嘘、ダメ、絶対
「お兄様はバカです」
「あぁ」
「お兄様は大バカ者です」
「あぁ」
「乙女の心を傷つけたお兄様を一華は絶対に許しません」
「それは……困るな」
「でも……そんなお兄様が、一華は大好きです」
「……あぁ、わかってる。俺もだよ。俺も…めんどくさくて嫉妬深くてヤキモチ焼きで、愛が重くて愛が暴走しやすくてすぐに狂気に陥る、そんな一華が……大好きだ」
いつもなら気恥ずかしくて言えない言葉でも、今なら言える。だから今のうちに言っておく。
あれから数十分後、未だに俺は裸のままようやく泣き止んだ一華と抱き合っていた。
とんでもなく変態的な状況だけども、今の俺に一華を襲うつもりはない。
愛が性欲に勝った瞬間だった。
……たぶん数分後にはまた性欲の方が勝つんだろうけど。人間である限り三大欲求には勝てないんだよ。
だから今のうちに手を打っておく
「一華、今日は疲れただろう?もう寝よう」
「そう…ですね。お兄様もお疲れでしょうし、もう寝ましょうか」
よし、成功。
「
うん、失敗。
「い、一華?今日はお兄ちゃん本当に疲れてるんだ。一華の想いはちゃんとわかってるから……だから
「えぇ、わかってます。だから今夜は
「……え゛」
「さぁ♪一華もっと強くを抱きしめてください、お兄様♡」
……………。
ヤベェ、どうしよう。
俺をベッドに縛り付けていた拘束具はもう外されたし、一華を振り払って逃げるか?
……いや、ムリだ。俺には……とくに今の俺には一華から逃げるような真似はできない。
そんなことは許されない。
なら……なにか理由をつけて逃げようか。
「なぁ一華、俺ちょっとトイレに行ってくるわ」
これはあながち嘘ではない。
だって早くトイレに行って出すもの出さないと……このままでは一華に欲望をはき出してしまうかもしれないから。
うむ、我ながら良い言い訳……もとい理由を考えついたものだな。これなら一華も離してくれるだろう。
「ダメです。……ウソはダメですよ?お兄様」
「え…?」
「ウソですよね?一華にウソつきましたよね?お兄様。……うそつき、ウソつき、嘘吐き、嘘つき、嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき」
「い、一華!?落ち着けって!100%ウソってわけじゃ…!—————あ」
「ほら、やっぱり数%はウソなんじゃないですか」
そう言って一華が取り出したのはスタンガンとかいう護身用武器にとってもクリソツなもの。
……いったいどこから出したの?なんでそれを徐々に俺に近づけてるの?ていうかそれ、本物のスタンガンなんじゃ…。
「そんなお兄様には………おしおきです!!」
「いや、ちょっ、待———っ!?」
そして一華は護身用武器であるはずのスタンガンを俺に向けてきて———
「ぎゃあぁぁぁぁぁあああああ!?」
———俺の意識はここで途絶えた。
ちなみに痛みは感じなかった。
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