第8話 友の想い
<新田博也視点>
どういうことだよ。
近藤さんが冬彦の言ってた"なっちゃん"だって。
昨日の夜、いつも冷静な冬彦が珍しく興奮しながら俺に電話をしてきた。
[聞いてくれ博也!近藤さんが"なっちゃん"だったんだ!]
[とりあえず落ち着け。何の話だよ。それに"なっちゃん"?]
[あぁ今日帰り際に話してただろ。あの"なっちゃん"だよ]
[おいおい待てよ。それが近藤さんだっていうのかよ?意味わからんぞ]
[博也と別れた後な、何となく昔"なっちゃん"と出会った駄菓子屋に行ってみたんだ。そうしたら近藤さんが居て・・・]
[で?]
[近藤さんって、あの駄菓子屋のおばあさんのお孫さんだったんだ。それで小さい頃よくあの店に預けられてて・・・僕はその時に出会ったんだ]
[まじか・・・・]
[まじだ]
・・・何だよこの展開。
近藤さんは高校入学当初から冬彦に気が付いていて中々話しかけられずにいたらしいけど・・・それにもし2人が付き合い始めたら・・・三田はどうなるんだよ。あいつも冬彦の事・・・
そして、今日学校に行ってみれば近藤さんと冬彦は"ふゆくん","なっちゃん"と呼び合い仲良さげに話をしていた。
冬彦曰く友達になっただけとは言ってたけど・・・あの雰囲気はそれ以上だろ。
三田も何だか複雑な表情をしてたけどクラス全体が皆同じ感想だ。
昨日までクラスでも目立たなかった冬彦が、学内でもトップクラスの人気を誇る生徒会長の近藤さんと親し気にしてるんだからな。
それに普段表情がキツメな近藤さんの笑顔。あんなの始めた見たぜ。
こんなこと・・・本当想定外だ。
冬彦が幸せになってくれるのは友として嬉しいけど、俺としては三田が冬彦に告白する前に思いを伝えるつもりでいた。
・・・でも今告白するって失恋して弱ってるところにって思われないか?
いや・・・失恋になるのか?・・・それに三田と俺の仲なら気にしなくて大丈夫なんじゃないのか?
あぁ~普段散々告白とかされてるけど告白する側はこんなに悩むのか。
これから断るときちょっと考えちゃいそうだな。
そんなモヤモヤした気持ちで迎えた昼休み。
何となく窓から校舎の外を見ると三田が隣のクラスの森田と何処かに歩いていくのが見えた。
あの方向はテニス部の部室か?
何となく気になり俺は教室を出てテニス部の部室へと向かった。
部室に居るのかな?
俺がテニス部の部室に近づくと扉が開き三田と森田が出てきた。
「え!」
「あれ新田君?どうしたのこんなところで」
「い いやちょっと部室に用事がな・・・」
「そ。昼休みもうすぐ終わるから早く用事済ませた方がいいよ♪」
「おぅ ありがとな三田」
森田と何か話してるんじゃなかったのかよ?
出てくるの早すぎるだろと思いながら教室に戻ろうとしたところ
「新田君 ちょっといいかしら」
「え?森田?」
三田と一緒に校舎に戻ったと思っていた森田が俺に話しかけてきた。
「構わないがなんだ?昼休みもう終わっちまうぞ」
「大丈夫。時間取らせないから。
単刀直入に聞くわ。あなた秋穂の事好きでしょ!」
何故か急に俺を指さしながら森田が聞いてきた。
「な なんで・・・お 俺が三田をって!え ちょ森田 お前」
「わっかりやすいわね。でも学内No.1モテ男の新田君が秋穂の事をねぇ~」
「お おい俺はまだ何も」
「まぁ良いわ。本題に入るわよ」
って俺の話聞けって。
「秋穂ね。多分内村君に告白するわよ」
「!!」
「内村君の親友のあなたなら知ってると思うけど内村君は多分近藤さんと両想いよ。今は色々あって付き合ってないみたいだけど・・・多分秋穂は振られる。
後悔したくないからって私が諦めろって言っても頑固で・・・」
「確かに・・・頑固なところあるからな。
でもそれは三田の判断なんだろ?本人の納得する形でも良いんじゃないか?」
「確かにね。。。でも秋穂って強気に見せてるけど本当は凄く泣き虫で気弱な子なのよ。勝手かもしれないけど私は秋穂に悲しい思いはしてほしくないの」
「それで・・・告白をやめるよう俺にも協力をってことか?」
「そう。あなたも秋穂の事が好きなら悪い話じゃないでしょ?」
悲しい思いか・・・
考えてみると俺は自分に都合のいい事しか考えてなかったのかもな。
冬彦に告白する前に俺がとか思ってたけど三田はそれでどう思うんだ?
あいつの性格からして冬彦への気持ちを引きずったまま俺と付き合うなんてことはしないよな。
それに森田の言うこともわかるけど・・・同じことだよな。
仮に告白をやめてもずっと引きずるよな。
それなら・・・
「わかった。俺は三田の告白を応援するよ」
「そうありがとう・・・って はぁ? 私の話聞いてたんでしょ?
あなた秋穂の事が好きなんでしょ?何故に応援?」
「応援はする。でもその前に俺の気持ちは伝えるよ」
「気持ち?」
「あぁ三田の事が好きだってな」
「え?でも?」
「森田も三田との付き合い長いだろうからあいつの性格知ってるだろ。
多分ここで説得してもきっとあいつは後悔するし引きずると思う。確かに悲しい思いはするかもしれないけど、俺は三田が納得いくようにさせてあげたい」
「・・・・新田君。秋穂の事よくわかってるわね。確かにそうかもしれないわね。私もどうかしてたわ。秋穂の事わかってるようでわかってなかったわね」
「そんなことないさ」
「ふふ お似合いね」
「え?」
「あなたと秋穂よ。気持ち伝わるといいわね」
「あぁ だといいな」
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