聞いてなかった。教えてはもらえぬか?」


「…ユウキ、ユウキです。」


俺と喋った時より覇気がないな。まぁいいや、お手並み拝見といこうか。


「…うーん、妙だな何故か最初の3人よりも酷く弱い」


ん?なんかおかしくないか?俺と喋ってた時一瞬だけだったが背筋が凍ったんだよ。俺の身体と本能が叫んでいたんだ。




あいつを怒らせるな!…と



「ブライン様、し、しかし2つの精霊が見えますぞ!」


「それは誠か!?」


ブライン王は仰天した。


「ええ、複数の精霊が宿っているのは相当な魔力の持ち主なんですよ。これはもしかして…」


俺は見逃さなかった。彼女が…しまった!という表情をしていたのが。理由はわからないが余程隠したかったのだろう。


「片方はイフリート、火の属性ですな。適正武器はライト殿と同じく剣。女性なので短剣や軽めの片手剣が良いでしょう。」


今度は呆れた顔をしている。そんなのわかってますよみたいな…ちょっとまて。こいつもしかして…いや、まだいい…ブラインは続ける。


「み、見えましたぞ!時空の精霊クロノス、かなり上位の精霊ですな。おすすめできるジョブは特にないです。言い方を変えれば好きなジョブで自分の道を極めるといいでしょう。」


「…ありがとうございます。」


「身体能力は…体力B、力B、魔力S、防御C、速度S、魅力S、運D、総合Bですな」


「…」


彼女はただただ苦虫を噛み潰したような顔をしていただけだった。


「つ、ついに俺の番か…」


と思っていたが


「以上4名の勇者が今回の魔王討伐隊である。勇者は2名ずつに分かれて2班作り、我々の用意した精鋭の仲間とともに3日後旅立ってくだされ。なお2班共に軍資金として金貨10000枚を贈与する。城下町で装備を整え、隣町のシュリにある大聖堂にてクラスチェンジを済ませると良いでしょう。」


「ちょ、ちょっと。王様、俺を忘れてないか?」


するとキョトンとした顔で。するとニールが口を開く。


「え?まだいたの?帰っていいですよ。」


いや、待て。おかしいだろ。どうしたんだ急に…この流れだと俺の身体検査だろう。


「ちょ、どうゆう事か説明しろ!」


は?


俺は自分がどういう立場にあるのかわからなかった。タイトル詐欺も程々にしろ。劣等生どころの話じゃない。


「能力の無いものに用はない。これ以上騒ぐと命はないものと思え。」


どういう事だ?そういえばさっきニールという男俺の方を見てヒソヒソ話してからなんだかブライン王の様子がおかしかった。いや、よく考えろ。そう言えば棚橋の奴が最初にブライン王と喋っていたよな。


「俺もその意見には賛成だ、どう考えてもお前が無能なのは俺にもわかる。俺たち4人に比べて気配が全くないからな。お前に宿る力どころか精霊なんていないだろ。わかるんだよ、あの魔法陣に入ってから自分と他人の精霊の気配がな!」


宮城はそう言うと魔法を詠唱する


「風の精霊シルフよ、我に力を貸せ!エアストーム」


ぐ、つ、強い。


「おい、マナ。本当にこの男が好きなのか?」


魔力を強めながら宮城は愛菜に問いかける


「好きだよ、んーでもぉ…」


「私やっぱりライ君の方がやっぱ好みかな」


そう言って俺をみるなりニヤリと悪い笑みを浮かべる。これは…


「その男、私が始末しましょうか?」


そう口を開いたのは先程俺に手相占いをした『ユウキ』だった。


「ユウキ殿、頼んだぞ。殺ってくれ」


その時だった。


「スモーク!」


これは闇属性の魔法か?目の前が暗くなったが微かに耳元から声が聞こえる。


「助けにまいりましたケンタ殿」


その鎖帷子の姿、


「シエラか?」


「はい、ここは幻惑魔法で充満されています。何者かが術にハマったのでしょう。ここは一旦逃げましょう!」


そして階段を登って行き城の屋上まで連れてこられた。上からヘリでも用意しているのか?そんな期待を持って早く救助は来ないのかとシエラと待ちに待っていたがしばらくしても来ない。思わずシエラに問いかける。


「本当にここにきて助かるのか?」


「ええ、もうすぐですよ。」


ニヤリとうなずく。するとそこには見覚えのある不気味な少女が姿を現した。


「さっきぶり、ケンタ君」


「お、お前はユウキ!さてはシエラ、お前も!」


俺は最後の頼み棚のシエラまでもがグルだった事に絶望する。


「すみません、ケンタ様。時間がないので説明は割愛させて頂きます。」


するとシエラは俺に向かって剣を突き刺してきた。物凄い剣戟により俺は壁際に追い詰められる。この後ろは何も無い、ここから落ちたら即死だろうという高さにはなっているだろう。


「ケンタ君、…め…なさ…。タイムトラベル」


そう言うと彼女の放つ謎の衝撃波に包まれて屋上から落下する。


あー終わった、今度こそ終わった、俺の人生。来世はもっと幸せな人生がいいなぁ…


こうして八木山健太の人生は幕を閉じるのであった。


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