期間限定公開 最後の花見がさらたんの場合(推しとお花見 後編)
気づけば柔らかい光の中にいた。上から白い花びらがひらひらと舞い落ちてくる。ここは、駅? 駅のホームに俺は立っていたのだった。古びた小さな駅舎の奥に桜の木々が並んでいるのが見える。
桜の駅と言えば……花咲くい〇はの湯乃〇駅(正確にはのと鉄道の西岸駅 一度行ってみたい。ていうか花咲く〇ろは面白いんだけど。もっとリアルタイムではまってたら聖地巡礼とかラッピングアナウンス電車乗ったりとか楽しかっただろうなあ。もっと言うと本当は2005年に廃線になってしまった「のと鉄道」能登線に乗って能登半島を旅したかった……恋路号とか乗りたかった。ちなみに終点の蛸島駅も桜がきれいな駅だったようだ。ちなみにのと鉄道の七尾線は穴水までは存続している。穴水から先は廃止、穴水から輪島に延びる路線も2001年に廃止。輪島と言えばもちろん輪島塗が有名。石川県の伝統工芸品は加賀友禅と輪島塗くらい覚えておけばいいかな)とかを思い浮かべるが、それよりはもっと小ぢんまりとした感じ。薄暗い山あいの小さな駅であった。
薄っすらと霞む朝靄の中をやわらかい陽の光が木々の間から降り注ぎ、その光の中を桜の花びらがはらり、はらりと舞い落ちていく。そしてその花びら越しに立っている、短いホームの端でたたずむ制服姿の女の子。桜の香りをかぐかのように少しだけ顔を上げ、そっと目を閉じるその横顔。その横顔に思わずじっと見入ってしまう。どれだけそうしていたのかわからない。ふと彼女がこっちに気づいて振り返った。やべ、見てたのがばれた……?
「ねえ、何か言ってよ……」
そう言ってちょっと恥ずかしそうに目を伏せた桜玖良。おいおい、なにその美少女ムーヴ。普段とギャップありすぎやろ。
「ねえ、もう電車来ちゃうのに……」
え? そういう設定? いや、どういう設定? 遠くから汽笛のような音が響く。
「最後まで、私たち……こんなだったね」
「え」
どういうことだ、今どういう設定でどういう会話が進行しているのだ?
「だって私可愛くないし、いつもアンタに文句ばっかで……どうせ私のことも嫌いだよね」
いや、別にそこまではそう思ってないけど……
「でも、本当は、もっと仲良くしたかった、もっと素直になりたかったもっと……」
その時、音がして桜の向こうから電車がやってくるのが見えた。
「一緒にいたかった……」
そう言って小さく笑った。俺の胸の奥からずんと音がした。
「ごめんね、今までずっと……」
奴の顔がちょっとだけ歪んで
「本当はっ、ずっと言いたかったんだ……っ、あ、」
桜玖良の目から光るものが一筋流れ落ちた。
「ありがとう……って」
短いホームに電車が滑り込んできた。ぷしゅーっと音がして扉が開く。
「じゃあ、ねっ、バイバイ……」
電車に乗りこもうとする桜玖良。
「桜玖良っ!」
俺は思わず駆けだしていた。扉を挟んで彼女と向かい合う。
「本当はね、ずっと……」
涙声の桜玖良。そうだ、この手を掴んで引っ張ってしまえば、彼女が遠くに行ってしまうのをやめさせられる。俺は彼女に手を伸ばす。桜玖良が目を丸くしてこっちを見る。
「あ……」
彼女が一歩こっちに近寄ってそして彼女も俺の方に手を伸ばして……俺はそのまま彼女を抱きしめようと……
「やっぱ無理ぃ……」
手を引っ込めた彼女。そのままぷしゅーっと音がしてドアが閉まった。そしてそのまま電車は走り出して行ってしまった。
「よほど俺のことが嫌いなようだな……」
「はぁい、さくらちゃん失格ーー」
「ちょっと、なんでそうなんのよ! ほとんど最後まで恥を忍んで完璧に頑張ってたじゃない!」
「でも、最後がっねー、ま。おこちゃまにはこんなもんでしょぉ? ぉっほっほぉ」
「ミキ先輩は黙っててくださいっ!」
「で、お兄様? 結局誰が優勝なんです?」
「来年に持ち越しで……」
お花見SS ~完~
もう桜散ってんじゃんというツッコミはナシでお願いしますーw きっと今頃北海道の北の方はちょうど満開……
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