第5話 次男の成人式

もう2年前になるのかな。

次男が成人となることを祝う幸せな日のはずが、妻のある行動により、とても辛い思い出となった。


成人式の会場は、次男の母校でもある町内の小学校の体育館だ。普段から同じ目的地へ行くのにも理由を作って別々の車で行こうとする妻は、成人式の日もそうだった。


先に会場に入ると、昔から行事ごとに顔を合わせて来た次男の同級生の親達の姿が目に入った。子育ての戦友達だ。みんな嬉しそうに夫婦で並んで着席している。


嫌な予感がしていた・・・少し遅れて会場に入って来た妻は僕を一瞬見て通り過ぎ、隣りの席には座らず、わざと離れた空いている席に座った。息子の成人式くらい、ちゃんとしてほしい。心の中でそう思った。


それをみかねた分別のあるママ友に、「あんたなにやっとるの!」とさとされた妻は、ふてくされた態度で、「しょうがないな〜」とつぶやきながら、僕の隣りの席に来て座った。


その時の気持ちは忘れない。とても恥ずかしく、屈辱的な思い。どうしてこんな大切な日にまで、人前でそんな態度がとれるのだろう。


会話はなく、式典が終わるとすぐに席を離れて親しい友達のところへ行く妻。

僕にとって次男の成人式は、忘れられない悲しい思い出となった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る