第5章-2 粟島ペダル


 チャイムが鳴った。


 教室の掃除当番もそこそこに俺は脱兎のごとく駆けだす。自転車置き場には俺の愛車のpinarell〇(嘘 Bridgest〇ne)が待っていた。勢いよくまたがった俺。さあレースの始まりだ。行くぜ相棒! ペダルを思いっ切り踏み込んだ。


 俺史上最速の速さで校門を通過、裏門坂を一気に駆け下りる。これがかの有名なハイケイデンス逆クライムだ! 正面からぶつかってくる風が顔に当たって心地よい。制服の袖がばたばたと音を立てる。自転車ってこんなに気持ちいいものだったっけ? 自転車万歳風バンザイ! 坂が終わって栗島のほうに向かう県道に入ってもすいすい進む。まさに追い風が俺の放課後リア充デビューを後押ししてくれるかのようだ。初めて通る道ではあるが俺はこの道を知っている! 昨日のシミュレーション通りだ。 Go○gle万歳スト〇ートビュー万歳! そしてなんとここまで信号にも一度もひっかかっていない。国土交通省万歳リア充バンザイ!


 ここまで寸分のロスもない。アン〇ィ、フ〇ンク! お前たちの仕事は完璧だ! 一気にペダルを踏みこむ。アブアブアブぅ! 

 途中で足が重くなる。さすがに普段運動してないとこうなるのもやむを得ないか……ちょっと情けないんじゃナァイッ? だが俺は、諦めない男だ! 辛いか? ケイデンスをあと30あげろっ! 俺は強いッ! がまんやがまんや南方〇太郎! ヒーメヒメ(ヒメ!☆)ヒメ(ヒメ☆)!!!

 最後の図書館裏の角を曲がって最後の全力スプリント。直線鬼って知ってるかぁい? 南方音速肉弾道ぅ! 飛べ! 飛べ! 飛べライド! 俺は急ブレーキとともに図書館前にスリップ到着着地成功! を見事決めた。

 はあっ、はあっ。息が上がっている。久しぶりにいい運動をした気がする。なるほどリア充になると健康にもいいんだな。さぁて……ティータイムだ!


「早かったですね」


 桜ちゅわぁああん! 先に来てたのか、どこからか桜玖良が出てきた。そういや今日はコイツがいるんだったか、まあ明日からはいないみたいだし、今日のところは我慢してやろう。リア充になると他者を許せるようになるのか、精神にもよさそうだ。

「ぞ、ぞうかな。まあごんなもんだろお……」

「ぜーぜー肩で息してますけど大丈夫です?」

「うげっ」

「遠足前の小学生じゃないんですから、もうちょっと大人になってくださいお兄さん。でないとしほちゃんも亜季乃もそして私も恥ずかしくて恥ずかしくてたまりませんので」

「は、ははは……」

 まあ今俺は気分がいいから、何も反論はしないでやっておこう。なんせ僕は……経験者だからね!


「で?」


「どうしたんです?」

「いや~し、しほりんは?」


「ああ、しほちゃんならまだですよ。学校終わるのまだだし、多分今日は委員会があるから遅くなるって言ってましたし」


「ほへぇっ?」

「もうっ、いい加減に変な声出すのやめてくれない? 恥ずかしいんだから、しかも公共の場所で誰に聞かれるかわからないんですからっ。」 

「えーと、それじゃあしほりんはいつ来るの?」

「多分五時位じゃないですかね?」


「じゃあなんで四時に俺呼んだの!???」


 何その空白の一時間!? デーハードヤドヤロケットスプリントしてくる必要まったくなかったっショオッ?


「さ、お兄さん行きますよ」


「え? なんでそっち行くっショォ?」


 図書館の入口にいるのにそこから逆に歩き出す桜玖良。


「私の家に招待してあげます」


「ショオッ??」









 捕捉 個人的には〇島さんが好きです

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