第4章-8 2ndLive 奏でる森のシンデレラ(前半

 突然歌が始まった。(イントロなし)真っ暗だったステージに一筋のスポットライトがあたり、その光が左右へと広がっていく。それに合わせて一人また一人と女の子たちが姿を現し、歓声が沸き起こる。彼女達が天に向かって腕を伸ばすと、一気にステージが明るくなって曲が一気に盛り上がる。


「みんなー今日は来てくれてありがとー」


 わあああああああああああああっ


「最後まで楽しんでいってねー!」


 きゃああああああああああああっ


 曲の冒頭すぐ後の部分でメンバーが叫び、同時に会場のボルテージは一気に急上昇。真ん中の子が一人でAメロを歌いながらそしてポーズを決め(歓声)それに合わせてみんなが合間にコールを入れる。そうだ! コールに集中せねば! この日のためにちゃんと予習してきたのだ。その成果を見せるときがきた!


 お~~~っはいっ お~~~っはいっ……おいっ、おいっ、おいっ、おいっ……


 fufufu~!(決まったッ!)


 サビはみんなの動きに合わせて光る棒を左右に振り振り……そして最後に棒を真上に突き上げて! いぇい! さっすがやればできる子ちゃん! ライブたっのし~~~そうじゃない! 今日の俺の目的はしほりんだろっ! しほりんはいずこ……? 頑張って目を凝らして探す。前よりステージと距離があってちょっとわかりにくい。だってみんなおんなじ格好でおんなじくらい可愛いんだもん……あっ、いたっしほりん! やっべ超きゃわわだわ。すると、まるでそれに合わせたかのようにしほりんが歌いだした。しほりんのソロパート。横の亜希乃がわーきゃー叫ぶ。うん。たしかにしほりんは今日も超絶可愛い。そのあとは頑張ってずっとしほりんを目で追い続けたのだった。


 1曲目が終わると自己紹介コーナー。その2人目にして俺は固まることとなった。


「みんなぁ~こんにチワワ~、みんなのアイドルぅ~ミ・キ・ティ先輩だぞっ♡」


 きゃああああああああああああああああああああああああああ

 あれは……確か亜希乃に悪ガラミしてた、あのなんちゃら先輩だ! やべえ全然さっきの印象と違って普通に可愛い感じだ。女子怖ぇよ……。


「はぁ~~い。花の一期生チーム副キャプテンのmikiでぇ~~っす! 今日もよろしくねぇ~~っ! ちょっとでもよそ見しちゃ、ダ・メ・だぞっ?」


 ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ

 なんか人気がやばいんだけど……

 まあでも、mikiちゃんね? はい、覚えましたよ、はい。(yべえウインクかわええ)最近流行りのあざとカワイイ系ですね。わかりましたよ。ちょっとおからかいがお上手な高〇さんとか、あだ名が某ミネラルウォーター飲料の小悪魔系後輩を橋本〇奈的な感じにしました的な感じね。マジ っべ。ってか戸部るわー。


 そして、くるよくるよ……


「……りんりん、しほりん、しほりんりんっ♪ 3年生チームキャプテンのshihoですっ! 今日はっ、みんなに会えてとってもうれしいです。どうか最後まで楽しんでいってくださいっ」

 きたあああああああああああああああああああああああああああああっ

 妹につられる形で柄にもなく大声を出してしまった。それ位しほりん可愛いんだもん。


 そのあとまたいくつかユニットが出てきては引っ込んで、しほりん達の番が来た。


「兄貴、用意はいい?」


「ばっちりだぜ!」

 俺は例のブツをポケットから取り出す。そしてあるモノをつまんで一気に抜き取った。すると……


 ぺかーっ


先程購入したばかりのしほりん専用ペンライト、だ! (ちなみに一度、点灯するかどうかは購入時に既に確認済みである。その上で再び、電池が入らないように遮断しているあの小さなプラスチック片? みたいなものを差し込んでいたのだ。そして俺は思う。これ引っこ抜く時の感覚マジ快感たまんねぇ~癖になりそうww)そして胸の前で交差してみせる(俗にいう〇ポーズ)亜希乃もそれに応えるようにX! (ちなみに一本は保存用らのためロッカー待機である。だからさっきまで使ってた俺のもう1本は亜希乃のお下がりである)


 可愛いメロディに手拍子が起こる。大丈夫だ。しほりんユニットの曲は予習済みである。(I've already finished my homework!) 前回は亜希乃の見様見真似で頑張っていたジャンプも完璧である。周囲と一寸のラグもなく飛び上がる。ふんっ本気を出せばこんなもんだ。


「兄貴、すうぃきゃんのコール完璧じゃん!」(ちなみにしほりんのユニットChocolat lipsのデビュー曲"sweet candy holiday”の略であるらしい)

「ふっ、まあな」


 褒められて悪い気はしない。だが欲を言うなら直接しほりんに褒めてほしいのだが。まあそれは贅沢ってもんだ。次の家庭教師のときにアピールしてほめてもらうとしよう。きっと「お兄様、すごいですっ」とか「さすが頭がいいお兄様はコールを覚えられるのも早くて完璧なのですね、尊敬し直しますっ!」ってな感じでめっちゃおだててくれそうw しほりんを見る。ステージから結構遠いから、多分こっちを見つけるのは無理だろう、こっちからはスポットライトの下でバッチリ見えているのに。なんか急にしほりんが遠くに行ってしまったみたいな寂しい感じがした。いやもともと遠い存在なのだけど。むしろあの娘の家庭教師をしてるという俺ってマジどうした? 大丈夫? これ夢だったりしない? 急に不安になってきたわw



 あれ? 唐突に違和感があった。


 

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