第5章-15 さくら様は(ユキちゃん)と呼ばせたい
俺たち3人は、たった今明かりが消えたばかりの図書館を出る。しほりんは徒歩だが、俺と桜玖良は自転車なので、駐輪場まで並んで歩く。
「なんか……長い一日だったな」
「ほんとそれ」
「ふふっ、楽しかったですね」
「たのし……かったか?」
「しほちゃん、それはないっしょ。わだじはもうぢかれだ~~」
「さくらちゃんは大活躍だったね」
「そうそう、まさかお前があんなに子供の扱い上手いとは思わんかったぞ」
「いや、うまいってほどじゃ……」
「ううん、すごかった。あっという間に仲良くなってて、本当にびっくりしたもん」
「いつもつんつんしてるけど、子供にはいいお姉さんって感じなんだな……痛っ」
「余計なこと言うなし」
「さくらちゃんがつんつんしてるのはお兄様といる時だけですよ? 普段はとっても優しくて可愛くておしとやかな女の子なんですから~」
「いや、お淑やかは嘘だろ……痛ぇっ」
「もうお兄さんは黙っててください!」
自転車を回収して駐車場の方へ歩くと、もうしほりんの迎えの車が来ていた。
「お兄様、今日は、いえ、今日までずっとありがとうございました」
そう言って深く頭を下げてくるしほりん。
「い、いいって、そこまでしなくても」
「いえ、今回のテストは、本当に大事なテストだったので……お兄様につきっきりで丁寧に教えてもらうことができて本当に助かったんです。今日までのテストの出来だって、今までで一番手ごたえがあるんですから。だから、本当にお兄様のおかげなんです、本当にありがとうございました」
「そ、そう言ってもらえて、う嬉しいけど……でも、しほりんが頑張ってたから、だよ、きっと。本当よく頑張ってたと思う」
「お兄様……」
「ちょっとしほちゃん、この格好の時はお兄様じゃないでしょ?」
「いえ、最後くらいはしっかりお礼を……あれ? もしかして、ユキちゃん呼びできるのも今日で最後なんでしょうか???」
「そ、そうみたいだね」
そう、俺はようやっと、この忌々しい女装から解放される瞬間を今まさに迎えようとしているのであった。
「それは少し……寂しいですね」
いやいやいやいや、全然寂しくないって! 俺としてはやっとユキちゃん呼びアーンド女装から解放されて、もうウッキウキはっぴはっぴはっぴーーーって感じなんだから。(ま〇んちゃん大きくなって美人になったよなー か〇や様2期EDが個人的にめっちゃ好き ただ1期のEDもめっちゃ好き もっと言えばOPはもっと好き てかあれ反則でしょ、なにあのアニソン界の大型新人ってwww夢でもし~会えたら~の鈴木〇之やん! あと会長たちが思わぬ進展を見せてびっくりしたのと、石上はよ報われてほしいってのと、ミコちゃんもお願いだから報われてほしいってのと、連載がしばらく休載なのがショックなのに最新話の引きが不穏なのと、単行本最新刊のカバー裏がなんか真面目過ぎてビビったってのと)
「ですって、お兄さん? しばらくユキちゃん継続したらどうです???」
「は? そんなの嫌に決まってるだろ!?」
「え、お嫌なのですか?」(うるうる)
し、しまった! しほりんを泣かせるような真似を!(いや、泣いてはない)
「え、ええと、そそこまで嫌なわけではないんだけど。そ、そのお、そ、そう! だって恥ずかしいんだよ、やっぱり!」
「そうでしたか、それなのに無理してユキちゃん呼びに耐えてくださっていたなんて、やっぱり優しいんですねお兄様?」
「い、いえ、そこまで嫌なわけではなくて……」
「嫌じゃないんだったらいいじゃんねー、ユ・キ・ちゃん?」
「ぐぬぬぬぬ……」
「とにかくお兄様、ありがとうございました。さくらちゃんもありがとね」
「ううん全然。明日のテストも頑張ってね」
「うん! それじゃあまたね。お兄様も失礼します」
そう言うとしほりんは車の方に走っていく。
「バイバイ」
「テスト頑張ってね!」
すると一瞬しほりんが立ち止まって振り向いて、
「私、がんばりますからっ!」
そして強く握った拳を開いて、小さく手を振ってくる。
「また勉強みてくださいね! ユキちゃんセーンセ?」
その破壊力MAXの笑顔に俺は心の中で鼻血を流したのだった。
本日の勝敗 しほりんの勝利
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