第5.5章-2 鯖詠
「この前の小テストの結果返すぞー、安部ー」
全く……朝っぱら一限目からテンション下がるイベントだ。クラス担任の英語の授業の成績が悪いとこうも居心地が悪いもんかね。ただでさえ目つけられてるというのに。
「次、南方ー」
軽く返事をして前に取りに行く。
「前よりましだが、もうちょっと頑張れよ」
なんか俺だけ嫌味の一つがセットでついてくるんだが
「はい……」
とりあえず無難に返事して席に戻る。こっちを見てる太洋と目が合った。心なしか馬鹿にした笑いを浮かべられてる気がする。こっち見てんなよ。追い返すようなジェスチャーで手をふりふりする。その時ふとすぐ横の席の女子のテストの点が目に飛び込んできた。
ひゃくてん……だと?
こちとらその半分の遥か下というのに、なんて奴だ。正直クラスのほかのメンツに興味はこれっぽっちもないので、顔も名前も知らない奴だったのだが。黒縁メガネにお提髪、三つ編み? スタイル、The 陰キャ って感じ。俯いて自分の百点答案をじっと見つめて……ふっ、悦に浸っているのか? おっとちがうちがう。正しくは「悦に入る」だ。悦に浸るは誤用である。喜びに浸っているのか? 正しく言うとこっちだ。
まあいずれにせよ俺には関係な……なっ!
俺は衝撃の光景を前に驚愕した。
そのメガネ女子はなんとあろうことか、その答案に突然カリカリと何かを書き始めたのだ、それはよく見るとまごうことなき……英単語であった。同じ単語を何度も何度も。これはまさか、正解してる英単語を念のためさらに復習してるということなのか……? マジかよ……
するとそのメガネ女子が、机の横でじっと立ってる俺の気配に気づいたのか、こちらに振り向いた。やべっ! 俺は慌てて自分の席へと戻る。
はあやべえやべえ、それにしても、こんな真面目な奴いるんだなあ。自分の席から答案越しにお提髪女子の背中を見ながら思う。そりゃ百点だわ。俺はこの前より結構点が上がってたので自分なりに結構満足してたのに実はくっそ恥ずかしかった点数と、その赤ピンの多さに、珍しく己の不甲斐なさを感じたのであった。
俺も直すか……せめて間違えた英単語くらいは……
俺はそのメガネ三つ編みお提髪女子のおかげで、初めて小テストの単語直しというものをやったのであった。
「なあ南方氏、小テストの点はどうだったんでござるか~」
昼飯時、いつもの校舎裏。
「お前に教える義理はねえ、太洋こそどうだったんだよ? 人の点数聞く前にまず自分のを言うのが筋ってもんだろ?」
「ほほぅ、南方氏がちゃんと答えてくれるんなら言うでござるよ」
「じゃいいや。俺お前の点数全然気になんねえし」
「あーーーっ、わかったわかったでござる。おいどんの点は55点ごわすー」
「微妙にいいのが腹立つな」
「で、南方氏の点はいかに?」
「おれ別に言うって約束してないんだが……」
「はぁ? それは話が違うでごわあすー! 日ソ不可侵条約破棄して攻め込んできた旧ソ連位の汚い所業でごわすう」
「まったく大袈裟な奴だ。百点だよ百点」
「は?」
「だから百点だって」
「寝言は寝て言えでござる」
「うーん、ばれるか」
「そりゃそうでござる」
「そうだなあ……敢えて言うなら球〇の詠深ちゃんと珠姫ちゃんと伊吹ちゃんと白菊ちゃんと芳乃ちゃんと大野さんの背番号全部足した点って感じかな?」
「ほぇえっ、せこいでごわす、そんなのわかるわけないでごわ……ん? いや、1+2+7+9+……」
「おい太洋なんでわかんねん!???」
「よしのはマネージャーで背番号ないのではござらんか?」
「そこまで把握してるとか普通にキモイなwww……だが残念だったな太洋! お前は大きな見落としをしている。芳乃は確かにマネージャー扱いだが背番号10でベンチ入りしているのだよ! はっはっは……」
「なn…だと? そうだOPで10番のユニでスコアつけてたでござるぅ! これは一生の不覚……となると、そこに10を足して……あれ? 大野さんって敵チームでござ候? ありなんか?」
「ええやろ、だって大野さん好きなんやもん」
左のサイドスロー好きなんよな個人的に。(具体的には元広島〇ープの清川とか2007年に全国制覇した佐〇北の背番号10馬場とか)あと、あの姉御肌的な性格とか包容力ありそうなとことか。あゆみさんに甘やかされたい……
あと実はモデルが中日ドラ〇ンズの大野〇大投手とかいう説もあるけど、中日大野はスリークオーターだから、どっちか言うと投げ方のモデルは完全に清川とか永射なんだよなあw
「ふむむ……ってことはさっきの点にさらに1を足して……あれ?合計点……」
「みなまで言うなよ、太洋……」
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