第8話 娘の悩み

ある日、リビングでテレビを観ていると、夜勤を終えて帰宅した娘が話しかけて来た。話の内容はいつもの職場の愚痴から始まり、次第に重い内容へと続いた。


ある理由により、生きていてもしょうがないと言うのだ。娘は感情の起伏が激しいので、話をしっかり聞いてよく考え、娘を刺激しないように慎重に言葉を選びながら会話をしたつもりだった。話を否定せず受け入れてから自分の考えが押し付けにならないように話した。


次の日リビングでテレビを観ていると、突然妻が現れ、娘には余計なことを言わず、ただ「そうか、そうか」だけにしてほしいと言われた。否定も肯定もせず、娘を刺激しないでほしいというわけだ。


娘に死にたいと言われて、そうかそうかだけ言えるわけないだろ!それでもそうしてほしい言う。


娘が真剣に悩んでいるある理由を知っていながら、今までひと言も話さなかったことをどう思っているのか?と聞くと、妻はさらっと頭を下げてあやまった。

娘にとってそんな重大なことを、何年も父親がまったく知らずにいることじたい複雑な心境だ。


娘とどう向き合っていけばよいのだろう。ずっとよく知らないふりをしないといけないのか。何を言われようとも、どんな時も味方であることだけは娘に伝えておきたい。

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