第35話「【タイマー】は、『時の神殿』の詳細を聞く」
「ま、待ってください!───
あ。
「今なら、ギルドからサポートができます。もしかすると、あそこに【タイマー】の手がかりがあるかもしれないんですよ?!」
む……。
ぐ───確かに、気になる。
滅茶苦茶気になる……。
【タイマー】とはなんなのか、それを知らねばならない───。
「…………はぁ、わかりました。セリーナさん、とにかくお話を伺いましょう」
そう言って再び席につくルビン。
セリーナ嬢はあからさまにホッとしていた。
そして、明らかに勘違いしている奴らが二人。
「ルビン……」
「る、ルビンさん?! 私達なら、ぜんぜん気にしてないですよ! 過去のことは忘れて……」
は?
何言ってんだコイツ。
ルビンは首だけを、クル~リとメイベルに向けると、
「俺が忘れねーよッ。二度と関わるなッつってんだろ!」
「「う……」」
その言葉にションボリ俯くサティラと、
ムッとした顔のメイベルが実に印象的だった。
目クソ鼻クソのレベルでしかないが、髪の毛一本分はサティラのほうがマシだ。
もっとも、ルビンはされた仕打ちを絶対に忘れないし、許す気もない。
「いいから、視界から消えてくれ───。お前らとパーティを組む気は、一切ない!!」
そう言い捨てると、もはや彼女らのことは空気だと言わんばかりに意識から追い出してしまったルビン。
それをみていたセリーナ嬢は軽く額を押さえると、
「……困りましたね。前にもお話しましたが、『時の神殿』は二人以上でないと入れなんですよ。ですから、最低でも───あと一人はメンバーがいないと……」
本当に困った様子でセリーナ嬢は頭を抱えていた。
彼女の中でどういう皮算用があったかは知らないが、メイベル達でパーティを組ませて攻略させれば手っ取り早いとでも考えていたらしい。
───だが、断る。
「……最低でも、
「え? あ、ま、まぁ、誰でもというわけではありまんよ?! サティラさんたちを紹介したのにも事情があるんです」
いや、あんた。
だからと言ってね……。
「───誰か探しますよ。ギルドにはこれだけ冒険者がいるんだし」
そう言って、増え始めて来たギルド内の冒険者達を見渡すルビン。
「そんな簡単にいるわけないじゃないですか……。ルビンさん、アナタ結構無自覚ですけど───めちゃくちゃ強いんですよ?! 自分のこと知ってます?」
む……。
むぅ───。
「はぁ。とりあえず『時の神殿』についてお話ししますね。サポートするというお約束ですから……。まずは、『時の神殿』のクリアに必要な条件としては、」
セリーナ嬢はそう言って、羊皮紙を取り出し洒落たペンでメモを書きつけていく。
「───まず前提として、あそこは古の時代に作られたトラップで溢れています。お陰でモンスターの類はほとんどいませんが、その分トラップは凶悪につきます」
要点をメモしつつ、
セリーナ嬢はギルド内の冊子から、冒険者用のガイドマップを開いて見せた。
そこには様々なトラップの種類が記載されており、
「───感圧式、圧力開放式、連動式、魔力感知式、罠線式……。とにかく『時の神殿』は、これらのトラップが至る所に仕掛けられています。これだけでも、生半な腕前の冒険者ではまず突破は不可能です。また、シーフ殺しと言われる、魔力タイプの罠や連携トラップも多く、単に罠が解除できるシーフなら良いというわけではありません」
なるほど……。
「そのため、過去の突破事例から類推する条件としては、『素早く』、『目端が利いて』、『なるべく小柄』であることが望ましいです。仕掛けが至る所にあるうえ、互いに連携して解除しなければのらない罠も多いためです。そのため、信頼できるか
そこで一度言葉を区切るセリーナ嬢。
「そして、出来るなら女性がいいでしょうね。トラップは感圧式が多いため、男性だと体重のせいで発動させてしまうでしょう。まぁ、軽い男性でもいいのですが、この近辺で活動している人で冒険者にそのような条件に該当する人物はおりません」
そこまで一気に言いきった後、セリーナ嬢が目を光らせる。
非常にシビアな条件だ……。
ギルド経由の情報なので、セリーナ嬢個人の嘘ということもないのだろう。
つまり、その条件に合致する女性がパートナーに向いているというのは事実……。
「───ですから! サティラさんやメイベルさんがピッタリだと思うんですよ!」
「いや、無理ですって」
「………………ど、どうしても?」
「どうしてもです!……くどいですよ?」
「───ですが、彼女たち以外に該当者なんて……!」
やはりどうしてもサティラ達を組ませたいようだ。
そこに、セリーナが言う条件。
……小柄ですばしっこくて目端の利く女性。
なるほど、Sランクパーティの彼女らなら、それに該当するだろう。
───だが、断る!
だいたい、信頼できるって条件をいれるなら、メイベルたちは論外だ。
命を預けなければならない場面が生起したとして……。信用できるわけがない。
でも、確かにそんな条件に合致するような───……。
うん?
待てよ……。
そして、凄腕の小柄な女の子……。
うーん?? なんか、その条件どこかで……。
───「おしーりペンペン!」
「あっ」
さっきの条件なら───。
「ふむ…………一人、心当たりがある」
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