騎士団

 イレーヌと二人、町へ戻っていく。

 ただ、その道中に嫌な人物を見つける。



「止まるのじゃ……」



 急にイレーヌが制止を呼びかける。


 俺もイレーヌ同様にその場に立ち止まると、少し腰をかがめる。



「何かあったのか?」

「あれを見るのじゃ」



 イレーヌが指さした先には白銀の鎧に身を包んだ騎士達が歩いていた。



「どこかの騎士か?」

「あぁ、あれは教会騎士団じゃ」

「なるほど、イレーヌを探しに来た……というやつか」

「……おそらくな。ただ、武器を見てみるのじゃ」



 騎士団が腰に携えていたのは鎧と同じように白銀に輝く剣。

 あとは手にたいまつを持っている。

 まだ先が見えないほど暗くないのにその姿は不自然極まりなかった。



「おそらく妾を捉えて、その他は証拠隠滅に動く……ということじゃろうな」

「町ごと滅ぼすのか!? そんなことが許されているはずが――」

「聖女……、神は絶対じゃからな。そのためなら奴らはいくらでも自分の手を血で汚す。だからこそ妾は教会に嫌気がさしたのじゃ」



 確かにイレーヌが嫌がるのも良くわかる。

 教会にこんな裏の顔があったなんて――。



「いや、でも、町にはギルド本部があるぞ。町のギルドに力を借りれば――」

「その辺りの話も既に折り込み済みなんじゃろう。力のあるギルドはおそらく町の外へ逃がしてあるはずじゃ」



 そういえばここ最近ギルド本部に顔を出している人が少なくなった気がしていた。

 それにスライムが討伐されきらずに残っているのもおかしいよな。

 改めて考えてみると。



「このままにしておくわけにはいかないな」



 あの町を壊させるわけにはいかない。

 あそこは大事なギルドホールがあるのだから。


 ただ、どうする?

 騎士団はギルド本部と対校できるほどの力を持っている。


 俺だけだと一瞬で返り討ちにされるだろう。

 かといってイレーヌの援護があっても同じことだ。


 それこそティナとココの二人がいないと厳しい。

 そんなことを思っていると騎士たちが少しザワつき出す。



「お、おい、あれはなんだ?」

「押すな! あれは……ドラゴンじゃないか!?」

「臨戦態勢をとれ! ドラゴンが攻めてきたぞ!!」



 騎士団たちが剣を抜き、ドラゴンに向けて魔法を唱える。

 そして、様々な魔法がドラゴンに飛んでいく。


 すると、ドラゴンが突然声を上げる。



「わわっ、あ、危ないですよー」



 どこかで聞き覚えのある声に俺は思わず首を傾げてしまう。

 まさか前と同じことはしないよな。いくらティナでも……。



「イレーヌ、今の声、聞こえたか?」

「うむ、間違いなく聞こえたぞ」



 どうやらイレーヌも同じ声が聞こえたようだ。

 つまり、空耳というパターンが排除されてしまう。


 そうなるとやっぱりあのドラゴンはティナが持っている……。



「ティナ、逃げろー!」



 思わず声を上げてしまう。

 しかし、ティナは何を思ったのか思いっきりドラゴンを振り回して、飛んできた魔法を打ち返してしまった。



「ホームランです♪」



 きれいに魔法が打ち返される。

 それはそのまま騎士団達へと飛んでいき、俺たちが何かするわけでもなくほぼ壊滅状態へと追い込まれていた。



「えっと、危ないですよ?」

「いや、遅すぎるだろう」



 地面に着地したティナは既に壊滅寸前の騎士達に注意を促したので、思わず突っ込みを入れてしまった。



「それよりも今日は何を取っていたんだ?」

「見ての通り、ドラゴンさんですよ。これでも私、ドラゴンさんの区別が付くようになったんですよ!」



 自信たっぷりに答えてくるティナ。

 確かに以前はトカゲと言っていたもんな。ドラゴンと言えるようになっただけマシだろう。



「あと、たくさんのトカゲも捕りました」



 ティナの背中にはたくさんのワイバーンの姿があった。

 うん、前言撤回だ。

 ティナはまだまだ覚えないとダメだな。



「お、お主、一体何をしたのじゃ? 騎士団を一人で壊滅するなんて――」



 そんなティナを見てイレーヌは驚きの表情を浮かべながら固まっていた。



「えっと、私は何もしていませんよ。飛んできた火の粉を払っただけです」

「そ、それだけで騎士団が倒れるものか! 明らかに威力が上がっておったぞ!?」

「そう言われましても……。私にはよくわかんないです」

 

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