待ち合わせの時間


それから熱狂的な空気に包まれたまま生徒会長の……一華の挨拶が終わり、一華の出番が終わったことで静寂に包まれた体育祭実行委員長の挨拶が終わり、続いて行われた準備体操も終わり、やっと最初の種目に移った。

これから先、閉会式まで生徒達は集団行動をする必要がない。

自分が出る種目の集合がかかるまでは友達やクラスメイトを応援したりして自由な時間を過ごすのだ。



「待ち合わせ場所は……確か体育館裏…だったよな」



そんな中、俺は一華に呼び出されていた。

朝台所に置いてあった紙に開会式が終わったら体育館裏に来てと書いてあったのだ。



「体育館裏……だったはずなんだけど誰もいないなぁ」




前を見る、誰もいない。

右を見る、誰もいない。

左を見る、誰もいない。

後ろを見る、誰もいない。



……来るのが早すぎたかな?

まぁ一華は生徒会長で体育祭でもさっきの開会式の挨拶みたいに仕事があるから先生や体育祭実行委員に呼び止められてるのかもしれないな。

確か閉会式でも挨拶があるんだったよな?そのことに関して何か急な話があったのかもしれない。

だからのんびりと待っていよう。そう思っていると—————




「だーれだ♡」


「うおおぉぉおおお!?い、一華!?」




背後からもの凄い良い香りと背中にもの凄く素晴らしい感触がきたと同時に手で目隠しをされた。



「ふふっ♪正解です♡」



言うやいなや目隠しを外される。

後ろを振り向けばやはりそこには一華がいた。


……どこから現れたんだ?

後ろどころか周囲に誰もいないことはさっき確認したばかりだぞ!?

忍者か! アイエェェェ!?


……まぁいいか。

だって一華だぜ?どこから現れてもあんまり不思議じゃないだろう。



「それにしても……お兄様が私服で一華だけが体操服なのは少しだけ恥ずかしいですね」

「ん……まぁ…そうだろうなぁ…」


確かになんというか……その…ちょっとした背徳感があるな。

今日は体育祭なんだから一華が体操服なのは何も問題ないはずなんだけど……やっぱり体操服ってスゲェわ、なんつーか……謎の色気がある。



「でもそれでお兄様が悦んでくれるなら嬉しいです。だってお兄様は体操服姿の女の子が大好きですもんね?」

「……え?」

「開会式の時だって体操服姿と女の子をずっと見てたじゃないですか。ずっと、ず〜っと、見てましたよね?」

「………いや…その……」

「一華を見つけるよりも先に、他の女を見て鼻の下を伸ばしてましたよね?」

「……………」



一華を顔を見る。

一華は綺麗な笑顔をみせてくれた。



ただしその眼は少しも笑っていなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る