第2話 劣等生として(前半)
「改めて選ばれし5人の若き勇者たちよ、よくぞここへ来られた。君達にはこの世界を魔王の手から救ってもらう。」
王様がそう言うと宮城は不服な苛立ちを抑えれずに口を開く。
「なぁ王様、それを倒すメリットが俺たちにはあるのか?命かかってんのにデメリットしかないんじゃないのか?」
続いて愛菜が不安そうな顔で口を開く。
「そうですよ、私まだ死にたくないです。こうして彼氏もできたと言うのに」
愛菜は俺の腕にすがりつくと彼女の胸の柔らかな感触に腕が包まれ顔が緩みそうになるがここはグッと堪える。
「あー、王様、最初にあれ説明し方がいいんじゃないっすか?」
すると王様は口を開く。
「そうだな。どうやら君達は死線を越えてこなかったかね?」
確かに、俺と愛菜は横転したトラックの下敷きになるところだった。
「自分は通り魔に刺されそうになったっすわ。」
棚橋の逃げ足ならなんとかなりそうだと思ったが
「逃げようとしたんすけどなんか足が動かんかったんすわ。」
え?確かに俺もトラックが突っ込んで来る前に予想して逃げることができたかもしれないけどあの時足が動かなかった。それとも動かなかったとしたら…
「俺は登校中に上から『危ない!』と声が聞こえたから上を見上げた時にはでかい鉄骨が。そしたら衝撃の前に目の前が真っ暗になって…」
そして俺の手を占った名前も知らない謎のブ…彼女は
「私、マンションの15階に住んでるんだけど学校に行く前に洗濯物を干していたら急にヘリコプターが7.8階に追突して…」
後の展開は皆の想像の通りだろう。多分俺達の当時の今朝の話だろう。
「マンションとは?」
王様が首をひねりながら尋ねる。そうか、マンションというものが無い時代なのか。そうするとここは異世界ラノベ漫画でお馴染みの中世ヨーロッパの世界観なのだろうか。すると
「簡単に言いますと人が住んでる建物です。15階が屋上で高さは40メートルくらいでしょうか」
ざっくりな説明ですね。メートルという単位はこの世界にも通用するのだろうか。
「ほう、なかなか興味深いな。40メートルという高さは相当だな。君達の世界はこの世界より進歩していると見える。もしかしたら私の持っている書物の中に君達の世界のことが書いてあるかもしれぬな。」
え?ここ未来なの?それとも本当の本当に異世界なのか?まぁこの5人が生きている証拠だよな。あの世界にいたら誰ひとりとして死んでいるわけだし。
「私は予言していたのだ、君達が命の危険に晒されている事を。そして勇者の素質を持った君達を亡き者にしようした魔王を阻止する為に死ぬ運命だった君達のその『瞬間』(とき)を探し出しここへと集めるための魔術し召集する事を。」
宮城はまた口を開く。
「簡単に言うと俺はお前らを助けたから今度はお前らが俺らの世界を助けろ!そう言う事だな?」
「まぁ、その通りだ。だが勘違いしないでほしい。」
王様が宮城の事を肯定して返すと棚橋が口を開く。
「そして協力しないでそのままだと自分らの住んでる世界『地球』もその魔王に滅ぼされてしまう。そう言う事っすよね?」
「君に説明した通りそう言うことになる。」
俺は全てを理解しため息をつく。はぁ、折角愛菜と付き合えるようになったのにからじゃあ幸せもへったくれもない。
「まだ名を名乗っていなかったな。私は『ブライン=シュバルライト』でありここはシュバルライト城王家の間である。ようこそシュバルライト王国へ」
すると何人か兵士が現れ左右の壁に立ち整列をするとその中の兵士長っぽい人が声を張り上げる。
「私はシュバルツ騎士団の団長を務めておりますシエラ=カミールと申します。」
なんか血を吸われそうな名前だな。まぁ女の団長が、棚橋よりも背が高くスレンダー美人だな。鎧は鎖帷子のような身動きが取りやすそうな装備だが露出が高めなので目のやり場に困る。
「私、カミール流剣技は速さを追求し、それに加えドレイン系の剣技を得意としております。見ての通り武器はレイピアです。」
そして剣を数回素振りで突きを繰り出す。だが何故か俺には見える速さだった。
「7連撃か、かっこいいな。」
「お、そなた。見えるのか?」
「ああ、もっと疾く出来るか」
「む、それは私への挑戦か?」
「いや、もっと見てみたいんだよ。貴方の実力を」
「ふむ、そうか。良かろう。」
すると2.3秒呼吸を整え突きを繰り出す。
「疾い!」
だが見えてしまった。なぜだ?物凄く疾かったのにだ。
「13連撃だと!?」
「おお、見えるのか?だが不正解だ」
「何?」
「実は15連撃だ」
もう1度同じ動きを試してみた。すると最初と最後に違和感が生まれる。
「ま、まさか!?」
「なんだ、気付いたのか」
「ああ、最初と最後は細かく2連撃で入っている。剣を抜いた時に突く位置を少しずらして最後は同じ要領で突きを2発入るようにしている。だからあの実力と芸当で15連撃繰り出せたのか。お見事だ」
「そんなに褒めるでない。それではまた後ほど」
彼女は挨拶を終えると引き下がる。
「それでは勇者の君達には適正試験を行なってもらう。まずマナ殿、そこに立ってくだされ。」
「はい。」
するとさっきから大人しくしていたブライン王の隣にいる眼鏡をかけた中年男性が一歩前に出て口を開く。
「これより身体能力、適性検査をさせていただくブライン王の側近のニール=エドワードと申します。以後お見知りおきを。では早速作業に取り掛かりたいと思います。」
彼が作ったと思われる精密な魔法陣の中央に愛菜が立つと水しぶきのオーラが纏われる。
「おお、マナ殿はウンディーネに愛されし者。そして適正武器は弓とレイピアですな」
水しぶきの時点で水属性が適正属性なのはわかるが適正武器まで指摘できるとは。
「そしてマナ殿の身体能力分析に入りたいと思います。一応私の魔法で数値化されるのですがとりあえずアルファベットでランクをさせていただきます。最高ランクSSですがほぼないものだと思います。順にS.A.B.C.D.E.Fの大まかには8段階です。冒険前の初期状態なので多少低くても戦いの中で強くなっていくと思われますので
「マナ 体力D、力E、魔力B、防御D、速度B、運A、魅力SS、総合+C、魅力は他人や魔物、あらゆる生物を惹きつける力。援護系や回復系の魔法に関係してまいりますぞ。まさにマナ様にふさわしい能力です。プリーストを目指してみては?」
「あ、ありがとうございます」
ほえー能力診断に魅力なんてもんがあんのか。確かに愛菜は最高に可愛いけど。余談ではあるが愛菜は校内美少女ランキング学年1位で校内2位だった。1位って確か生徒会長だったんだよな、顔なんてまったく覚えてねーわ。
「次にライト殿、こちらの魔法陣に入ってくだされ。」
「了解」
面白くなさそうな顔をしながら魔法陣に入っていく、すると緑の竜巻のような強い風が吹き荒れる。
「おお、これはこれは。魔力が強ければ強いほど魔法陣と共鳴し、強い力が現れる。これは期待できますぞ。」
側近のニールが声を荒げるとブライン王はここぞとばかりに機嫌が良くなる。そりゃそうだ。出来のいい駒ができればな、まぁソシャゲのガチャで確定演出が出るようなもんだ。さて、どんなURなんだろうね優等生君は…と言う皮肉めいた事を思っているとニールの診断が終わる。
「これは凄い!体力A、力A、魔力S、防御C、速度B、運C、魅力S、総合A」
おい、まだ2人目で第2話だぞ。冒険前になんちゅうスペックしやがんだ。
「適正武器は剣、属性はもちろん風、シルフの御加護か宿られておりますな。魔力が強いので攻撃魔法で上級ジョブ『魔法剣士』を目指してみてはどうでしょう?」
「まじか、これで愛菜を守れるな」
何彼氏の前でイキってんだよ。
「もう、ライ君ったら〜」
なに愛菜まで満更でもない顔してんだよ。ちょっと顔赤いし。この時気づいてなかった。俺の不幸が既に始まっていた事を。
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