第14話 僕と彼女と

なっちゃんと付き合い始めてから2週間が経過した。


なっちゃんとの関係は良好だ。

この間はお昼にお弁当を作って来てくれたし、気のせいか以前よりも笑顔が増えた気がする。それに僕自身も最初の内は気になっていた周りからの視線もあまり気にならなくなってきていた。

慣れただけという話もあるかもしれないけど・・・僕も少しは変われているんだろうか。

実際のところ僕は地味な唯の高校生だけど、なっちゃんは皆の憧れる生徒会長だ。

見た目も可愛いし成績も優秀。なっちゃんは気にしないだろうけど、僕が隣に居ても周りから見て恥ずかしくないレベルに僕も変わらなきゃなと最近考えている。

ただ、具体的に何を・・・・というと正直思い浮かばない。


博也も三田さんも高校生活最後のインハイに向けて部活が忙しそうなので相談するのも悪いしな・・・・

そんな事を考えているとなっちゃんが話しかけてきた。


「ふゆくん。そろそろ期末試験だよね。勉強進んでる?」

「範囲の勉強は大枠終わったよ。なっちゃんは?」

「私も。でも・・・またふゆくんと一緒に勉強会はしたいかな・・・」

「そ それはもちろん!僕もなっちゃんと一緒に勉強会したいな」


あの後、駄菓子屋で何度かなっちゃんと勉強会は行っていた。

2人きりでだけど純粋に勉強だけをしている。

それを聞いた博也からは"本当2人とも真面目だよな"とからかわれたけど・・・

一応・・・期末試験近いし受験生だし・・・僕らには僕らのペースもあるわけだし・・・それに2人で居るだけでも何となく幸せな気分になれるんだけど・・・こういうのって・・・やっぱり僕から動かなきゃダメなんだろうな・・・。



「ねぇ内村君、近藤さん。ラブラブなところ悪いけどちょっといいかな?」

「ラブラブって・・・高坂さん?」


博也や三田さんがいる所謂カースト上位グループの高坂さんだ。

ちょっと派手目な感じで普段会話することはめったにないんだけど彼女も僕や博也と同じ中学出身で、僕が普通に話が出来る数少ない知り合いだったりはする。

中学の頃、不登校になった僕にも色眼鏡なしに親切にしてくれた優しい子なんだよな。当時は結構地味な女の子だったんだけど・・・美容師目指してるって言ってたっけ。

そういえば弟さんは元気にしてるかな。前に勉強見てあげたことあったよな。


「あのさ。期末テストも近いし"私達"に少し勉強教えてくれないかな?今回の試験範囲でわからないところがあってさ」

「勉強を?別にいいけど"私達"って高坂さんだけじゃなくて?」

「うん。新田君と池田君と広永君、それから綾女と秋穂も」


それって博也達のグループのメンバーじゃないか。

いやいや・・・博也と三田さんはともかく他の人とはほとんど会話もしたこと無いよ僕。

なっちゃんも話したこと無いような顔してるし。


「でも池田君や広永君って僕は話とかしたこと無いよ。それに綾女さんって?」

「あ、綾女は隣のクラスの森田綾女。生徒会の副会長だから近藤さんは馴染みあるよね」

「う うん。もちろん綾女は知ってるけど他の人は私も・・・」

「大丈夫だよ。みんなも2人と仲良くなりたいみたいだし」

「僕たちと?」

「そ。学年トップクラスの秀才の内村君と生徒会長の近藤さん。2人とも人付き合いとか苦手らしいけどみんな注目はしてるのよ?それに以前と比べて2人共表情が優しくなった気がするし。あ、新田君も2人は勉強教えるのも上手いからって勧めてくれたのよ」

「博也が・・・・」

「お節介に思うかもしれないけどさ、新田君も秋穂も2人の事は結構気にしてるんだよ」


あいつ僕たちの交友関係を広げようとして・・・・

本当お節介なんだからな・・・・でもありがとな。


「ありがとう。じゃ人数もいるし放課後の図書室でいいかな?なっちゃんもそれでいい?」

「うん。大丈夫だよ」

「ありがとう。じゃみんなの都合聞いてまた連絡するね」




翌日の放課後、学校の図書室で勉強会は行われた。

僕やなっちゃんも最初の内は人見知りが発動し中々上手くコミュニケーションが取れなかったけど、そこはカースト上位の陽キャグループということで、博也や三田さん含めコミュ力が高めのみんなから話しかけられ、会が終わる頃には僕もなっちゃんも皆と打ち解けることが出来ていた。

そして、期末試験が終わったら皆で遊びに行く約束までしてしまった。





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迎えた夏休み。

大学受験が控えているということで夏期講習に参加するなど受験勉強は忙しかったけど、博也達と遊びに行ったり、なっちゃんとデートをしたりと今までの夏休みでは得られなかった楽しい時間を過ごす事が出来た。

なんだろう・・・所謂リア充的な夏休みだった。


そして、2学期が始まる頃には博也達と接することで免疫が出来たのか僕もなっちゃんもクラスの輪の中に少しずつ入っていけるようになっていた。

それに博也達の伝手で僕やなっちゃんに気軽に話しかけてくれる人も増えていた。

まさか高校3年も終わりに近づいてきたこの時期に友達が増えるとは思ってなかったけど、最近は以前より高校へ行くのも楽しく感じる。

本当博也には感謝の気持ちしかない。



そんな中、僕となっちゃんは進路を市内の川野辺大学に絞った。

元々は僕もなっちゃんも都内にある別の私大を狙っていたんだけど、お互い希望の学部もあったし、大好きな地元で一緒の大学に通いたいという思いが強くなってきていたからだ。


「ねぇこの過去問なんだけど、この解釈でいいのかな?」

「ん?そうだな。これだと・・・そうだね。いいと思うよ」


この日も駄菓子屋の和室でなっちゃんと2人勉強会をしていた。

建物が古いので少し隙間風が入って寒いけど・・・ポジティブにとらえれば眠くならないので良い事なのかもしれない。


「ありがとう。って ふゆくん どうかしたの?」

「ん?あぁちょっと考え事」

「考え事?」

「あぁ。最近僕の周りも変わったなって。ついこの間までは気軽に話が出来るとのは博也くらいだったのに今では高坂さんや池田に広永、それに三田さんや森田さんとも友達になれた。それに・・・可愛い彼女も出来たしね」

「それを言ったら私もだよ。綾女とは仲良くしてたけど男性と話するとかほとんどなかったし・・・それに彼氏が出来るとかいまだに信じられないよ」


確かに僕もなっちゃんも色々あったしな。

本当僕自身も未だに信じられないし不思議な感じだ。


「なっちゃんは今幸せ?」

「うん。・・・・ふゆくんは違うの?」

「もちろん幸せだよ。この先もなっちゃんと一緒に居たいし・・・居て欲しい」

「ふゆくん・・・・」


自然と顔が近づきお互い初めてのキスをした。

・・・キスの味はレモン味とか何かの本で見た気がしたけど少し甘い味がした。


僕達はまだ高校生だし大学受験もまだこれからだ。

この先、色々と困難なこともあるかもしれないけど僕は彼女と一緒に居たい。

その気持ちだけは変わらない。



「好きだよ なっちゃん」

「私も好きだよ ふゆくん」


****************

早朝予定でもう1話投稿し完結となります。

本当はもう少し早くアップ予定だったのですが内容に納得いかず書き直ししていました。まだ少し直すかもしれません。


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