第7章-1 兄貴ちゃん(のメンタルとか境遇とか色々)はおしまい
「ねー兄貴ー」
ソファで寝そべりながらポテチを貪ってるトド(妹)が話しかけてきた。
「ねーしほりんはーいったいいつ来るのおぉー?」
「さあ、俺は知らん」
「全然来ないじゃん、さすがに長すぎん?」
「そうか?」
「兄貴、何かやったんじゃないでしょーね?」
「やってねえよ。しほりんもテスト終わったしとりあえずひと段落したんだろ?」
「やーだー、早くテストー」
「お前の口から”早くテスト”とか明日は台風か大雪だな」
「あーーしほりんしほりんじおりぃん……」
足をバタバタさせていた妹だったが、そう言ったきりパタッと動きが止まった。ご臨終ですかね。
まったく人の気も知らないで……しほりんに会いたいのはこっちだって一緒なんだよ。ていうか、どうすればいいのか皆目見当がつかん。
「しほりん……大丈夫だよね?」
さっきまでより少し下がったトーンの妹の声。
はっとする。
「は、何が?」
頑張って平静を装う俺。
「兄貴本当に何も聞いてないの? しほりんのこと」
「いや、知らんって……」
「しほりんね……最近ブログ更新止まってるんだよね。毎日なんかしらあげてくれてるのにさぁ」
「……だから忙しいんじゃね?」
「だってさぁ。レッスンとかリハが忙しいときはその様子を動画アップしてくれてたし、テスト週間だって勉強大変~でも私がんばるっ!的なのを上げてくれてるんだよ? そんなしほりんがただ忙しいからって理由だけで更新サボったりしないって!」
「へーそーなんだーさすがしほりん」
「ねえ兄貴、真面目に聞いてよ」
成績は悪いのにこういうとこは妙に鋭いんだよなあコイツ。ただ俺も、しほりんと彼女を取り巻く現状についてちゃんと把握できていない以上、いくら身内といえども軽々しく口を滑らせていいものかどうかわからなかった。亜季乃にしゃべったらちょっとは自分の気は紛れるかもしれないとは思ったが、おそらく何の解決にもならないだろう。余計に妹を騒がしくさせてさらに余計な心配させてそれで終わりだろう。
「さくらちゃんも最近あんまり返してくれないしさぁ」
「へーそうなんだ」
確かに桜玖良も本当のこと言い辛いわな。それを言うとあれ以来会ってない桜玖良のことも気がかりではあった。
俺も桜玖良もどうしていいかわからない現状で、亜季乃に頼りたい気持ちはある。あるが、やはり今ここで打ち明けるのは違うと思った。せめて桜玖良に相談してからだ。それならとりあえず今は妹の気を紛らわすしかない。
「考えすぎだろ」
「兄貴つめたい」
「とりあえず様々な可能性を考慮してみようぜ」
「何よそれ」
「携帯が壊れたとか」
「すぐ買い替えるでしょ」
「旅行中」
「旅先の様子あげるでしょ」
「山奥に籠って修行中」
「すでに完璧超人アイドルのしほりんがこれ以上何を会得する必要が?」
「実家に帰りまーす(わっふぅ♪)」
「どこよ!しほりん苦しめるクソ旦那はっ!?」
「しほりんに近づく男は皆殺しだっ!」
「そうだそうだっ!」
なんか二人して盛り上がってしまって草。
「ただまあ……その理論で言うと一番真っ先に抹殺されるの兄貴だけどね多分」
「ほわっ?」
「だってそうじゃん、いくらうちらが一緒とは言えあんな至近距離でしほりんといちゃいちゃ勉強してるんだから。ギルティもギルティ、デスペナものだよ」
おおっと! ここでカウンター攻撃きましたよ。これテスト週間ずっと図書館で二人っきりで勉強してたってバレたらガチでキレられそう……だめだ。亜季乃に相談しようかとかちょっとでも考えてたさっきまでの俺、大馬鹿者だったわ。冷や汗出てきた。
「そ、そだね……」
「兄貴も自分の幸せをもっと認識しなよ」
「はい……」
ちなみにさっきのスペルは guilty(有罪)と death penalty (死刑)である。発音はペナルティではなくピーナゥティって感じ。妹はお菓子とか色々漁ってった挙句自分の(汚)部屋に帰っていった。袋とか容器とか散らかしっぱなしのまま。これまた親に怒られる奴やん。俺はしぶしぶテーブル上の片づけを始める。
しかし手を動かしながら俺はふと思った。確かに妹の言う通りだ。しほりんと過ごしたこの数か月間はまさしく奇跡だったのだ。そして改めて思う。
決してこのままでいいはずがない、と。
だからと言ってこれ以上俺に何ができるというのだろうか。俺だって自分なりに頑張ったんだ。女社長やしほりん父に会って、自分なりに精一杯頑張ったつもりだった。でもそれじゃただの自己満足だ。そんなんじゃだめだ。
でもこれ以上何をどうすれば……
しかしそこまで考えて、まだ俺にはやっていないことがあることに気がついた。
新章開幕しました。リアル忙しでしばらく更新できず誠に申し訳ございませんでしたぁぁぁ! これからはきっとがんばるぅ!
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