第5.5章-4 しょこらり
え、これはマジでデートなのでは……?
どうしようどうしようどうしよう……
えーっと、どこで待ち合わせして……ライブ前に軽くお茶して?一緒にペンラふりふりライブで飛び跳ねて、そのあと一緒にご飯……とか? いや、食べるの好きすぎかよ。
ただそうすると困ったことになる。もし万が一ステージのしほりんに見られちゃった場合、前の握手会の時(第4章-12話あたり参照?)みたいに機嫌悪くなっちゃう可能性大なんだよな。まあ拗ねてるしほりんも本当にかわいすぎーてしーかたないんだっ♪て感じなんだけどw まったくモテる男は困ったもんだぜ。
ま、そんな期待といらぬ心配は案の定あっさりと崩れることになった。
チケットを2枚ふりふりしてた桜玖良の手にご注目ください。ゆっくりと指が動いて……
なっ……さ、3枚……だと……?
「はぁい♡ 残念でしたねお兄さん?」
「いや、な何が?」
「私と二人っきりだと勘違いしてたでしょ? 残念~亜季乃も込みで3人で出かけませんか~ってことでーしたっ★」
「へ、へぇ、まあわかってたけど」
「いや、お兄さん目線めっちゃキョロキョロ挙動不審かよって感じでしたけど」
「いやマジで違うから」
「はいはい。そんな強がらなくていいですからw ってことで今度の日曜開けといてくださいね?」
「えーと、それなんだけド……」
俺は戸棚の引き出しから例のブツを取り出して桜玖良に見せる。
「え……?」
一瞬にして桜玖良が固まった。そしてしばらくじっとそのチケットを見つめて……
「しほちゃん……ちゃんとわかってたんだ……」
奴は小さく何か呟いて顔を上げると、自分が手にしていたチケットをしまって、そして俺が持ってたこの前送られてきたチケットを突き返してきた。
「これ、相当いい番号のチケットですから。うまくいけば最前列でしほちゃんたちの雄姿が拝める超神位置確定の神チケです。絶対に開場時間までに並んどいてくださいね! ま、亜季乃と一緒ならそんな心配はないか。とにかく、しほちゃんの好意を無駄にしないように、ぜっったいに遅れちゃダメですよ!」
「お、おお……」
急なテンションについていけない俺。
「じゃ、帰りますね」
「え、もう帰んの?」
「はい、だって用事済んだし」
「ふ、ふーん。えっと、その、そっちのチケットはどうするんだ?」
俺は単純にせっかく桜玖良が用意してくれた3枚分のチケットの行く末が気になって尋ねた。
「あ、これなら大丈夫です。関係者用のチケットだから別にお金かかってないんで。あとでマネージャーにでも返しときますから」
「そう……なんだ? で、お前はその日はどうすんだよ、ライブ?」
「ああ、適当に関係者席から見てるはずですよ」
「今回は、お前出ないの?」
「出ませんよ。ユニット単独ライブには基本他メンは出演NGですし」
「ふーん、そそうなんだ……。なんか違和感だな」
「違和感? どゆことです?」
「えーっと、なんかさ? 最初に見たしほりんユニットのライブの印象が強くてさ、お前が出てるほうがなんか普通って感じっていうか……」
「へぇ。面白いこと言ってくれますね。それ、しょこらり推しの前で言ったら殺されるかもなんで気を付けたほうがいいですよ?」
「お、おう……って、しょこら……り? って何?」
「はぁ……自分が日曜に行くライブのグループの愛称も知らないとは。マジで殺されないか心配になってきましたw」
「へ?」
「しほちゃんのいるユニットの名前は Chocolat Lips 通称しょこらり ってファンの間ではそう呼ばれてます」
「へ、へえ……」
「亜季乃から聞いたりしてません?」
「いや、わからんな……アイツ普段しほりんしほりんしか言ってない気がするし」
「たしかにw」
「で、そのチケットで、お前は関係者席から見るってこと?」
「うーん、そうですねー、たぶん」
「俺のと……交換する?」
「……? はぁ?」
「いやさ、なんかお前も最前列とかいい位置で見たいんじゃないかとか、思ってさ……」
「別に大丈夫です。いっつもリハとか最前で見てるようなものなので。お気遣いなく」
「そ、そう? いやさ、亜季乃的にもお前と二人で見たほうが楽しいんじゃないかとかさ……」
「そんなの自明の理ですけど。どしたんですかお兄さん? なんか企んでます?」
「いやべ別に」
「まあ最前は後ろからつぶされることもあるんで、ちゃんと男のほうがガードしてあげなきゃですよ? 万が一の痴漢からも亜季乃を守ってあげるのが兄貴の役割でしょうが」
「そ、そうか……? じゃ危ないんだったらそのお前が持ってきてくれたチケットで3人で関係席から見れ
「ふざけてんすか?」
桜玖良のマジトーンの低い声。
「そっちのが神席なんだからそっち使わない手なんて選択肢にすらありませんよ? まったく何考えてるんすか?」
「え、ええと……」
「お兄さん?」
「いや、せっかくチケット持ってきてくれたのに、お前だけぼっちで関係者席って、ちょっとかわいそうかなと思って……さ」
桜玖良の目が一瞬にしてまん丸に。そして大声で笑い始めた。
「ひーっひーっ、まじおもろいーっ さすが普段ボッチのお兄さんのぼっちならではの神発想ですね。賞賛に値しますーっ、ふーっ、ふひゃひゃひゃ」
「いや、笑いすぎだし」
「関係者とかほぼ全員知り合いか友達なんで……むしろお兄さんが関係者席でぼっちで浮きまくりますけど? さっすがボッチは考えることがさすが孤高のボッチ! 人の心配する前に自分の心配しろってのこのボッチ野郎ェ……」
「おい、さっきから聞いてりゃぼっちぼっちうるせえぞ!」
「お兄さん? 今回はしほちゃんのご厚意に甘えて亜季乃と一緒に最前列でライブ楽しんでくださいね? 普段ボッチのお兄さんにはなかなか味わえない貴重な体験ですよ?」
「ぐぬぬ……」
桜玖良は笑いながら、俺の肩に手を軽く乗せてぽんぽんとして、
「お兄さん、いらぬ気づかいありがとうございました」
「……(ぴきっ)」
そして桜玖良は最高の笑顔を見せた。
「今回は、ぼっちお兄さんの分までボッチを学んできますね? ぷっ」
「……この野郎ぅ」
ところどころ修正し、ついでに最初期の第1章、2章あたりの文字数をある程度同じになるように調整しました。もし変なところ等ありましたら、教えていただければ幸いです。
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