第4章-2 しほりんの個別ペンラは□□□色
「兄貴、物販があったわ。出るよ?」
そんな鶴の一声?でせっかくの休日だというのに定時に起こされてしまった俺、慌てて朝食をかきこまされ身支度もほどほどにひっぱられて家を出る羽目になってしまった。
「なあ、その ぶっぱん ってのは何とかならんかったんか?」
「うん」
いや、そんな一言で返されても……
「今日は特別。今回から発売される個別ペンラをどうしても買わないといけないの」
「何? ぺんら……?」
「ペンライト。サイリウムのことね」
「いや、略さず言われてもよくわからん……」
「簡単に言うと、光る棒ね」
「それどうすんのよ?」
「この前もみんな曲に合わせて振ってたじゃん? ライブの必須アイテムってところかしら」
言いながら亜希乃はカバンからそれを取り出した。うん、確かに棒である。と思いきや、スイッチを入れると赤や黄色に光りだした。なんじゃこら? ってか電車の中だよ亜希乃さん。
「ってかもう持ってんじゃん? なんで新しく買うの? 必要なくね?」
「はぁ~、馬鹿なの兄貴?」
いや、少なくとも(at least)お前よりは賢いけど。まあ”無駄遣い上手の亜希乃さん”には、言・わ・な・い・けどね~♪
「これまでも発売が熱望されていた個別ペンラがやっと出たのよ! 買う一択でしょ! これでいつも推しの色を振り回せるの! 最高~!」
「おい亜希乃、電車の中なんだからさすがに自重してくれ」
手に持った光る棒を振り回そうとする始末。妹のテンションがTAKAMARI☆CLIMAXXX!!!!!である。(悲報 ちなみにまだライブ開始の8時間は前である)
「兄貴にも並んでもらうから計4本は買えるわね~」
「おおい、そんなに買う必要あるん?」
「まずしほりん仕様の□□□色(※ □内に読者様のお好きな色名をお入れください)は外せないでしょ~? これは兄貴用と保存用も入れて3本買って~あとはそうだなあ……hiroかmikiのも欲しいなあ。絶対即完売だろうし~でもlunaちゃんのシルバーホワイトも捨てがたい……ぅ~~~」
「はぁあああ、もう全部買えよ」
「だめよ!一本3000円はする貴重品なのに」
「そんな高いの?」
てっきり500円くらいかと思ってたわ。
「それにお一人様につき2本までっていう購入制限かかってるし」
それを聞いてほっとした。でないとコイツお年玉前借りしてでも全部買い揃えようとするぞ。運営グッジョブ(good job!)
駅から会場まではそんなに歩かなかったが、この季節にしては今日は日差しも強く暑い……すでにお疲れ気味の俺。そして物販開始は数時間後だというのに、もう既にすごい列。
「これ全部ペンラ?狙いのやつらなのか?」
「多分そう。いつもよりはちょっと多いし」
え、これでもちょっと多いだけなん? というかこれにまじって永遠待つのかよ……
「はい兄貴」
そう言って亜希乃がイヤホンの片方を手渡してくる。何の気なしに耳に入れながら思ったのが、これでもう片方の相手がしほりんとかだったらなあ……。と、流れてきたのは、お? これこの前の曲じゃね?キャンディーキャンディーなんたら? とか言う曲だったはず(うろ覚え)
「兄貴はちゃんと予習しといてね。これライブ音源CDだからコールも入ってるし、何回も聞いて体に覚えこませて」
「コールって何?」
「みんな叫んでるでしょ、あれよ。掛け声っていうの?」
「あああれか……はーいはーいはいはいはいはいっ とか お~~~~っはいっ お~~~~っはいっ とか ふっふっふー とか言ってるキモイやつか」
「きもい言うなし」
「ふぅ、大漁大漁」
ほくほく顔の亜希乃。それもそのはず。俺たちがお目当てのペンラを買って間もなく、そのセンターの子のペンラが売り切れ、そしてその次になんとしほりんのも売り切れてしまったのだ。しほりん人気やべえな。いや、俺たちが計3本も購入してしまったからか……?
「ほんとラッキーだったね。今日はツイてるわ♪」
「おーーーよかったなーーーー」
おそらく妹とは対照的な顔をしているだろう俺。列で待ってる間、日陰なときもあったからましだが、座れないのは正直しんどい。簡易椅子みたいなのに座ってる人を見ると余計にしんどくなった。
「もう帰る……」
「ちょっと兄貴! まだライブ前なのに何ふざけたこと言ってんの?」
「いや、そのライブ前に体力使い果たしてしまったんだけど……」
「軟弱だなあ。兄貴もなんか部活すればいいのに。体力つけなよ」
「くっ、お前、俺が運動神経ゼロなの知ってるだろ?」
「別に上手くないとしちゃいけないわけじゃないじゃん? 上手いとか下手とか関係なく一生懸命頑張ってる人ってカッコよくない?」
「あ、亜希乃まさかお前、そんな格好いいと思う相手が……いるのか……?」
「はいはい兄貴乙。一般論です」
「そ、そうなのか……」
「はぁ、早く2次オタもシスコンも卒業しなよ~?www」
お前こそドルオタもブラコンも卒業しろと言いたかったが、むしろもっとブラザーを尊敬して優しくしてほしいと思ったので、ぐっとこらえた。
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