第9話 告白と告白

放課後

何だか近藤さんこと"なっちゃん"と親しく接するようになったせいか今日はクラスの皆の視線をやたらと感じる。

今まで空気のような存在を目指していたボッチな僕としては何とも居心地が悪い。

でも生徒会長で学内でも人気のなっちゃんと友達になって親し気にしていればそれも仕方が無いことなのかもしれないな。


でも、なっちゃんとの会話は思っていた以上に楽しい。

今まで親しくしていた友人が博也しかいなかったってこともあるけどなっちゃんとの会話は話す内容も新鮮で楽しかった。

三田さんとも話はするけどなっちゃんも僕もインドア派で趣味や趣向も被るところが多く共通の話題も多かったりした。


「じゃあまた明日ね♪ふゆくん」

「あぁまた明日」


生徒会の仕事があるということで笑顔で僕に手を振りながら生徒会室へと向かうなっちゃん。

数人の男子生徒が見惚れている。

・・・気持ちはわかる。

なっちゃんを見てると何だか可愛いなとも思える。

正直こんな感情を僕が持つのも久しぶりかもしれない。

そういえばなっちゃんにお願いされて今度一緒に勉強会をする約束もしてしまった。彼女も成績は良い方だけど僕の方が少しだけ学年順位は上なんだよね。

一応学校の図書室でということにはなってるけど・・・・何だか緊張する。


「さてと。僕もそろそろ行こうかな」


帰宅部の僕は本来このまま家に帰るだけなんだけど、昼休みの終わりに三田さんから放課後テニス部の部室に来て欲しいって頼まれたんだよな。

何だか真剣な感じだったけど・・・部室の掃除を手伝ってとかじゃないよな。


そんなことを考えながら体育館脇のテニス部の部室へと向かった。

正直僕には縁のない場所だけど博也に誘われて何度かサッカー部の練習は見に行ったことがあるから一応部室棟の場所はわかるんだよね。


部室棟に着いた僕がテニス部の部室を探して歩いていると部室棟の2階へ上る階段の踊り場から僕を呼ぶ声が聞こえた。


「内村君!こっち!」

「あ 三田さん」


三田さんの案内で僕はテニス部の部室に入った。

いつもの三田さんは笑顔を絶やさない明るい感じなんだけど今の三田さんは何だか緊張した面持ちだ。

僕と向かい合う形で立つ三田さん。

そして、しばしの沈黙の後三田さんが僕に話しかけてきた。


「内村君。あのさ・・・内村君って近藤さんと付き合ってるの?」

「え?僕が近藤さんと?どうして?」

「・・・今日とか凄く仲良さそうに話してたからさ」

「・・・・」

「どう・・・なのかな?」

「・・・ともだち。友達だよ」


そう。仲良くはなったけど付き合うとかそういうのじゃないんだよな。

それに僕は告白したわけじゃない。友達になろうって言っただけだし・・・


「じゃ じゃあさ・・・私と・・・付き合ってくれないかな?」

「え?三田さんと?」

「うん。私、内村君の事が好きなの」

「・・・・」


確かに好意は感じていたけどなんで三田さんみたいな人が僕みたいな男を・・・

それに博也は三田さんの事を・・・


「・・・やっぱり・・・駄目かな」

「ゴメン・・・気持ちは嬉しいけど・・・」

「そっか・・・何となく予想はしてたんだ。でも告白して良かったよ。その方が・・・諦めがつくからね。やっぱり近藤さんの事が好きなの?」

「近藤さんの事は・・・わからない。でも今は彼女とか作り気にはなれなくて」

「そう・・・わかった。ゴメンね急に」

「いや・・・僕の方こそ・・・・ごめん」


「もう!私は辛気臭いのは苦手なのよ。

 あ、そうだ。恋人は駄目でも友達なら・・・いいよね?」

「え、あ、うん も もちろん」

「ありがとう。じゃこれからも"友達"としてよろしくね。

 あ、私の用事は終わったから・・・もう大丈夫だよ・・・」

「うん・・・・」


僕と視線を合わせ様としない三田さん。

何となく一人になりたいのかなという雰囲気もあったので僕はそのまま三田さんに声を掛けて帰宅の途についた。



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<三田 秋穂視点>


「はぁ~ぁ、、、、やっぱりフラれちゃった」


綾女から近藤さんや内村君の話を聞いてたし予想は出来ていたはずだけど・・・やっぱりずっと好きだった人に振られたのは辛いな。


と内村君が出て行った部室のドアが開いた。

一瞬内村君が戻ってきてくれたのかなとか期待もしたけど入ってきたのは新田君だった。


「気が済んだか?」

「うん。やっぱりフラれちゃった。心配してくれてありがとね」


新田君とは高1の頃から何となく同じグループで仲良くしていて気軽に話が出来る異性の親友って感じだったけど・・・さっき告白された。

正直新田君って女子の人気が高いし今までそんな素振りも無かったから"え!私なの?"って感じだったけど、私が内村君の事を好きなのを知ってたから遠慮してたらしい。

ただ、私が内村君に告白しそうだったからその前に気持ちを伝えておきたかったって・・駄目だろうけど後悔したくないからって・・何だか私と一緒だ。


でも・・・その告白に私は答えられなかった。

もちろん新田君が本気だって言う気持ちも伝わってきたけど・・・私も自分の気持ちに後悔したくなかったから。


それを伝えたら新田君は笑顔で"告白頑張れよ"って言ってくれた。

そしてもし振られたら慰めてあげるよって。

本当優しいしいい奴なんだよね。


「その・・・三田は可愛いし性格も良いし・・・きっともっといい出会いとかあるさ・・・だから・・・その元気出せよな」

「ありがとう。いい出会いか・・・そうだといいけどね・・・・」

「大丈夫さ」

「あ、そういえば新田君さっき私が振られたら慰めてくれるって言ってたよね?」

「あ、あぁ言ったけど」

「じゃあさ、今から駅前のカフェ付き合ってくれないかな?何だか特大パフェ食べたい気分なんだよね」

「はは それくらいで良ければ僕が奢るよ」

「いいの?じゃ早く行こ!」

「あぁ」


私も振られたばかりだし新田君の気持ちにすぐに応えることは出来ないかもしれないけど・・・彼になら心を開けるのかもしれないな。

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