第6章-10 連行2

 いやないやないないないないないないない。脳内では〇会のCMのメガネ野郎がすごいスピードで手を横に振っている。

 だって……ありえない、だろ?


「ホント俺何言っちゃったんだろ……」


「はい。そこ、いつまでもうじうじしない。そういうところが女々しいんですよね、お兄さんは」

「だってさあ、後から落ち着いて考えたら普通にちょっと失礼というかやりすぎかなあというか」

「あの時社長に向かってビシッと言ってたときの姿とはまるで別人ですよね……ああ、あの時は嘘みたいに男らしくて格好良かったのになあ……「お父さんをぉ説得しまあうすぅっっ!!」ってキャーって感じww」

「俺そんな変な口調じゃねえよ!」

「もうそのまま「しほりさんを嫁に下さい!」って言って一発殴られて来ればいいんじゃないですか? お兄さん」

「なんでそうなるんだよ?」

 そりゃ殴られるわ。いや、実際この件だって殴られる恐れが十分あると思うよ? だってさあ、家行くじゃん? 会うじゃん? まずお前誰?ってことになんじゃん?……するとさ、家庭教師がいるにも関わらずこっそり勉強見てあげてたのがばれるじゃん?……そしたらさあ、うちの可愛い娘に何してくれちゃってやがんだ的な感じで怒られそうじゃん?……そこできっとしほりんが「先生は何も悪くないのっ♪」的な感じで庇ってくれそうじゃん?……でもそれが逆に父親の怒りの炎に油を注ぎまくっちゃいそうな結果になるじゃん?……でもそんなしほりんのこと嫌いになんかなれないじゃん? ずるじゃん……(曲終わりの最後のセリフ風に)


「何を一人でぶつぶつ言ってるんですか?」


「あ、声出ちゃってた?」

「いつも漏れてますよ普通に」


 嘘ぉっ!?


「そんなことはいいので、しゃきっとしてください」

「いや、どっちかと言えばそんなことより、俺の今の状況について説明してほしいのだが……」

「?」

「いや首だけ傾けても何の解決にもなってねえから」

「あれ、可愛くないですか?」

「いや全然可愛くねえから。自意識過剰かよ」

「あれ、おっかしいなぁー」

 なんかテンションがミキしゃまみたいになってねえか? あと実際普通に可愛かったのは内緒である。


「でも作戦会議は大事ですよ。勢いだけでしほちゃんのお父さんとこ行ったって失敗する未来が目に見えてますから」

「そりゃその通りだと思うけどさ……」

「?」

「だからその首傾げポーズやめんか」

「しっかり準備しとかなきゃいけないでしょ、普通に」

「だからってなんでこんな……」


「あれ、ここじゃ物足りなかった?」


 女社長が部屋に入ってきた。さっきの話を聞かれてたぽい感じである。きまずいw


「もっと高い店もあったんだけど、高校生にはちょっと早いかな?って思ってね」

「いや、十分すぎますって! そうじゃないです! なんでこんな……」

 今、俺の目の前には豪勢な器に高級そうな料理が並んでいた……そう、俺たちはなぜかとある高級そうな料亭? に連れてこられたのであった。

「だって南方君が言ったんじゃない。早く事務所から出たい的なことを」

「そういう意味じゃないです! まさかこんな高級そうな店に連れてこられるなら事務所でよかったですって!」

「まあ事務所にいたらいたで、回らないお寿司が出前されてきただけだったかしら」

 ひいいいいいいぃ!

「ふふっ、ホントおもしろいのね南方君。ねえ、将来うちの事務所で働かない?これ、弾むわよ? いやこの際バイトで採用しようかしら」

「もうからかわないでください!」

 だめだ。女子に対する免疫がないのに、その上年上属性まで発揮されたら俺はもうなすすべがない。まさにまな板の上の(交流戦の)鯉状態であった。


「小島さん、なんでそんなに楽しそうなんですか?」

「だって面白いじゃないこの子、女の子だったらスカウトしたのになー。あ、そうだ! うちも男性アイドルグループに手を出してみようかしら? ねえねえ桜玖良どう思う?」

「やめましょう、倒産しますよw もっとイケメン集めてください」

「えーそうかなー、この子結構元の素材はよさそうなのに、野暮ったい格好と雰囲気を一新したらきっと売れるわよ! いじられ愛されキャラポジション安泰ね!」


 あれ? そんな俺野暮ったいの? めっちゃディスられてない? そして一新した上でいじられんのかよ? そんなん目も当てられんわ。


「社長、ちゃんと目を開けてください」

「もう~桜玖良は南方君のことになると手厳しいわね」

「いや、別に……」

「あ、そっか! 本当は二人でランチだったはずなのに私がお邪魔虫やっちゃってるからご機嫌斜めなのかしら?」

「は、はぁ!?」

「あら、図星?」

「違います。冗談はほどほどにして本題に」

「南方君もごめんなさいねぇ~、せっかくのお美少女とのおデートのおランチのお邪魔しちゃってぇ~~~」

「小島さん!」

「ぁっははは……」


うん、なんか、もう、うん、はい。


「で、真面目な話に戻すけど……」


 そばをずるずる言わせながら正面に座る女社長に切り出される。いや、散々脱線させてきたのあなたですけどね……言わないし、まずこの御馳走の前では言えるはずもないけどね。


「まず、あのお父さんだけど……あ、この天ぷらおいしい!」

「小島さん!」












 色々ありましてしばらくあいてしまい誠に申し訳ございませんでした。今後はこのようなことのなきよう深く反省し毎週更新に邁進していく所存にございます。今後ともこれまで同様のご愛顧いただけましたら幸いにて御座います。





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