第7話 2人の距離感
<三田秋穂視点>
「おはよう内村君」
「あ、三田さん おはよ」
いつも早く教室に来ている内村君だけど珍しく今日は私よりも遅い時間の登校だった。まぁ私も朝練で早かったんだけど寝坊でもしたのかな?
「あ、 あのおはよう ふゆくん」
「え、あ、あぁおはよう なっちゃん」
「「え?」」
一瞬クラスがざわついた。
氷の美少女とか呼ばれ普段あまり表情を崩さない近藤さんが内村君に対して笑顔で"ふゆくん"と言って挨拶をした。
それに内村君も近藤さんの事を"なっちゃん"って・・・・
その後も何だか楽しそうに会話をしてるけど、昨日まではお互い名字で呼びあったし近藤さんに至っては他の男子同様に内村君に対しても塩対応な感じだったと思う。一体2人に何があったの?
綾女から"近藤さんも内村君の事が好きみたいだよ"とは聞いてたけど、もしかして告白して付き合う事になったとか?
近藤さん奥手そうだし大丈夫かと思ってたんだけど・・・・もしかして内村君から告白したとか?
その後もクラスの注目を浴びながら内村君と近藤さんは休み時間など適度な距離感で会話を楽しんでいた。
恋人同士、ただの仲の良い友人、どちらともとれる距離感だ。
昼休み。
私はどこかモヤモヤした気持ちで綾女に会いに行った。
綾女は生徒会副会長で近藤さんとも仲が良い。
だから何か知ってるんじゃないかと思ったからだ。
私は教室で友達とおしゃべりをしていた綾女に声を掛けテニス部の部室まで来てもらった。部長権限ということで部室の鍵は持ってるんだよね。
そして、部室に入った私は綾女にストレートに聞いた。
「早速だけど綾女。近藤さんと内村君が妙に仲良くなってるんだけど・・・何か知らない?」
「ふぅ・・・やっぱりその件だよね。聞かれると思ってた」
聞かれると思ってたってことはやっぱり何か知ってるのね。
「昨日ね、夏希から電話があって話しを聞いたんだけど・・・放課後に偶然内村君と会って色々とお話したんだって。凄く嬉しそうに話してたよ」
ふ~んお話・・・ってそれだけ?
「え?それだけなの?何だか距離感が凄く縮まってたし近藤さんが告白したとかじゃないの?」
「うん。そういうのは2人ともしてないみたいだよ。普通に話しただけみたい」
「そ そうなんだ・・・じゃぁ私にもまだ」
うん。それだけなら私にもチャンスが・・・・
私だって内村君の事好きなんだから!
「そうかもしれないけど・・・私も言うのは辛いけど変に期待持たせるのもだからはっきり言うね。秋穂は・・・多分無理だと思う」
「な なんで!私だって内村君の事」
「知ってるけど・・・その2人は多分両思いだよ。
あの2人幼馴染なんだって。それに夏希の初恋の人らしくて・・・」
「え!何よそれ! し 知らないよそんな話」
あの2人が幼馴染?初恋の人?どういうことなのそれ。
「綾女は知ってたの?2人の事?」
「小さい頃によく遊んでた男の子に似てて興味があるって話は聞いてたけど、そこまでは知らなかったよ。秋穂にも教えたでしょ?夏希が内村君の事好きだと思うってことは」
「・・・・」
何よそれ反則よ。幼馴染とか・・・
「じゃ じゃあなんであの2人付き合わないのよ。両思いなんでしょ?」
「夏希は・・・ああ見えて人見知りでね。打ち解ければ結構おしゃべりなんだけど・・・それに幼馴染って言っても随分会ってなかったわけだし、同世代の男性には特に苦手意識あるのよ。例え内村君だとしてもね。だから昨日内村君とまともに話が出来たってこと自体私からしたら奇跡に近い話だと思ってる。
それに・・・夏希に聞いたんだけど内村君も中学の時に色々とあって人間不信気味なんだって」
「人間不信?」
「うん。本人から話を聞いたらしいけど・・・
いじめとまでは言ってなかったけど内村君って優しいし気が付くタイプだから色々と周りに気を使ってたみたいでね・・・そういった中で仲良くしてた友達に裏切られたとかで。
詳しくは聞いてないみたいだけど、その友達のために頑張ったのにって・・・そんなこともあって、高校に入ってからは周囲に壁を作るようになったらしいの。それは近藤さんに対しても同じで・・・だから友達も少なそうでしょ?」
確かに新田君くらいしか内村君と喋ってるの見たことないかも。
私も最初は話しかけていいか悩んじゃったし。
でも・・・私だってあなたの事・・・
「まぁそんな2人だから・・・友達から始めましょってことになったみたい。
私からしたら"今まで友達って思ってなかったの"ってツッコミ入れたいところはあったけど夏希も真剣に話してくれたから茶化したら悪いかなって
それに"友達"って言ってもいずれお互いの信頼関係が築けたら・・・付き合うんじゃないかなって思う」
「そっか・・・・」
「だから、秋穂も今の関係性からしたら"友達関係"にはなれるかもしれないけど、その先は・・・やっぱり夏希には敵わない気がするの」
そっか・・・私じゃ2人の間に入るのは・・・でも・・・
「ありがとう綾女。正直に話してくれて嬉しいよ」
「・・・何だか力になれなくてごめんね」
「気にしないで!綾女らしくないよ」
「・・・らしくないって・・・結構こういうの気にするのよ私」
「はは 冗談よ。でも・・・気持ちの整理が出来たよ」
「じゃぁ内村君の事は・・・」
「うん。今度告白する」
「そうやっぱり・・・って はぁ? 私の話聞いてたんでしょ?」
「うん。話聞いてる限り確かに勝ち目はなさそうだけど・・・このまま自分の気持ちを抑えて諦めるのも私らしくないんじゃないかなってね」
「秋穂・・・わかった。玉砕したら慰めてあげるからね」
「うん。駅前のカフェでジャンボパフェ奢ってね♪」
「え?ぱふぇ?」
後で・・・後悔だけはしたくない。
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