蜜夜の始まり
「………ん…?」
深夜、何か身体に異変を感じ、俺は目を覚ました。
なんだろう、手首と足首に少し違和感が……。
「………え…?………えぇ!?」
数秒後、俺は自分の体の状態を把握し、驚いた。そりゃもう全力でビックリした。
眠気なんて夢の彼方へ飛んでいった。たぶんもう今日中は帰ってこないだろう。
なぜなら、俺は………両手首と両足首が手鎖と鎖によってベッドに繋がれ、まともに身動きができない状態だったからだ。
簡単にいうと……ベッドに仰向けで拘束されていた。
「え、ちょっ、まっ、なんで!?」
違和感を感じて目を覚ましたらベッドに拘束されてました☆
とかアホかぁぁぁ!!!なんで!?どうして俺は今こうなってんの!?
誰か状況説明してくれぇぇぇ!!そして助けてぇぇぇ!!
「あ♪もうお目覚めになられたのですか?お兄様♡」
「………え…?」
声がして振り向いてみると—————
「予想より少し早かったですね♪でも大丈夫!もう準備は終えましたので♡」
「………いち……か……?」
———瞳から光を失ったパジャマ姿の一華が、そこに立っていた。
「はい♪お兄様のお嫁さんの一華ですよ♡お兄様、目覚めの気分はどうですか?」
そう言いながら、拘束されて動けない俺にまたがり、そのまましなだれかかってくる一華。
一華の身体の柔らかく、温かな感触が伝わり、頭が沸騰したみたいに熱くなる。
たぶん風呂上がりなんだろう。一華の髪からはシャンプーの良い香りがした。
「い……一華…?なんで……?」
「なんで…?それは私のセリフですよ、お兄様」
一華が光を失った瞳で俺の眼を見る。
そして……ありえないと思っていたドス黒いオーラが一華の身体から放たれた。
「なんで?どうしてお兄様は一華に嘘をついたのですか?ねぇお兄様、どうして?」
「う、嘘?いや俺は嘘なんてついてな———」
「嘘つき、お兄様は合宿中一回も女の子と接触していないって言いましたよね?でもお兄様の服からは微量ですが香水の匂いがしました。一華以外の女性の匂いがしました。それはなぜですか?ねぇ、なんで?どうしてお兄様から香水の匂いが……雌豚の臭いがするのですか?なんで雌豚ごときがお兄様に触れたのですか?どうしてお兄様は雌豚が近づくのを許したのですか?なんで?どうして?」
一華の光の無い瞳が俺を見つめ、問いただす。
熱が一気に冷めていき、むしろ寒気が全身を駆け巡った。
ここで嘘をついたり、目を背けたりしては絶対にいけない……!
そう俺の本能が告げる。
しかし、本当に俺は嘘をついたりしていないのだ。言ってて悲しくなってくるが、合宿中、俺は女の子と触れ合ったことは一度もない。
でも一華のあの気迫、一華は嘘をついていないだろう。
だから俺が覚えてないだけで俺はどこかで女の子と接触していたのだろうか…?
必死に考える。全力で思考する。
俺が思い出せない時に女の子と接触していた…?どこで?いつ?
「………あっ!?」
思い…出した……!
そういえばグループ別早解き競争の時、俺の隣の席には女の子がいた!!
しかも、俺が必死に問題を解いてる最中、軽くパニックになった俺をその子が背中をさすってくれていた!
なるぼどな〜、納得。
一華は鼻がいいなぁ!
……では終わらないよな〜、絶対に。
「あの〜、一華さん?あのですね……」
「二度とさん付けなんて他人行儀な言い方をしないでください」
「あっ、ハイ。ごめんなさい……」
「それで、なんですか?言い訳なら聞きませんよ?納得のいく説明をお願いしますね?」
「お、おぅ。えーっとだな………」
それから一華に事細かく事情を説明した。
席は決められていたから移動できなかったこと。背中をさすられたのは女の子がかってにやったことで、俺は必死に問題を解いていてまったく気にも留めなかった……というかそれどころではなく、ただ単に気づかなかっただけ、ということなど、一華が納得できるように話した。
そのおかげか、一華の放っていたドス黒いオーラはだんだんと収まっていき、瞳にも光が戻ってきた。
「なるほど、そういうことだったんですね。それならそうと最初に言っておいてくださいよ」
「うん、そういうことだったんですよ……。………ところで一華?誤解も解けたことだしそろそろ手鎖と鎖を解いてほしいんだけど……」
あと俺の上からどいてもらえると嬉しいんだけど……。
ホッとしたからか、今の俺の状態を思い出してしまった。
ベッドに仰向けで拘束されて身動きできない俺の上に風呂上がりでパジャマ姿の一華が覆いかぶさっている。
身動きできないからこそ、一華の柔らかな太腿や極上に育った胸が、薄いパジャマごしに押し付けられて……なんというか、その、男としてたまらなくヤバイです。
理性が爆発霧散してしまいそうなんです。
……そういえば一華は寝る時にはブラジャーを着けないって言ってたような…。
寝る時用のブラもあるらしいけど、一華ほどの
いや待て、忘れろ俺、なんで今になってそんな事を思い出したんだ俺。
今は雑念を捨てて菩薩の気持ちになるですよ。
……でも確かにこの感触は…。
今まで何度も一華に抱きつかれた俺だからわかる。
いつもより……その……柔らかさが倍増していることに。
別に弾力がないわけじゃない。程よく柔らかく、なおかつ程よく弾力があってまさに至高のπと言えるだろう。
だけど一番最初に出てきた言葉は『柔らかい』だった。ただそれだけだ。
布1枚ないだけでこんなにもダイレクトな感触になるのか…。
……いやだから落ち着けって俺!変な事を考えるな俺ェ!!
この超邪な思考のスパイラルにから抜け出す為にもまずは手鎖とかを外してもらわないと…!!
「そうですね、お兄様の無罪も晴れたことですし………では、罰を与えましょうか♪」
「なんで!?無罪って言ったじゃん!!」
「そのことに関しては赦しますが、一華を不安にさせたこと、一華を3日間も放置したことに関しては赦してませんよ?」
それは悪かったと思ってるけども……!
わりと本気でどいてくれないとヤバイんだって!
俺は今仰向け、そして一華はそんな俺に覆いかぶさってるから、マイsonがSONになったら気付かれるんだって!当たるんだって!!
さっきまで恐怖で縮こまっていたけどだんだん膨れ上がってきてるからぁ!!
「というか今何時!?……23時!?一華!早く家に帰らないと……!」
合鍵渡してるし許嫁だし普通に家に居るし普通に俺の世話してくれるけども俺達は同棲しているわけではない。
だから一華がこの時間にここに居るのはおかしいのだ。
「あぁ、それなら大丈夫です。お父さんには今日、お兄様の家に泊まるって言っておきましたので」
「そ、そうか……。それなら良かった……」
「はい♪『お兄様に大人の女にしてもらってきます♡』って言ってきました♪」
「全然良くない!!」
ヤベェ、これからどんな顔でおじさんに会えばいいんだ!?
………っていうか今気づいたけど俺のバックの中からスマホが鳴っているような……!?
相手絶対におじさんだよ!怖いよ!出たくないよ!
俺のバックを開け、スマホを取り出し、電話に出る………一華が。
だって俺今動けないし。
『オイ真司!!テメェ、一華に手ぇ出したらどうなるか———』
「あ、お父さん。初孫は男の子と女の子、どっちがいい?」
『は、初孫!?ちょっと待て一華、父さんはまだお祖父ちゃんにはなりたくな———』
ブツッ
一方的に電話を切っていた。そして電源も切られた。
うん、ほんと、俺は次からどんな顔でおじさんに会えばいいんだろうか。
「さぁお兄様♪これからお兄様に罰を与えます♪与える罰は〜『3日間我慢した一華に極上のご褒美をあげること』♡」
一華はもう完全にヤる気満々だ。
これはもう……諦めるしかないかな。
俺だってこの3日間、頑張ったんだ。死ぬ気で、精一杯頑張って勉強したんだ。
全ては一華のために。俺達2人の将来のために。
だからもう……理性なんて捨てて、欲望のまま行動してもいいじゃないか?
許嫁なんだから遅かれ早かれ最終的にヤることは確定してるわけだし……ね。
勉強合宿で疲れ果てた脳がそんな結論を出す。
俺には…もうその結論を覆す思考も理性も残っていなかった。
「は…はは……わかったよ。一華、俺はその罰を受け入れよう」
「本当ですね!?言質は取りましたよ!?………それでは!…んっ!」
一華が唇にキスしてくる。それも、舌を入れてくるディープなやつを。
20秒後、息継ぎの為に一旦唇を離し、またすぐにキスされる。
それを何度も何度も繰り返す。一華が満足するまで。
一華の瞳の中にハートマークが見える。桃色のオーラも出てる。
もちろんこれも俺の気のせいだ。ありもしない幻だ。光の無い瞳やドス黒いオーラと同じように。
何分……いや、何十分経ったのだろうか。一華はようやく満足してくれたのか、お互いの唾液で艶やかに濡れた唇を離してくれた。
その頃には一華は完全に出来上がっていたし、俺のsonも立派な大文字になっていた。
一華もそのことには気づいているだろう。だって一華の柔らかなお腹に当たってるし。
『俺、参上!!』ってぐらい主張してる。存在感溢れまくってる。
「アハハッ♪お兄様の
そう言って俺の大事な部分をさする一華。
「しかたないだろ、男の本能なんだから」
「そこまでなる程一華のキスは気持ち良かったですか?」
「当然だよ。今まで何回されたと思ってるんだ。その度にどんどん上手くなっていくんだからもう我慢できないよ」
「何回かといわれたら……今のが15回ぐらいでしたから……それも含めておよそ500回ぐらいですかね。お兄様が一華のモノに…一華だけのモノになってくれてたらその3倍はかるくいっていたのですが」
……マジか、自分でもビックリだ。
今日みたいに浮気を疑われたり長い間離ればなれになったりなど、一華のストレスが溜まりすぎた時によくキスを求められたからそこらのラブラブカップルや新婚夫婦よりかはキスしてるという自覚はあったが、まさかそこまでとは。
我ながらよく理性を保ってきたと思う。その理性、たまに吹っ飛ぶけど。
一華のお父様、つまり日本屈指の大企業『株式会社RUDE』の社長様から直々に脅迫……もといありがた〜い忠告を受けていなかったら俺はとっくに一華と一線を越えていただろう。たぶん、一番性欲に素直だった中学生ぐらいに。
「ファーストキスが5歳の時でしたから……およそ13年間で500回……全然少ないですね♪もっと頻度を増やしましょう!まずは『おはようのキス』と『おやすみのキス』の復活を希望します!!」
そう、俺と一華は小学校低学年の一時期、毎日のように『おはようのキス』と『おやすみのキス』をしていた。だから500回という普通ならありえない数字になるのだ。
ファーストキスは俺が6歳、一華が5歳の時。例の結婚の約束をしたすぐ後、一華の方からしてきた。
問題が起きたのはそのすぐ後。
たまたま部屋を通りかかった母さんがその光景を見ていたのだ。
そして父さんに伝わりおばさんに伝わりおじさんに伝わって……大変ショックを受けたおじさんがその場の勢いで俺と一華の婚約を決めたのだった。
そのことについて、感謝はすれど恨みや辛み、後悔はしていない。ただ、親がかってにそんな簡単に婚約者を決めていいのか?娘の将来に大きく関係することを決めていいのか?とは思う。
だけど、勢いで決めたとはいえ、おじさんが考えなしに許婿を俺に決めたわけではないという事はわかっている。
もしも俺が一華にふさわしくない男だと判明したらすぐに婚約破棄するだろうし、それに、俺という許婿がいれば今でも大量に来ているお見合い話を断る口実にもなる。
そう思ってしまうのは……やはり、俺が一華に心の底から惚れているからなんだろうな。
キスの嵐が終わり、ようやく一華が満足してくれたようだ。
ふぅ……ミッション達成、あとはこの両手両足にかけられた手鎖を外してくれるのを待つだけだ。
早く外してくれないと……なんというか……その……かなりヤバイ、おもに下半身の一部分が。
今も一華の柔らかくて温かい右の手のひらが俺の一番男らしいところに(ズボン越しに)触れているため、このままだとちょっとした振動で大惨事になってしまう。
だから一華に早く拘束を解除してもらわないといけないんだけど……。
「………♡」
さっきから一華が全然動かない。
瞳の奥にハートマークをうかべて桃色のオーラを放ち、右手を俺の
「一華、そろそろ手鎖を……」
「…………♪」
「………あの〜、一華?」
「 ………………♡」
「……一華さん?」
「……ッ!」
「いんひょんっ!?」
一華の右手の下にあるモノを強めに握られたァ!?痛い痛い痛い!!いろんな意味でヤバイ!!俺にそっちの趣味はないのにこのままじゃ果ててしまう!
いつの間にか一華の瞳からはハートマークが消え、深淵のようにドス黒く濁った眼をしていた。
そして、その眼のようにドス黒く、禍々しいオーラがまた全身から放たれていた。
百錬自得の極みのようなチンケなオーラとは格も桁も違う。百錬自得の極み見たことないけど。
「……お兄様、『さん付けはヤメて』って一華言いましたよね?」
「う、うん。そうだね、そうだったね」
「ではなぜさん付けで呼んだのですか?」
「い、いや、とくに深い意味はなくて……だな……その……」
「意 味 も な く、さん付けで一華の名前を呼んだのですか?でしたら次からは、これから先は将来ずっと永久に永遠に、
「お…おぅ、わかった。そうする……」
「わかりましたね?言いましたね?聞きましたよ?………お兄様、
「………あぁ、わかった。
約束、その言葉に込められた重い想いを俺はわかっている。
たとえ口約束であろうが、俺達の間ではそれは書類上での約束、誓約に等しい効力をもつ。
今こうして一華の許婿になれたのも、幼い頃交わした約束があったからだ。
その時はこんなに大事になるとは思ってもいなかったが、幼心ながら本気で一華と結婚したいと思ってたし、その気持ちは今でも変わらない。
まぁ今回の約束は『
一華の願いならば、結婚の約束レベルの重たい内容じゃなければどんな約束でも二つ返事でOKしてやるさ。
一華を満足させ、新たな約束もしたのにまだ一華が俺の上からどいてくれない。
……いやまぁ約束が増えたのは俺のせいなんだけどさ……。
さっきから何度も言ってるけど理性と下半身が本気でヤバイんだって!一華に向かってそんななさけないこと言えないから心の中でしか言ってないけど!
……そういえば力を緩めてくれたけど一華の右手はまだ俺のモノを握って———
いやいや!!そんな事を考えるのはやめよう!意識を手の指先に集中!ほかの部分の感触と感覚は全てシャットアウトォ!!
そして極めて落ち着いた声で一華に話しかける。声が裏返らないように気をつけないと……。
「一華、早く手鎖を外してくれないか?」
「嫌です♡」
「なんで!?一華を満足させたじゃん!?」
「キスだけで満足するとでも?それに〜、まだヤることヤってないじゃないですか♡」
そう言って瞳の奥にあるハートマークとピンク色のオーラを出してくる一華。
……え、これ、ヤバくない?まさかの俺の方が貞操のピンチ?……普通逆じゃない?
「一華!その……そうだ!トイレ行きたい!だから早く手首と足首の手鎖を外してくれ!」
「
「いやうそごめん!なんでもないです!何も言ってないです!!」
「いーえ許しません♡………大丈夫ですよ、お兄様。安心して一華にその身を
そのまま俺の服を脱がしにかかる一華。
このままだとマズイと思うけれど両手と両足が拘束されているため逃げ出せない!
あっけなく上を脱がされ、そして一華が俺のズボンに手をかける!—————その直前。
ピンポーン♪ピンポピンポピンポーンピンポーンピンポピンポピンポーン♪
家のインターホンが連打される。
その音に一華が動きを止めた。
そしてカーテンを開けて外を見る。
深夜にやる悪質なピンポンダッシュが犯人じゃなければインターホンを連打した人物は……!
「お父さん……」
「おじさん…!」
そう、行動力溢れるおじさん、一華のお父様だった。
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