第63話「【タイマー】は、パーティを組む(後編)」
「はい……??」
ルビンのパーティ??
誰が?
誰の?
「えっとー…………」
何か聞き捨てならないことを聞いた気がしてルビンが口をパッカーとあける。
だってさ。
一時的な同行は認めたよ?
ほんと一時的。
ダンジョンから街に帰るくらいの距離よ??
だけどね。パーティ組んだら一時的じゃないよね?
それ、もう仲良しこよしだよね?!
「───え、なんで?」
「いや、紹介者欄、ルビンさんになってますし、初回パーティメンバーにも名前載ってますから……」
「あーほんとだ──────って、何を勝手に書いとんねん!!」
ドラゴンの血を使ってでも神速のツッコミ!!
「いやーん! 主のいけずぅ」
「じゃっかましいわッ!!」
ズピシ!! とチョップをブチかますも、エリカの奴───「テヘ♡」とか、舌を出してメンゴメンゴ。って古いなおい!!
でも、アンタ見た目20代やで?
それ結構な年齢の人がやるとだいぶキッツイで!?…………って可愛いなおい!!
柄にもなく照れまくるルビン。
だって、黒衣を着た女が「てへ、にゃんにゃん」とかやるもんだから、ルビンは顔を真っ赤にして背けてしまった。
痛いやら、
可愛いやら、
ギャップに萌えるやら……、
相当キッツイかと思いきや、無邪気なエリカが想像以上に可愛すぎた。
それを見ていたレイナ。
「ムぅ!」とか、ふくれっ面になったレイナも対抗して、「むぅ! ニャンニャン!」とかするから、もうヤバイ……。
「ぐはッ」
も、萌え劇場ですか、ここは!!
「ち……。
その様子に、顔面に青筋を浮かべたセリーナ嬢が半ギレで舌打ちをしていたとかなんとか……。
「さーせん……」
「まったく……! はい。あとはもう好きにしていいですよ。あとできれば目立たないようにお願いします」
バン! とライセンスを叩きつけつつ、パーティを組んだ証明のタグを人数分くれるセリーナ嬢。
「あ……はい」
なんか、すんません。
「いーえーー!! 目立たなければ、お・好・き・に!!」
主にエリカ、アンタだよ。と暗に言わんばかりに睨みつつセリーナ嬢は締めくくった。
本音では厄介者でしかないエリカを追い払いたいのだろうが、その権限も戦力をセリーナ嬢にはない。
ならば、言うとおりにしてやって、なるべく目立たず騒がず、冒険者の群れの中に埋没させてしまえ───というのがセリーナ嬢の考えらしい。
それはルビンも同感だ。
しかも、なし崩し的にパーティを組まされてしまった以上、ルビンも無関係ではいられない。
「はぁ……。なんだか最近こんなのばっかだな」
「んふふ~。これが今世の仕事なのね───……冒険者か、ワックワクするわね、あ!」
ニコニコしていたエリカがクルリと振り返る。
「んねっ、受付さん」
「セリーナです!」
「細かいわねぇ。……セリーナさんや、なんかこう、ぱぱーん! とランク上がる方法ないの? Fって一番下よね?」
「あ゛?! あるわけねぇ……ないでしょう!───まぁ、もっとも、こういった高等問題が解ければ別ですけど」
ニッコリと笑ったセリーナが、Cランク相当を認める筆記試験を取り出し、これ見よぎしにヒラヒラと───。
どうやら、ギルド憲兵隊が持ち込んだ新規のテスト問題らしい。
それを、できるものならやってみろと煽──。
「ふーん、貸して。やるから」
それだけ言うと、セリーナの返答を待たずに用紙をひったくるエリカ。
「ちょ! 何を勝手に───そんなに簡単に……って、」
「あーい。これでいい? これだけ? 他にはないの?」
ポイスと押し付けるようにして用紙を返したエリカ。
それを反射的に受け取ったセリーナ嬢は、最初は迷惑そうな顔から───徐々に青ざめ、そして、何度も答案と答えを整合すると……。
「う、嘘……。あ、合ってる…………ぜ、全問正解」
へなへなと椅子に沈み込むセリーナ嬢。
よほどこのギルドの筆記試験に自信があるのだろうか?
ルビンから見ても大したレベルじゃないと思うけど……。
「ん? これでCランクなの? 楽勝じゃない?!───あはは。次行ってみましょうよ、次つぎぃ!」
いや、冒険者稼業ってそう言うのじゃないから……って、あーーーーーーー!!
ルビンの首根っこを引き摺ってズルズルとギルドの奥に。
何故かセリーナ嬢も脇に挟まれている。
「ちょ、ちょぉぉお!───放しなさい! はーなーせー!!」
ギャーギャー騒ぐ二人を尻目に上機嫌のエリカはギルドの実技試験会場に乗り込むと、無理やり実技試験を開始してしまった。
たまたま、ギルド憲兵隊が練習をしていたので、そいつ等を試験官に──────……。
「倒せばいいのねー? 何人?」
「あ、ひと───」
ドカーーーーーーーーーーーーーン!!
「あーーーーーーー!」
「化け物じゃーーー!」
腕利きのギルド憲兵隊の試験官たちが鎧袖一触で薙ぎ払われたのは言うまでもない……合掌。
そして、あっという間にBランクの称号を得たエリカであった。
「なに、なに? 楽勝じゃーん!」
あははははははははははははははははは!
ギルドに残念美人の高笑いが響いていたとかいなかったとか……。
ちーん。合掌………………。
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