第3話 右隣りの想い
<近藤夏希視点>
「ちょっと綾女!聞いてよ。今日内村君とお話しちゃったんだよ!」
「ふ~ん」
私は生徒会室に入ると机に座って本を読んでる親友で生徒会副会長の森田綾女に話しかけたわけだけど・・・思った以上に反応が薄い。
「ねぇちゃんと聞いてる?」
「聞いてるわよ。どうせこの間みたいに朝挨拶できたとか落とした消しゴム拾ってもらったとかそういうんでしょ?」
「うっ・・・」
「もしかして本当にそうなの・・・・はぁ~本当あんたって生徒会長してる時と内村君の話してるときのギャップが激しいわね」
大きな溜息をつかれてしまった・・・・駄目なの?
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私の名前は近藤夏希。
川野辺高校3年生で生徒会長なんてことをしている。
昔から人見知りで人との付き合いは苦手。
そんな性格を直そうと高校は実家から少し遠かったけど同じ中学の子が行かなそうな川野辺高校を受験して所謂高校デビューを果たした。
入学してからは積極的に学級委員や生徒会の仕事に励み気が付けば生徒会長なんて重役になっていた。
友達も沢山出来たしデビューはある意味成功だったのかもしれないけど、根底の人見知りは相変わらずで初対面の人には不愛想気味になってしまうのは相変わらずだった。
特に男性に対しては、話しかけられると緊張して塩対応になってしまうことが多かった。
カッコいい人に声掛けられれば私ももちろん嬉しかったりはするんだけど・・・告白とかされるとつい余計な事を言ってしまったり・・・
結果、高根の花とかクールビューティとか氷の美少女とか色々な呼び名も付けられ、2年生に進級する頃には男性からは少し距離を置かれるようになってしまった。
告白してダメージを受けるより遠めに見てるくらいで丁度いいとか・・・何それ?
そんな私も実は好きな男の子が居る。
彼の名前は内村冬彦君。
しかも、今私は彼と同じクラスで隣の席。
高校に入学して彼を見つけたときは本当に夢かと思った。
だって、小さい頃大好きだった男の子と再会できたんだから。
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まだ地元の保育園に通っていた頃だから10年以上も前の話。
私は川野辺に住んでいた祖母の家に良く遊びに行っていた・・・というか保育園でも人見知りが激しく環境に馴染めなかったため母が祖母の家に預けに行っていたんだ。本当申し訳ない。。。
ただ、祖母の家に預けられても祖母は商売をしていたのであまり構ってくれるわけでもなく、テレビを見たりお絵かきしたりして1日を過ごしていた。
そんな時、独りでお庭で遊んでいた時に声を掛けてくれた男の子がいた。
それが彼"ふゆくん"だ。
彼は祖母の家の近所に住んでいたらしく、私が"独りで寂しそう"だったから声をかけたんだそうだ。
そんな彼に対しても私は強がって"寂しくなんかない!"と拒絶していた。
でも、その日から彼は毎日の様に"一緒に遊ぼ"と誘いに来てくれるようになり・・・いつの間にか私も彼と打ち解けて一緒に遊ぶ仲になった。
あの頃は毎日が凄く楽しかった。
彼は初めての友達であり・・・私の初恋だったのかもしれない。
でも・・・そんな楽しい時間も長くは続かなかった。
祖母が体を壊して入院することになってしまったんだ。
私は心配されながらも地元の保育園に戻ることになり彼とも会えなくなってしまった。
サヨナラも言えずに・・・
ただ、彼と一緒に過ごした時間があったおかげか、以前の様な拒絶反応はなく、保育園にも何とか馴染むことが出来て母を安心させることは出来た。
そして、2年が経過し小学校に入学する頃、祖母の病状も回復し再び祖母の家に顔を出す機会も増えた。
私は彼の事を祖母に聞いた。
でも・・・小さかった私は彼の事を"冬くん"と呼び名字もちゃんとした名前も聞いていなかった。いや聞いていたのかもしれないけど小さかった私は覚えていなかった。
それに、彼も私の事は"なっちゃん"と呼んでくれていたけど多分私もちゃんとした名前とかは教えてない。
祖母もわからないと言いつつも商店街で駄菓子屋を経営していたから、そこに買い物に来ていた近所の子じゃないかとは言ってくれた。
でも、その後彼に会うことはなかった。
そして、そんな祖母もその五年後に亡くなり駄菓子屋も閉店。私が川野辺に行くこともなくなった。
その後月日は流れ川野辺高校の入学試験の日。
受験生の大半は地元の川野中、川北中、川南中の生徒ということもあり、試験会場控室の食堂では皆同級生同士で固まっている様だった。
でも私は地元から離れた学校ということもあり1人だった。
緊張する・・・・でも勉強はやるだけやったんだし・・・などと思ってると
「飴舐めます?」
「へ?」
川野中の制服を着た男性が私に飴を勧めてきた。
何この人・・・でも何だか・・・
「な 何なんですか?」
「あ、ゴメン。余計なお世話だったかな。独りで緊張してたみたいだし飴舐めればリラックスするかなと思って。糖分取るのは良いみたいだよ」
「・・・緊張してるように見えましたか?」
「うん 凄く。折角受験勉強頑張ってきたんだし緊張してたら実力出せないよ」
と私に飴球を差し出しつ自分も一粒口に入れた。
「う~ん甘い!」
「お~い冬彦なにやってんだよ。そろそろ行くぞ」
「おぅ悪い今行く。あ、じゃ良かったら食べてね。お互い頑張ろ!」
「・・・ふゆひこ・・・ふゆ・・くん?」
その後、飴玉のお陰かはわからないけど緊張もほぐれ無事に高校に合格することが出来た。
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そして、迎えた新学期。
私は隣のクラスに受験の時の男の子を見つけた。
私の中では彼はあの"ふゆくん"なんじゃないかという気持ちで一杯だった。
でも・・・もし違かったら。
それに"ふゆくん"だったとしても突然いなくなった私の事をどう思ってるのか。
それ以前に私の事覚えてないのかも。
そう思うと中々話しかけられなかった。
そして今に至る。
もちろん入学してからの2年間。何度か彼に話しかけようとしたことはあった。
でも彼は一部の友人以外は壁を作るかの様にあまりコミュニケーションを取らなかったから余計に話をする機会もなかった。
ただ、今年は高校生活最後の年。
運よくクラスも同じになり席も隣になったんだ。
とりあえず、まずは挨拶くらいから・・・・
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