第34話「【タイマー】は、チェンジする」
そして、次の日の朝ギルドにて───。
「チェンジ」
開口一番ルビンはバッサリと切り捨てる。
「───はい、こちらが昨日お話しておりました臨時メンバーで……え?」
「だから、チェンジで」
セリーナ嬢はルビンの言葉が理解できなかったのか、営業スマイルのまま硬直している。
……ん?
俺、変なこと言ったかな?
「え~っと……ルビンさんですよね?」
キョトンとしたセリーナ嬢を前に、ルビンは小さくため息をつくと、
「他の誰に見えるんだよ? 俺はルビン・タック。先日付でSランクパーティ『
「い、いえ……。はい」
どっちだよ?!
「ですが、はい……。えっと、こちらの二人が昨日お話ししていた───」
だーかーらー!
「チェンジで!!」
「しょぼ~ん」
「る、ルビンさん酷いわッ」
セリーナ嬢のいう二人。
そこにはしょんぼりと項垂れたサティラと、ブリッ子モード全開のメイベルがいた。
よりにもよって、セリーナ嬢がいう紹介したいメンバーというのが
「いや、セリーナさん事情知ってるでしょう?! あなたも滅茶苦茶関わってたじゃないですか?!」
「え、えぇ。まぁ、その───はい」
だったらなんで?!
「とにかく、コイツ等とパーティを組むなんてありえませんから! だから、チェンジでッ!」
「し、しかしですね!? 今のルビンさんに釣り合うメンバーなんて早々いませんよ?! ルビンさんは、知識だけでCランクに相当し、しかも、非公式にとはいえSランクパーティの前衛を圧倒しました。そしてドラゴンを単独で狩れる強さ……!」
そんな化け物クラスの冒険者に!! と、セリーナは力説するのだが。
「いや、だからって……!」
そう言って、嫌そうにサティラ達を見るルビン。
正直、顔も見たくない。
「お気持ちは分からなくもありませんが、ルビンさんを完璧にサポートできて、今手が空いている冒険者なんて彼女たちくらいなんです。ですから……ね? この際、過去の遺恨は忘れて……」
はぁ?
過去って、アンタ……───つい先日の話だよ?!
「いや、そりゃ無茶苦茶ですよ! 俺はコイツ等と関わり合いになりたくないから、ソロになり、パーティから正式に除名してもらったんじゃないですか? オマケにランクの再認定まで───……なのに!!」
「こ、
「め、メイベルぅ。やめなって!……ご、ゴメンね、ルビン。私達も詳しくは、さっき聞いたばかりで……。その、ルビンは嫌だよね?」
サティラがションボリしたまま、上目遣いでルビンを見つめる。
その目は本当にすまなさそうだ。
不覚にもグラっと来そうになるが、その度にフラッシュバックするのは、あのダンジョンで囮にされた時の光景……。
チリィン♪
(わかってるよ、キウィ……)
「───「嫌か?」だって?……当たり前だろ? もう、俺は『
「う、うん」
「ちっ。……(えらそーに)」
おい、何か言ったか?
「それとも、何? エリックの分の仕返し? あれは正当防衛だと思ってるけど、……その気なら、」
「ち、違うよ! 本当に違うから!」
サティラはぶんぶん首を振って否定する。
メイベルもそっぽを向いている。
「どーだか……。ふふん。ゲロの匂いには慣れたの?」
「う…………!」
その言葉にサティラが途端に口を押えてしゃがみ込む。
もちろん、実際にはゲロの匂いなんてしない。
だけど、その言葉はサティラには随分効いたらしく突然えづきだす。
「ちょ、ちょっとルビンさん!」
「え?」
避難がましい目をセリーナ嬢に向けられ戸惑うルビン。
「いくらなんでも、女の子に言っていい言葉じゃないですよ?」
「はぁ?……あっそー、言っとくけどさ、そうさせたのはセリーナさんだよね? こうなるってわからなかった?」
「う……」
少し苛立ち始めるルビン。
わざわざギルドに呼びつけておいて、見たくもない顔と顔を合わせられる気持ち……。
セリーナ嬢には、それがわからないらしい。
「ですが、そ、それは───」
「───あのさ? 俺はコイツ等に殺されかけてるんだよ? しかも、そのあとの態度だって見たでしょ?」
ダンジョンで囮にされ、
帰ってきたら妙ないちゃもんで絡まれる。
オマケにこれだ。
「なに? セリーナさんは、もしかして俺が「わぁ! サティラとメイベルじゃん! また会えるなんて~! 一緒に冒険に行こうッ」……って言うと思ったの?」
わざと口調を変えておどけるルビン。
それはセリーナ嬢の感情を酷く刺激したらしい。
「そんッ、な、こと……」
少し涙ぐんだ彼女に多少は良心の呵責を覚えたものの、ルビンに謝る気はなかった。
……そう言えば、昨日の別れ際に「ルビンさんはイイ人」とかほざいていたな?
「あ、う……。す、すみません」
「もういいけどさ。……他のメンバーでお願いします」
さすがにセリーナ嬢も自分の配慮が至らないと、ようやく気付いたらしい。
ルビンとしては苛立つだけの最悪の気分だ。
「し、しかし……!」
なおも食い下がるセリーナ嬢。
彼女なりに何か考えがあるようだが……。
「聞いてください、ルビンさん。……今、ルビンさんはギルドの筆記試験を合格した実績があります。そして、そこにメイベルさんたちが加われば、臨時とはいえ試験をクリアした扱いになるので、暫定的にですが『Sランク』に認定できるんです!」
いや、さ。
「───俺、ランクとかにそこまで拘りないんでいいです。そう言う話ならもう行っていいですか?」
さすがにウンザリしてきたルビンはセリーナ嬢に背を向け、ギルドを去ることにした。
マジでウンザリだよ!
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