竜堂一華の大学入学(6)
「〜♪」
「……ご機嫌だな、一華」
「はいっ♪だって家に帰ったら……にへへ〜♡」
学校からの帰り道、お兄様は少し引きつった顔で、そして私は満面の笑みで会話を楽しみます。
あぁ!なんて良い気分なんでしょう!まさかお兄様を好きにできる日がくるなんて…!少し前までの嫌な気分がすっかりどこかへ行ってしまいました。
さすがはお兄様です。一華が喜ぶ事なんてなんでも知っているんですね!
あとは今夜にも一華が
……いえ、ちょっと待ってください。たしか今日は安全日……世間一般では危険日と言うんでしたっけ?とにかくその
………いえいえ、私は何も今すぐ子どもが欲しいというわけではないですし、今は濃密に愛し合うだけにしときましょう。
その結果子どもができたらそれはそれでOKですね。
子どもは愛の結晶ですし、無理に日にちを調整してまで子作りする必要はないですね。
それに毎日何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も愛し合っていれば自然にできるでしょうし。
「……一華、顔がこれ以上ないほどニヤけてるぞ」
「子どもは何人欲しいですか?あなた♡」
「気が早い!」
「今夜です!」
「今夜ァ!?おじさんに殺されるわ!」
「その時は一華がお父さんを殺します」
「迷いなく言いやがった…」
まったく、お兄様も素直になればいいのに。
それに『気が早い』ってことはお兄様も心の中ではそれに賛同してるってことじゃないですか。
まぁ許嫁ですし当然といえば当然なのですけど。
それにしても……どうしてお兄様は急にあんなことを言い出したのでしょうか…?
いえ、理由はわかっているのですが、それでも急すぎました。
そのせいで私も心構えが出来ずに少し感情的になってしまいましたし……。
まぁその結果で先程の言質を取る事が出来たので良しとします。これでお兄様との幸せな思い出が1つ増えました。
そもそもお兄様との記憶に嫌なものなんて1つもありませんけど。
……去年みたいに少し思い出すのが恥ずかしいのはありますけど….。
とにかく、考えられるのは一華が大学生になったことで結婚への現実感が湧いたから……ということでしょうか?
だから今のうちに快適……かはともかく、貴重な学生生活を緩やかに送りたくてあんなことを言ってしまった、と。
律儀に守る気なんてさらさらないですが、お父さんが勝手に決めたお兄様と一華が結婚できる最低条件の1つは一華が大学を卒業する事でした。
つまり今からあと4年後ですね。これなら確かに現実感が湧いてくる頃でしょう。
まぁなんども言うように一華はそんな条件なんて守る気カケラもないですけど。
そもそも一華が大学を卒業してからでは時期が悪すぎるのですよ。
だってその時にはお兄様は社会人になって2年目、まだとても忙しい時期です。
さらにお兄様は『RUDE』という世界的に有名な会社の次期社長になるためにとても勉強しなければなりません。
お兄様はそこら一般共とは違うのです。
でもだからこそ……お兄様は社会人となった後もとても忙しくなる。
だから社会人と比べたらまだ余裕のある学生のうちにヤるべきことをヤって、子育てした方がいいと思うのです。
お兄様は『RUDE』に就職する事が決まってて就活もする必要ないですし。
普通の方法で入ろうとしたらものすっごく厳しい試験や面接を通らなければいけませんけど……お兄様は15年も前から
つまり就職活動に割く時間はないのです。
その分の時間を有効活用したいと思いませんか?
それに、一華はちゃんと自分の魅力についてきちんと理解しています。
一華が本気でお兄様を誘惑すればきっと5分も経たずにお兄様の理性を完全に溶かし、熱く激しい夜を過ごす事は十分可能でしょう。
『RUDE』の次期社長になる人がデキ婚なんて許されません。だから今のうちに正式に結婚しておいた方が—————
「……………あ」
「ん?どうした一華?」
「……あ、いえ、なんでもありません……あはは……」
———お兄様との幸せな愛の溢れる結婚生活。それを想像していた時、ある事に気づきました。
今からお兄様と結婚したならば……毎夜毎晩激しく愛しあっていれば自然と身籠もるもの。
そして赤ちゃんが産まれるのは身籠もってから十月十日、つまり約一年後。
その時お兄様は大学3年生。就活が必要ないお兄様にとってはまだまだ遊べる時期です。子育てする時間も余裕もあります。
その翌年にはお兄様は大学4年生。
卒業研究で忙しくなりそうですが、それでも就活がいらないぶん他の学生よりは余裕があるはずです。
しかしさらにその翌年、お兄様が社会人になった時、つまりお兄様が一番忙しい時期には赤ちゃんは2歳になります。
そして2歳の赤ちゃんは……第一次反抗期、通称『魔の2歳児』と呼ばれるほど育児が難しい時期です。
しかもその時一華は大学4年生。
一華も就活が必要ないとはいえ、卒業研究で忙しい時期です。
つまり……お兄様と一華が1番忙しい時期と育児が1番難しい時期が重なるのです。
さすがにそれは……厳しいですね。
お兄様に迷惑をかけるのは本意ではないですし、それに私達が忙しいからといって育児を疎かにしていいわけではないですからね。
私は気にしてない……というかむしろお兄様と仲良くなれて感謝してるぐらいですが、お父さんは育児を疎かにしたと今でも自責の念にかられてるらしいですし。
私達もそんな一生ものの後悔はしたくありません。
………これはつまり、少なくとも今年中にお兄様と性行為をするのは避けた方がいい……という事なのですか…?
……そんな馬鹿な。
だってこんなチャンス滅多にないですよ!?
せっかくお兄様に『なんでも言う事聞くという言質を取られたから仕方がない』という建前をあげられるというのに!
お兄様は理性が……というか精神力が尋常じゃなく強いお方です。
だからただの普通の男の子でしかなかったお兄様は普通ではない厳し過ぎる勉強や重圧に耐え続け、世界的に有名な会社である『RUDE』の
でも……それでもやはりお兄様は人間です。
どれだけ強い精神力を持っていようとも、人間である限り三大欲求には抗う事はできません。
実際、お兄様が一華に欲情しているという事は一華が1番よくわかっています。
女の子は視線に敏感なんです。それが性的な視線で、なおかつ好きな相手ならなおさら。
だって一華はいつもお兄様を見てますから。
だからわかっているんですよ?一華がキワドイ服を着た時にお兄様の視線が胸とふとももに集中している事は。
平静を装いつつも目線を外す事ができていないお兄様が可愛いので指摘はしませんけど。
ただ……一華は男女問わず多くの視線を集め過ぎる事が悩みなんですよねぇ…。
一華は世界的に有名な会社の社長令嬢で、それに美少女だから注目されるのは慣れっこです。(謙遜しては許婿のお兄様に失礼になるからしない)
でも注目されるのはそれだけが理由ではありません。もし仮に一華が一般庶民でブサイクだったとしても男共に注目されるのには変わりなかったでしょう。
だって一華は自他ともに認める巨乳なのですから。
もう一度言いますが、女の子は視線に敏感なんです。そしてそれが性的なものならなおさら。
だからこそわかってしまうんです。
男共から性的な視線が、ついでに女子から羨望と驚愕の視線が一華の胸に向けられている事に。
一華の胸はお兄様のモノです。というか一華の身体も心も全てお兄様のモノです。
なので好き勝手に見てほしくないんですよねぇ…。何度も言いますが一華の胸はそこらの有象無象共ではなくお兄様のために育てたモノです。
だから触れるのも揉むのも舐めるのも噛むのも吸うのも摘むのも引っ張るのも……そしてもちろん見る事ができるのも世界中でお兄様だけなんです。
そんな絶対特権を主張したいものですね。
鋼の理性を持ち、いつも冷静に振舞っているお兄様でさえ男性としての本能的につい見てしまう一華の身体。
それを自由にしていいという
そこで少し誘惑でもすればごく簡単に堕ちるはずです。これは自信が……というより確信があります。
なのにそれができない……。
一華はこの千載一遇のチャンスを無駄にしなければならないのです。
なぜ?
性的な欲求がないとは言いませんが、一華はただ0.01㎜の隙間もなくお兄様と心だけじゃなく身体も繋がりたいだけなのに。
身体の奥底までお兄様を感じたいだけなのに……。
……いっそのこと口や後ろの方で我慢しましょうか。
初めてがアブノーマルなのはさすがにちょっと……とも思いますが、背に腹はかえられらせん。
それに似たような事は何度かやった事があるので躊躇するのは今さらというものです。
と、いうわけで一華の願いは決まりました。
後はこの願いをお兄様に伝えるだけです。
いつにしましょうかねー、楽しみですねー♪
さすがに今言うのはムードも何もないですし……そもそも路上でこの願いを言うのは少々はしたないですし……。
家に帰ってすぐ……もムードがないですね。ここはやはり夜に伝えるべきでしょうか。
あとはお父さんを家から追い出してお母さんを説得すれば……よし、これで完璧ですね!
………いや、ちょっと待ってください。後ろの方でヤる際、万が一の事も考えてここはお風呂場にするべきでしょうか。
お兄様がお風呂に入っている時に一華が裸で突入すれば……ほぼ間違いなくお兄様の方から襲ってくれますね。
……これだったら最初から一華の願いは『お兄様と一緒にお風呂に入ること』にすればいいのでは?………さすが一華!これで本当に完璧ですね!!
今その願いを言えば反対される可能性が高いですから……お風呂に入る前に伝えましょう。そして返事を待たずに突入すれば後はもう一華の思い通りに事が進むはずです。にへへ……。
そうと決まればさっそく今夜の為の準備をしないと…!
竜堂の人間は行動力が尋常じゃない程あるのです。
まずはお母さんをどう説得するかを考えて……お父さんを家から追放して……そしてお兄様に今日は
そう思い、お兄様の顔を見ます。
すると—————
「な、なに……?」
「………いえ、別に、その……なんでもありません……」
———お兄様は恐れ半分、期待半分くらいの表情をしていました。
か、可愛い……ッ!!
なんですか!?なんなんですかさっきのあの表情は!?
一華がどんな
普段はとってもカッコよくて凛々しくて逞しくて素敵なのにこういう時だけそのような眼で見つめてきて……!これだから一華の方から襲っちゃうのがわからないのですか!?
ギャップ萌えってこういうことをいうのでしょうか……。
……萌えます、萌えますよお兄様!思わず襲っちゃいたいくらいです!!
テンションがおかしいとわかってますが、この昂りを抑えられそうにありません!
この大切な感情を心に刻みこみ、そしてなんとか暴走しないように抑え込み、今日はいつも以上に激しいスキンシップをしながら家へと帰ったのでした。
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