第3話 息苦しいステイホーム

2020年5月5日

今夜の夕飯は声をかけてくれたが、時間差で子供達より先にひとりで食べさせられた。僕が食べ終わる頃に、妻は子ども達に声をかけて、僕がいなくなった食卓で子ども達と楽しそうに食事をしている。


妻は子ども達へは不自然なくらい笑い声を混ぜて積極的に話かけているのに、こちらから何か聞くと無視かそっけないひと言返事しかない。そのギャップがあまりに大きいため、病的で怖い。


毎日のように好きな男性タレントのネット配信をスマホやノートPCで見て、大きな声でひとり言をしゃべりながら笑っている。不気味だし、気持ち悪い。

何が悪いの?という声が聞こえてきそうだが、長期に渡りモラハラを受けている立場ではコレが結構こたえるのだ。


子ども達の弁当作りやアイロンかけはするのに、相変わらずいくらお願いしてもしてくれない。居間の片隅で、山積みにされて放置されているシャツ。たぶん、お客が来なければずっとこのままだろう。最近、amazonでアイロンを買った。まだ使ってないけど。


子ども達を味方につけられ、家の中で誰とも話さずに孤立させられていると、自分が何か悪いことをしたような気に落ち入る。ここまでひどいことをされるような何かをしたのなら、教えてほしい。

「言ってもどうせ無駄だから」と理由を教えてくれない。ずるい。積もり積もっているのはお互い様だが、仕打ちがあまりにもひどすぎる。


家はいちばん安らげる場所であるはずが、息苦しい。だからか、仕事のキリをつけずに働いて平日はいつも23時過ぎの帰宅だ。台所のテーブルに置いてある冷めた料理をひとりで食べて、誰とも話さずに寝る生活は、もう10年以上になるだろう。寂しい。人生、こんなんでいいのか。と思いながら毎日が過ぎていく。


ある日、早めに帰宅すると台所のテーブルに何も料理が置いてなかったので、「あれっ今日の晩ご飯は?」と聞くと、テレビを見ていた妻がめんどくさそうな顔で用意しようと立ち上がるのを見た次男から、「言い方が悪い!」と注意された。え?・・・何も言えず、深みにハマっていると思った。


妻は子ども達が周囲にいない時は、バタン!と大きな音をたててドアを閉めたり、わざとらしいため息やギリギリ聞こえるイラついた独り言をつぶやき続ける。


専門サイトを見ると、モラハラの加害者が女性で被害者が男性の場合は、そんなことをするのはあなたのせいでは?と男性側が疑われるケースが少なくなく、またそういう女性は罪悪感なく周囲を固めて攻撃してくる傾向があるそうだ。まさにその通り。

まるでサスペンスドラマで犯人を知っているのに、誰も信じてくれないあのストーリーのようだ。


ステイホームのGWは、家にいる時間が普段よりも長い。まったく家族との会話がなく、接触するたびに嫌な思いをすることが多いので、休日なのにストレスがたまる。

いつも仕事で遅い時間に帰宅して、置いてあるご飯を一人で食べて風呂に入って寝る。朝は少しゆっくり目なので、自分が起きる頃には誰もいない。このような非接触の暮らしだからこそ、夫婦が機能していなくても続いているのだろう。


いったい僕が何をしたというのだ。それさえ教えてもらえない。辛くてうつになりそうだけど、ならない・・・

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