第5.5章-3 デートのお誘い
しほりんユニットライブまであと数日と迫ったある日の夕方。
ピンポーン
チャイムが鳴る。これはもしや……もしや、ではないのか!? いや、しかしまだそうと決まったわけでは……ない、落ち着け落ち着け……
俺は深呼吸して玄関のドアを開けた。
「はい、ハズれ~」
「な、なにが?」
「お久しぶりですね、お兄さん♪」
そこに立っていたのは確かにハズレの方であった。しかしその何だ……こう本人に自虐的に言われると、そうでもないぞ、お前だって十分しほりんに負けてない、その、可愛いよ……とか、ちょっと何言おうとしてんの俺!? 頭打った? 間違ってもそんな口滑らそうもんなら、キモイんですけどの罵倒と脛蹴りの嵐が待っているに決まっていた。ふぅアブナイアブナイ。
「で、何の用だよ?」
我ながら素っ気ない感じを演出できたと思う。
「はぁ、せっかく訪ねてきてくれたカワイイ女子中学生に向かって失礼な物言いですね? まあ別にいいですけど。しほちゃんじゃなかったお詫びに今日はいい話を持ってきてあげましたよ?」
「いい話?」
「そうです。きっとお兄さんが泣いて飛び跳ねて喜ぶ話です……っと私いつまでこんな玄関先で立ち話させられてるんですかね?」
「ははぁ……気が付きませんで申し訳ありません。どうぞ、お上がりください。大したおもてなしもできませんが……」
「ご苦労ご苦労。よきにはからえ~」
いつものリビングに通すと勝手知ったる我が家かよって感じでいつもの椅子に座ってくつろぎ始める桜玖良。
「今週の日曜日、どうせ暇ですよね?」
「だから決めつけんなっての。日曜はいつも太洋と遊ぶっていう大事な用があんだよ」
それに、そうだ。日曜日は確かしほりんライブの日だ。間違っても野暮用を押し付けられるわけにはいかない。
「太洋? って誰ですか? 架空のお友達?」
「ちげーよ、リア友だよ」
「ああ! 最近はやりの”レンタル友達”ってヤツか~!」
「ちげーって! なんだよそのレンタル友達ってのは!? 聞いたことねえよ!」
そこはせめてレンタル彼女だろ? 彼女、お借りするのだって正直相当情けない話なのに、友達すら借りなければ存在しないなんて寂しすぎるぞオイ。そう考えると太洋がいなければ俺は本当にボッチだった、太洋よ……本当にこの世に生まれて来てくれて……俺なんかと友達になってくれて……本当にありがとう。
「じゃ、まあその日のレンタルはキャンセルしてもらって……」
「だから違うっつーの!」
「そうなんですか~正直お兄さんに友達がいるところが全く想像できないんですけど、まあそう言うことにしといてあげますね。私心広いから! 気遣いもできるマジいい子!」
「もう反論する気も失せたわ、で? 何の用だよ 俺は心が超広いから一応聞いといてやる」
「うげ~上から発言キモ~。パワハラ発言は今じゃ捕まりますよ?」
「へいへい、で?」
「はい」
そう言って桜玖良は指の間に挟んだ何かを俺の目の前に突き付けてきた。あれ? 何かちょっと前に誰かが似たようなポーズしてた気が……デジャヴ?
そして……あれ? 桜玖良が持っているその物体にもなんか既視感が……?
「じゃじゃーん。お兄さん、これ何だと思いますぅ?」
「えーと……今度のしほりんのライブチケット……かな?」
「そうです。さっすがお兄さ……って、えぇっ、なんでそんな簡単にわかるのよっ
!」
「ふっ、これも俺のしほりんへの愛の為せる業……」
「普通にキモいんでやめてください。ちっ、どうせ亜季乃ですね? せっかく驚かせてやろうと思ったのに」
「残念だったな」
「さてお兄さん……ねえ、日曜日私と一緒に、お出かけしない?」
可愛らしい仕草で首を傾げてポーズをとる桜玖良。
「ねえ、いいでしょ……?」
きゅん♡
不覚にもドキッとする始末の俺。我ながら美少女耐性(torelance for pretty girl)なさすぎだろ。まあやむを得ないか。
そして彼女が顔の前に掲げたチケットは…………2枚。
え、マジで、マジでそうゆうこと、なん……?
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