予告編 新章開幕!? 甲〇園でのキャットファイト

 俺は最上段の部屋に一人座って窓の下を見下ろしていた。一度は入ってみたかった球場のVIP観客席に、まさかこんな形で入ることになるとは思わなかった。ガラス越しに見えるのはセンター方向にあるバックスクリーン、大画面にここまで発表されたメンバーのランキングが並んでいる。さっき3位のメンバーが発表されステージ上で感動のスピーチが行われた。後残るは2位と1位の発表。2位のメンバーの名前が呼ばれた瞬間、総選挙1位のメンバーが決定するのだ。先に名前が呼ばれないことを祈るファンたちの熱狂がやばいくらいに怒号となって球場全体にあふれている。


「それでは、2位の 発 表 です!」


 ちょっと小太りの司会役有名芸能人がマイク越しに大声を張り上げ、会場全体が一瞬の静寂にみまわれる。ドラムロールの音が会場中に響き渡り、止まる。そしてステージ上の一点に光が当たる。


「得票数200140票 総選挙2位は……  S a r a !」


 わおーっという地鳴りとともに後ろのドアがものすごい音を立てる。振り向くと


「お兄様っ 私、わたしっ、やりましたっ! 1位ですっ、1位ですよっ!」


 しほりんが……飛びついてきた。思わず受け止めると、そのまま抱きしめる格好となってしまった。え、いいの? まずくね、これ大丈夫、スキャンダルとかさ……


「これでっ、お兄様のカ、彼女ですよねっ!」


「え……まじっ、いいの……?」


「はいっ、だって私そのために頑張ったんですからっ!」


「そ、そりゃあしほりんが彼女なんて願ったり叶ったりだけど……いいの?」

 

 レンタルじゃないよね? 決して親の金で彼女、お借りしたくはないのだが。


「いいに決まってるじゃないですかっ、だって私わたしずっと……お兄様のこと大好きだったんですから……」


「しほりん……」


「お兄様……ご褒美くださいっ……」


「ごごほうび? ってなにを……ってしほりん? ちょっちょっと……」


 しほりんはさらに体を寄せてきて、そして、えっ……、背伸びして目を閉じて、これは俗にいう、(渾身の)キス待ち顔……というやつでは? これは王子様としては世界滅亡の前にキスする一択しかないっ!(ちなみに今日はフラゲ日) いいよね? いいよね? 俺は意を決してしほりんの肩に手をやって、ゆっくりと彼女の唇に向かって……


「ああーっ! しほちゃんっ! なにやってんのよぉっ!」


「ちっ 邪魔が入ったわね」


 あれ、しほりんそんなキャラだったっけ?


「ちょっと! 総選挙1位がステージから抜け出して何してんのよ! みんな探し回って大パニックよっ」


「あら、総選挙2位のさくらちゃんじゃない? どうしたの? あなたこそステージで感動のスピーチしてなきゃいけない頃だと思うのだけど」


「しほちゃんがいないから慌てて飛んできたのよっ!」


「あらそう、私には総選挙1位よりも、お兄様の彼女の地位の方が欲しかったの。もうこんな茶番に用はないわ。これでさくらちゃんも認めるわよね、私がお兄様の彼女だって」


「くっ……」


「え、どういうこと?」


「今回の総選挙結果で私たちは賭けをしてたんです。勝った方がお兄様の彼女にしてもらうって」


「ま、マジかよ……」


「何よこのメス猫! あとからしゃしゃり出てきたくせに、私の方が先にお兄さんのこと好きになったんだからっ!」


 ていうか、えっ コイツ俺のこと好きだったの? いやないでしょ普通に。しほりんならともかくこっちはないでしょ普通に。そんな描写あったか?


「先になんて関係ない、お兄様は私の……運命のヒト、なの。総選挙 2 位 の さくらちゃんは黙ってて?」


 ぴきっ さくらたんのこめかみに青筋が浮かぶ音がする。


「無効よっ、こんな選挙結果は無効よっ 絶対に郵便投票なんて認めないわっ!」


 え、ユウビントウヒョウ?


「さくらちゃんこそ前の選挙でロシア政府に依頼して不正に票を操作してたじゃないっ? 私覚えてるんだからッ」


「あら何も証拠は見つからなかったはずだけど……」


 え、何言ってんのこの二人?


「というわけでお兄さんは私がもらうからっ!」


 そう言って腕に抱きついてくる……コイツ、えっ、まじ?


「させないっ!」


 しほりんが反対側の腕に……いやちょっと待って! どこがとは言わないけど当たってる! 逆側よりボリュームがあって……いや言ったら逆側に殺されそうw


「お兄様は私のっ!」


「わたしのよぉっ!」


 両側から引っ張られる、うん痛い。なんか嬉しいのは最初だけだったわ。お奉行様早く判決を、先に放した方が本当のお母さんなんだから、早く離してお願いだからぁああああっ!

 

 恋する二人のJCアイドルの戦いの火蓋はここに切って下ろされた! 果たしてトラ〇プは郵便投票に難癖付けずにあっさり辞任するのか? 新章 アイドル千石……ゴホン。新章 「アイドル戦国総選挙編」 こ こ に 開幕ッ!!!(バックにはちょっと不穏な感じに壮大なBGM(半沢〇樹など適)などをおかけください)

















「・・・という夢を見たんだ」


「うん兄貴、一回死んどく?」












※ この予告はフィクションです。実際の登場人物、展開には一切関係がありません

ちなみに「千石」は先に変換で出てきてしまったため採用 業が深いデス?

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