第10話 僕の気持ち
最近僕の周りは環境の変化が激しい。
何だか疲れたな。
家に帰宅した僕は部屋着に着替えてベッドに横になった。
"三田さん・・・なんで僕の事を・・・"
好意を持ってくれているのは前から気が付いていた。
でも正直なところ告白されるほどとは思っていなかった。
僕自身も気持ちは嬉しいかったけど恋愛感情は特に持っていなかった。
それに・・・博也の気持ちも聞いてしまっていた。
あいつは本当にいい奴なんだ。中学の頃に孤立した僕にも変わらず接してくれたし高校に入ってから周りと距離を置いた僕にもあいつだけは今まで通りに話しかけてくれた。
あいつこそ三田さんとお似合いだと思うんだけどな・・・
と思っているとまさにその博也から電話が掛かってきた。
[よぅ冬彦。今大丈夫か?]
[あぁ大丈夫だよ。どうしたんだ?]
[俺さ今日・・・三田に告白した]
[え!三田さんに?]
[あぁお前も三田に告白されただろ?]
[知ってたのか?]
[あぁだから、その前に俺の気持ちを三田に伝えた]
[そっか]
[まぁ答えは保留にされちまったけどな]
[お前も告白は断ったんだろ?]
[そう・・・だな。気持ちは嬉しいけどって]
[三田も覚悟はしてたみたいだからな・・・でも変に気を遣わず明日からは今まで通り友達として接してやってくれな]
[あ あぁそうするよ。もしかしてそれを伝えるために?]
[まぁなそんなとこだ]
[・・・博也の気持ち伝わるといいな]
[はは 俺は保留されただけだぜ。まだ振られたわけじゃないからな。今からだよ]
[そうだな。応援してるよ]
[ありがとな じゃ時間取って悪かったな]
凄いよな博也は。有言実行というか・・・それに気遣いも。
僕には・・・・無理だよな。
近藤さん・・・僕は彼女の事どう思ってるんだろう。
彼女が"なっちゃん"だとわかったとき何だか嬉しい気持ちになった。
あんな気持ちになったのは本当に久しぶりだった。
思わず博也に電話しちゃったもんな・・・
でも・・・僕は博也みたいに告白は出来なかったんだよな。
色々と理由をつけて友達になってくださいとしか言えなかった。
"なっちゃん"なら僕を裏切るようなことはしないと思う。
でも・・・だからこそ怖かったんだ。
大切な思い出にまで裏切られたらと思うと・・・
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中学の頃・・・今とは違って僕には沢山の友達が居た。
いや正確には僕が友達と思ってただけだったんだけど・・・
小さい頃から両親に"人には親切に"って教えられて育ってきたこともあって周りの人のためになることは率先してやってきた。
それは中学に入ってからも同じで皆が嫌がるようなことも対応して僕なりに頑張っていたつもりだった。周りのみんなも喜んでくれていると思っていた。
それに・・・当時好きだった小松さんも喜んでくれたから全然苦じゃなかった。
でもあの日、放課後教室に忘れ物を取りに戻った僕は、教室の中で小松さんと同じグループの男女数名がしていた会話を聞いてしまった。
「にしても内村の奴、ちょっと煽てると何でもやってくれるよな」
「だね。ほんと便利だよね彼。面倒な事全部やってくれるんだもん。
それに多分内村君って私の事を好きだと思うのよね。ちょっと色目とか使うと凄く嬉しそうにするんだもん」
「はは 酷いなお前。ちょっと内村に同情しちまうぜ」
ショックだった・・・別に見返りを求めていた訳じゃないけどそんな風に思われていたなんて・・・・それに小松さんが僕の事をあんなことを言うなんて・・・
何だか凄く裏切られた気分になった僕は教室には入らずそのまま帰宅した。
そして・・・翌日から学校を休んだ。
塞ぎこんだ僕を両親は心配してくれたけど・・・僕はもう学校へ行く気にはなれなかった。
休みが続くと小松さん含めクラスのみんなも最初は"大丈夫か?"とかラインを送って来てくれたけど"どうせ上辺だけなんだろ"と思うと返信をする気も起きなくなっていた。
でも・・・あいつは博也は違った。
家まで来て僕の話を聞いてくれた。そして、じぶんの事の様に怒ってくれた。
そして博也に励まされ学校にも復帰した。
学校では博也が手を回してくれたのかはわからないけど、僕の事を気遣って話しかけてくれるクラスメイトもいた。
でも話しかけてきてくれたのは今まであまり接点がなかった人達ばかりで、仲良くしていたはずの小松さん達は僕の近くに来ることはなかった。
結局小松さん達にとっての僕は便利な使いっ走りだったんだろうな。
その後は、博也とごく少数のクラスメイト以外に対しては一定の距離を保ちつつ中学を卒業した。
また・・・裏切られるのが怖かったから。
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正直、この件があってから人を信じることも出来なくなったし人を好きになることに臆病になってしまったのかもしれない
近藤さん・・・"なっちゃん"は小さい頃から僕がずっと捜し求めていた人だ。
でも・・・僕はあなたの事どう思ってるんだろう。
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