第5.5章-5 普通科高校の劣等生
放課後を告げるチャイムが鳴る。教室は部活に遊びに繰り出そうとエンジョイ系の者どもが真っ先に席を立ちがやがやと騒ぎ始める。
「ふぅやっと終わったでござる~~」
陽の者の合間を縫って、太洋が俺の席に這う這うの体でやってきた。
「おつかれ」
「ふうぃーでござる」
「なあ太洋帰りどっか寄らん?」
「ゆーそれいうぃーねー♪」
テスト明けでしほりんの家庭教師もしばらくお休みのため(+週末のライブの練習に忙しいので)、昔のように暇な放課後の毎日がやってきてしまっていた。しほりんに会えないのは残念だけど、まあこんな気楽な日常も久しぶりでいいかなと思う自分がいた。だってしほりんと会うと超絶うれしい反面ドーパミンかなんかが出まくった結果緊張感と疲労感がぱないのである。毎日のように会いたいんだけど、そうなるとこっちの体が持たない。いやはや贅沢な悩みではある。それに今週末はしっほりーんのラーイブぅ!だからすぐ会える。しかも神席で! もう最高!
「みなさんーちょっといいでしょうか」
黒板の前に学級委員が立っていた。
「大丈夫と思いますが、今日の古典の授業で言われた通り、小テストの点が合格点に達していない人は今日の放課後、今から追試があります。場所は3階国語メディアスペース横の空き教室です。該当者はすぐに向かうようにお願いします。部活動よりも優先ですので注意してください。もう把握していると思いますが、一応追試対象者の名前を黒板に貼っておきますので確認お願いします」
いいんちょが教壇から去った途端またがやがや教室がうるさくなった。そして黒板には一枚の紙。
「おい、お前名前あんじゃんー」
「ホントだーどんくせーやつ!」
「おい、黙ってろよ! クラスの女子に俺の馬鹿なとこがばれちゃうだろ!」
「えー、もう〇〇君が馬鹿なのみんな知ってるよー?」
「うっそぉー!?」
ぎゃはははきゃははは陽キャ勢が黒板周りを陣取ってうきゃうきゃしていて見苦しいことこの上ない。これだから陽の者共は……なんで追試になった事実をそう簡単に笑い飛ばしてむしろネタのように扱ってなんかみんなにウケて勇者みたいになってんの? いやお前追試だからざまぁ。まじウケるんですけど。
「ほんと陽の者共はいいでござるなあ、なんか気楽で毎日楽しそうで裏山でござる」
「へっ、何言ってんだよ太洋。自分が追試だってあんな大声でのたまってて恥ずかしいったらありゃしねえぜ。真剣に今という時間に向き合わず、へらへらわらってるだけの何も考えてない人間は後で後悔するんだ。光が当たらなくても地味でも誰に応援されてなくても、今自分がやるべきことをきっちり一つ一つ成し遂げていく、それこそが成功への一歩であり、幸せな人生への道なのだよ」
「さすが師匠! 幸子(孔子)先生! お言葉の重みが違うでござりまするっ一生ついていかせていただきますですっ!」
「はっはっはーよきにはからえー」
「いよっ日本一っ!」
「はっはっは……。うん、じゃあ俺そろそろ行ってくるわ」
「へ、どこに?」
「いや、追試に」
「あ、やっぱり?w」
やっぱりってなんだよ。
追試終わり、待ってくれてた太洋と合流し商店街のほうへ歩いている。
「とりまアニ〇イト寄っとくかい?」
「うーん、この時間他校の陽キャ軍団がいることがあるから嫌なんだよなあ」
「じゃゲーセン?」
「そっちも陽キャ軍団がいるよなあ」
「とかくこの世は住みにくいでござるなあ」
「ほんとほんと」
すったもんだの挙句、無難に市内一の品揃えを誇る普通の本屋に行くことにした。
特に意味もなく参考書コーナーに行く。ここにいると無駄に頭がよくなったような気がする(気がするだけ)のだ。ここで一高の制服でいると他校の奴らから一目置かれているような優越感に浸ることができる(錯覚)
「でも太洋はなんで追試じゃなかったんだよ?」
「へ? そんなの勉強したからに決まってるからで御座候?」
「は?」
「いや、は?って言われても……普通にちょちょいとやったら追試にはならんでござる」
「喧嘩売ってんのかなぁ?」
「いやいや南方氏は成績気にしなさすぎでござろう?」
「太洋クンがいじめてくるぅ 同盟組んだ仲だってのに」
「いやいやいや。血の二次元同盟は落第同盟じゃないでごわすから!」
「はぁ。俺も勉強しようかなあ」
「お、いいでごわすね! これで南方氏も補習常連組から脱却、ようこそ賢者サイドへ!」
「なんか腹立つな。ま、でもその通りか。太洋、この土日暇か?」
「おう、勉強会でもするんでやんすか?」
「そのまさかよ。勉強会あーんど春アニメ上映会と行こうではないか?」
「げっへっへ……それはお代官様、いい話でありますねー」
「お主も悪よのう」
「あーーれーーーー(回転)」
しばらく太洋の家にも行ってなかったので丁度いい。楽しみだ。
あれ、なんか忘れてる気が……?
ビリッ答案用紙~that's falling score~♪
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