夜想

深更の星降る野辺に佇みて

凍える風ぞ身に浴びて

されど乱れぬ我が想い


想い出づるはあの夜の逢瀬

ここが場所にて いまが時にて

幻の 君と踊りぬあの夜の月よ

白妙に あえかなる

白光纒いし君が姿よ

我等廻(めぐ)れば北風巡り

星達真似て共に舞い

花達にわかに目覚めきて

我らに触れんとさざめきて

その葉をばしきり伸ばしぬ

あの美しき夜(よ)のことよ


想い出は斯くも麗し

さはれ今君は此処になし

江湖の無下に洗われて

節榑立ちしわが手より

砂の如くに去り逝けり


音をば泣けども甲斐はなく

祈念すれども報いなし


今はただ この懊悩を忍び待つのみ

夜々の月見て暮らすのみ

払暁の 時を震えて暮らすのみ

我が胸に 夜の訪れることやあらんと

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