第66話「【タイマー】は、巻き込まれる(前編)」

『いよう、下等生物ども───楽しく飲んでるかぁい♪』


 そう言って乱入してきたのは、黒い軽鎧にローブを羽織った、笹耳の男女達が……。


『ふーふーふーん!───取りあえず、目撃者は全員死んでよしッッ! やれぃ!』


『『『は! 高貴な血筋のためにッッ!』』』



 バチバチバチバチッッ!!



「な、なんだ?!」

「え、エルフぅ?!」

「おい! なんかヤバいぞ───に、」


「「「逃げろッッ!!」」」


 慌ててテーブルから転げ落ちる冒険者たち。

 そんな姿を嘲笑うかのように、


 バチバチバチと、高位魔術のたてる物騒な音を背景に、両手に魔法を充填したエルフの男女がドドドドド!! と乱入してきた。


『全部、下等生物だ───構うな! さぁ、最後の晩餐を食らわせやれッ』


 そして、

 ところかまわず発砲しようとし──────。


「んふふふ~♪ からのーーーー……」


『目標は禁魔術の使い手だ! 捜索の用なし、あぶり出せッ!!───総員ッ、撃……』

発射フォィエルッ♪」



 バァン!!!



『撃…………撃? 撃、うげぇ───えぶッ?』

 からの~?

「出・落・ち───♪」



 どさッ……。



 威勢よく飛び混んできたはずのエルフの一人が顔面の面影を失って床に伏せる。

 そこには汚らしい液が撒き散らされ、高貴さの欠片もない───……。


『『『な!!?? た、隊長?!』』』


 魔法をぶっ放そうとしていたイケメン男女軍団が衝撃の余り硬直する。

 そして、全員が揃ったように顔をあげて、下手人を見ようと──────。



「はぁい♪ 下等生物代表───エリカ・エーベルトと、愉快な仲間たち・・・・・・・でぇす」



 シャキンッ♪───ガシャキっ!



 ニッコリと笑ってボルト操作。

 初弾をぶっ放したエリカは、優雅にテーブルに腰かけ、軽く一礼。



「……今宵はアタシのパーティにお集まりくださり、大歓迎♪ 素敵なサプライズを、どうもどうもどうも、どうも、ありがとう───そして、」


 右手にデカい鉄の塊大型ライフルを、

 左手にデカい鉄の塊大型サブマシンガンを、



「……そして、死ね♪ 愚にも劣る、下等なエルフめッッ」

『『『な?!』』』


 発射フォイエル!!



 バババババババババババババババババババババババババババババッバ!!



『『『がぁぁぁああああ!!───アビュ』』』



「ひゃあ!!」

「な、なんだぁ!?」

「「「雷じゃぁぁあああ!!」」」


 酒場中大パニック。

 ギルドから流れて来た冒険者たちも腰を抜かして仰け反る始末。


 そこにぶち撒けられるエルフの残骸!

 もう無茶苦茶だ!!


『『『ぐぁぁぁああ!!』』』

「「「なんじゃこりゃー!!」」」


 そして、ルビンたちは……?


「ゆ、愉快な仲間たち───?」

「……たち?」


 え?

「「───たち、達って……?」」


 ルビンはレイナを指さし、

 レイナはルビンを指さし……。


 ババババババババ! と楽し気に武器を乱射しているエリカを見て………………。


「な……………」

 ぶんぶんぶん。

「「ないないないないないないないないないないない!!」」


 俺、関係ない!

 僕、関係ない!


「「ないないないないないないないないないないないッ!」」


 バババババババババババババババババ!!


「アハハハハハハハハハハ! エルフがいっぱいいるよー、エルフがいっぱいいるよー♪」


 違う、違う違う!!

 こんな人知りません!!


 関係ないです。

 他人です。

 知り合いじゃないですぅ!!


 ぶんぶんぶんぶんぶんぶん!!


「ぼ、僕ホントに関係ないからぁぁあ!────逃げるねッ」

「あ、ズルい、レイナだけずるい───って、あれ、どこ?!」


 待ってとレイナの服を掴もうとしたルビンだが、いつの間にかスルリと逃げられる。


 ……ということは【能力】を使った?!


「レイナ、待て!」

「やだー!!…………あ、」


 上手く逃げようとしたレイナの目のまえに、武装したエルフが立ち塞がる。


『副長ッ! 今、時空魔法の類似魔力を感知───こ、この子供です! 間違いないッ』

『な、なんだと、その汚いガキが??…………ええい、任務続行だ、抹消せよ!』


『『『はっ! 高貴な血筋のために!』』』


 レイナが【能力】を使ったのを何らかの方法で感知したエルフ達。


 初撃でやられた連中を除き、酒場のテーブルなどを盾にして凌いでいた連中がレイナに気付いて襲い掛かる。


『覚悟しろクソがき!!』

『ぶっ殺せぇぇ!!』


「きゃあ!! お兄さんッ!」

「れ、レイナ───今行くッ! タイム、タイムタイム!!」


『な』

『ぎ』

『ご?』


 レイナに襲い掛かっていた3人目掛けて、タイムを発動、一瞬にして動きを止める。



 かちん、こちん───!



『な! なんだと?! き、禁魔術を連射だとぉ?! おい、能力者が二人もいるぞ!』

『くそ! 三人やられた───全員時空に囚われたぞッ』


『ええい、そいつ等は忘れろ。任務続行だ!!』



 わーわーわー!!



「さっせないわよ──────! 汚らわしいエルフは駆除してやるッッ!」


 バババババババババババババババババババババ!!


『くそ! 応援を呼べッ! 遺跡調査に向かった連中を呼び戻せッ』

『了解! 魔導通信開きます──────がぁ!』


 ドサリと倒れるエルフの戦士。


「れ、レイナ今のうちに!!」

「う、うん!!」


 一度は逃げようとしたレイナが今度は素直にルビンの下まで這ってくる。

 その頭上をエリカの武器がバリバリと唸る声をあげ、次々にエルフを屠っていく。


「あははははははは! あははははははははは!」


『くそ! なんなんだ、あの女は?! あんなの報告にないぞ?!』

『ふ、副長、撤退しましょう!! ひ、被害が』


 死屍累々とエルフ達は死体を積み上げていく。

 なんとか反撃しようとしているようだが、エリカはもう滅茶苦茶に撃ちまくっているのだ。


 あれで反撃なんてできるわけもないだろう。 


『バカやろうッ! こんなとこで尻尾をまいて見ろ───外交部は俺たちを見捨てるぞ?!』

『し、しかしこのままでは───ワビュ!』


 ボチュン! とぶっ飛んだエルフの青年。

 その傍らでは、美人エルフが腹を撃たれたのかギャーギャーとエルフ語で騒いでいる。


 回復させようとしていたエルフもその瞬間撃ち抜かれて絶命する。




『くそ! て、撤退! 撤退ッ!!』

『『『撤退だぁぁぁぁあ!』』』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る