第11話 戸惑う気持ち

翌日。

いつもの様に僕は早めに教室に行って、いつもの様に予習を始めた。


「おはよう ふゆくん。今日は早いんだね」

「なっちゃんおはよう。何だか早くに目が覚めちゃってね」


そしてなっちゃんが登校し右隣りの机に座り僕と同様に予習を始める。

3年生になってからは、いつもの風景なんだけど近藤さんがなっちゃんだとわかってからは、ついなっちゃんの事を意識してしまう。


「ふゆくんどうかしたの?」

「い いや何でもない。そ そういえばさ なっちゃんは進路どうするの?」

「私?私は川野辺大学かな。実家からも近いし・・・それにふゆくんも川野辺大学でしょ?」

「え?そ そうだけど・・・なんで知ってるの?」

「前に新田君と話してるのが聞こえて」


そういえば前に話してたかもな。でも・・・もしかして僕が川野辺大学に受験するからなっちゃんも?

い いやまさかそんな・・・それは流石に・・・


「おっはよう"冬彦君"」

「え?あ、おはよう三田さん」


ん?冬彦君??


「友達なんだし名前で呼んでもいいよね?新田君も"冬彦"って呼んでるでしょ?」

「あ、あぁ別に構わないけど」

「うん。ありがと。あ、それから数学の課題で少しわからないところがあるんだけど後で教えてくれないかな?」

「いいよ。僕でいいなら適当なところで声掛けてよ」

「ありがと!じゃまた後で!」


と三田さんは博也達のグループが集まっている教室の前の方の席へと向かっていった。

"冬彦君"か。何だかクラスの男子の視線が更に強くなった気がするのは気のせいだろうか・・・なっちゃんも三田さんも普通に人気者だからな。

それにしても昨日の告白の事・・・色々と考えちゃってたけど三田さんのあの様子なら大丈夫だったのかな。僕が気にしすぎなのかな。


「ねぇ ふゆくん」

「ん?なに?」


考え事をしているとなっちゃんから声を掛けられた。


「前から・・・その・・・聞こうかとは思ってたんだけど・・・み 三田さんと随分仲がいいんだね」

「三田さんと?

 ・・・そうだね。色々と話しかけてきてくれるし、確かの他の人よりは仲いいかもしれないけど・・・友達だよ。ほら三田さんって博也とも仲が良いし」

「そ そっか友達か。うん そうだよね。ごめんね変な事聞いちゃって」

「そんな事ないよ」


やっぱり名前呼びとかされたから気になったのかな?

確かになっちゃんが他の人から夏希とか名前で呼ばれてたら僕も気になるよな・・・何だろうこの気持ち・・・三田さんや裕也、それになっちゃんも同じ友達ではあるけど・・・僕のなっちゃんへの想いは・・・もしかして少し違うのかな。


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放課後、生徒会へ向かうなっちゃんを見送り、教室で帰り支度をしていると博也が話しかけてきた。


「冬彦、帰る前に少しいいかな?」

「あぁどうせ帰るだけだし。ここで大丈夫なのか?」

「問題ない。その・・・三田の件ありがとうな」

「え?僕は特に何も。むしろ告白してくれたのを断って・・・」

「いや、その件もだけど今日あいつに普通に接してくれただろ?三田も気まずくなるのは嫌だったみたいだからさ。

 ああ見えて結構ビビりで、そういうところ気にするんだよ」


そっか。やっぱり三田さんも告白の事は気にはしていたんだな。

普通に考えても告白して断られた相手に普通に接するのって勇気いるもんな。

でも・・・


「博也は・・・その三田さんの事は・・・どうなんだ?告白したんだろ?」

「・・・まぁ想いは伝えたし・・・だけど三田だってそう直ぐに気持ちは切り替えられないだろ?」

「確かに・・・そうかもな」

「まぁ俺は気長に待つさ」

「・・・そっか。伝わるといいな博也の想い」

「ありがとよ。あ、悪いな帰るところ捕まえちまって。また明日な!」

「あぁじゃあな」


部活の鞄を持って教室を出ていく博也。

三田さんと博也ならお似合いだよ。

本当・・・想いが伝わるといいな。



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帰宅後、受験勉強の為に部屋で机に向かっていた。

ただ・・・ここ最近の出来事の為か気持ちが落ち着かない。

こんなんじゃいけないはずなのに・・・


僕は頭を掻きむしりながら気分転換にシャワーを浴びようと着替えを持って部屋を出ようとした。

と、スマホから電話の着信音が。

"誰だ?僕の番号知ってる人なんで限られてるぞ"

机の上に置いていたスマホを手に取ると[近藤夏希]の文字が

"え?なっちゃんから?"

僕は慌てて電話を受けた。


「は はい冬彦です」

「あ あの夏希です。ゴメンね電話なんかしちゃって。今大丈夫かな?」

「大丈夫だよ。どうかしたの?」

「うん・・・何だかふゆくんの声が聞きたくて」

「え?」

「あ、ごめんなさい違くて、そ その・・・そうだ、き 期末試験もうすぐだと思うんだけど・・何だか集中できなくて、良かったら一緒に勉強会とか出来ないかなと思って。ほら2人ならお互い怠けてたら注意できるし。 ど どうかな?」


普段冷静ななっちゃんが何だか落ち着きのない口調で僕に話しかけてくる。

勉強会か・・・そういうの随分してないよな。

昔は博也や小松さん達とも図書室とかでやってたよな。

でも、確かに僕も今のままじゃ集中できないし効果があるかはわからないけど。


「うん。いいよ。何処でやるの?学校の図書室とかでする?」

「・・・ふゆくんが良ければ・・・おばあちゃんの家でやらない?」

「おばあちゃんの家って、あの駄菓子屋?」

「うん。鍵はお母さんが持ってるから。一応電気も水道もまだ通ってるし時々お母さんが掃除してたから」

「いいよ。あのお店は僕にとっても思い出の場所だし」

「ありがとう!じゃ じゃあさ、早速だけど明後日とか大丈夫?

 明後日は生徒会もないし私も早く帰れるから一緒に」

「そうだね。じゃ明後日の放課後ってことで」

「うん♪」


あの駄菓子屋にもう一度入れるとは思わなかったな・・・





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