第37話「【タイマー】は、牢屋を駆ける」

 お、あの子を男どもと一緒に雑居房ブタバコにいれただと?!


「お、おい、アンタ! あの子はまだ子供だぞ?!」

「はぁ? 何言ってんだよ、お前……。お前が突き出したんだろうが」


 ぐ……。


「そ、そうだけど、何も男と同じ檻に入れなくても!」

「バーカ。子ども用の檻があるとでも思ってんのか? ここは託児所じゃねーぞ」


 話にならんとばかりに、衛兵はルビンから視線を外してしまった。


「くそ……。わかったよ、ほら!」


 バンッ! と叩きつけるように金の入った革袋を机に置く。


「ほ───?」

 衛兵は驚いたように、革袋を見ると、おもむろに手に取ると中身を机に広げだした。


「驚いたな……。本物じゃねーか」


 カチカチと歯を当てて金貨の質を確かめている。

 ホン少し歯形がついたところでようやく本物だと確信したらしい。


「あたりまえだ! 人命がかかってるのに、偽物をだすかよ!」

「大袈裟な奴だな。別に殺されやしねーよ。ま、あっちはどうか知らねーがな。ゲハハハハハ」


 クソ。なんて奴だ!


「もういい! 金貨20枚。確かに払ったぞッ」

 そう言うと、「貸せよッ!」ルビンは衛兵から鍵を引っ手繰る。


「───連れていくからなッ!?」

「おう。連れてけ、連れてけ。───焼くなり、剥くなり、好きにしな~。……ガキは一番奥の雑居房ブタバコだ。牢番はいねーからよ、あとは自己責任でやるんだな。ゲハハハ!」


 くそ、仕事しろっつの!

 勝手に檻から連れていけ───とか、どんだけ杜撰ずさんなんだ!!


「ったく!!」


 悪態をついて衛兵隊本部の奥へと小走りで向かうルビン。

 たくさん衛兵がいるというのに、本部の中に入るルビンを見咎めもしない。


 そしてルビンは慣れない建物を迷いながら行き、ようやくそれらしい場所を発見した。


「ここか!」


 目の前にはデッカイ格子扉。

 さらに奥には左右に別れた格子が多数並んでいる。

 それらから絶えず溢れ出ている垢じみた悪臭……。


「うぐ…………!」


 なんて匂いだよ!

 たしかに、こりゃブタバコだ……。


「ひ、ひでぇ、匂いだ」

 あまりの悪臭に涙が滲む。


 なるほど。どーりで牢番がいないわけだよ!


 そこに、

「おい、兄ちゃん! 鍵持ってんじゃねーか、出してくれよ!!」

「お、こっちだこっち!」


 そのうちに、いくつかの牢の中で囚人が騒ぎ出した。

 どうやらルビンが牢の鍵を持っていることに気付いたらしい。


「はっ、お前らに用はない!───くそ、あの子はどこだよ!」


 たしか、一番奥───……。



「やだ!! やめてぇぇぇえええ! いやあああああああああ!!」



 その時、鋭い悲鳴が牢屋中に響き渡ったッ。

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